本文に移動
全体  > 経済

不況時は出血競争再現の懸念…韓国造船「3社体制」持続可能だろうか

登録:2022-10-04 06:40 修正:2022-10-04 07:47
ハンファグループによる大宇造船買収で「大型3社」維持 
2014~2015年の出血競争では約9100億円の営業損失発生 
不況が近づけば過去の低価格受注が再現されることを懸念
2017年3月、慶尚南道巨済市鵝州洞にある大宇造船海洋の玉浦造船所の西門に職員たちが出勤している/聯合ニュース

 「2014年は3兆6560億ウォン(約3700億円)、2015年は5兆2113億ウォン(約5300億円)…」

 韓国造船海洋・大宇造船海洋・サムスン重工業の韓国の大手造船3社が、2014年と2015年に出した営業損失の規模だ。当時、世界的な景気低迷と石油価格急落により、造船・海洋プラント市場に不況が近づき、2年間だけで9兆ウォン(約9100億円)規模の損失を被った。大手3社の過度な出血競争のために損失規模が拡大したという自省の声が造船業界内部から噴出した。

 ハンファグループが大宇造船海洋を買収し、韓国の造船業界は大手3社体制がそのまま維持されることになった。造船業界は大宇造船海洋の売却発表について歓迎するとしながらも、一方では、3社体制が呼び起こす出血競争を懸念する声も控え目に出している。韓国政府にとっても、大手3社体制がそのまま維持される状況は負担になるといわれている。

 現在のような造船業界の好況期では、大手3社体制でも特に問題はない。注文が押しよせ船の価格は高くなり、あえて造船会社が低価格で船を受注する理由はない。しかし、不況が近づけば状況は反転する。造船業界は大量の装置と人材が投入される産業だ。受注の減少により造船所の稼動を止めた際に発生する損失に比べ、低価格受注による損失のほうが少なければ、低価格で船を受注しても、造船所の稼動を維持できることになる。

7月25日、慶尚南道巨済市鵝州洞の大宇造船海洋の玉浦造船所で作業者が溶接作業をしている/聯合ニュース

 特に船舶建造市場は「アジアンリーグ」と「コリアンリーグ」で分けられる。アジアンリーグでは、建造の難易度が低いバルク船や中小型コンテナ船などをめぐり、韓国・中国・日本の造船会社が競争する。一方、コリアンリーグは、韓国の造船3社だけが参加する市場だ。超大型原油運搬船(VLCC)、液化天然ガス運搬船(LNGC)、超大型コンテナ船、海洋プラントなどだ。この市場には技術力が不足している中国の造船会社は参加が難しく、韓国の3社間で激しい受注競争が起こる。

 2008年の米国発の金融危機により海運市場に不況が近づき、船舶発注が大幅に減ると、韓国の造船業界は新たな収入源として海洋プラント市場を狙った。海洋プラントは、海上に浮かび油田をボーリングして原油を吸い上げ精製する構造物のことだ。原油高で需要が高まった海洋プラントをめぐり、韓国造船3社が激しい受注競争を展開した。2014年から原油価格が下落すると、海洋プラント発注は急減した。すでに造船会社と建造契約を結んでいた船主は、発注を取り消したり、建造された海洋プラントの受注を拒否した。それに低価格受注が重なり、造船3社はいずれも大規模な損失を出した。

 これにより、造船業界の構造調整が問題として浮上し、韓国政府は2019年、現代重工業グループによる大宇造船海洋の買収を通じて大手3社体制を大手2社体制に再編する方針を推進したが、欧州連合(EU)の不承認決定により失敗に終わった。

2018年8月、蔚山市東区にある現代重工業海洋工場で最後の受注量であるNASR原油生産設備が完成し、運搬船に載せられ出港している/聯合ニュース

 ただし、今後は造船3社が競争を続けながらも、過度な低価格受注には乗りださないという見通しも出ている。ソウル大学のキム・ヨンファン教授(造船海洋工学)は「ビジネスの世界では競争は避けることはできない」としながらも、「過去に比べ、造船3社の経営陣は激しい競争に対する影響をよく知っており、過度な出血競争はしないとみられる」と述べた。

 長期的には大手2社体制に転換しなければならないという声も出ている。産業研究院のイ・ウンチャン研究委員は「造船業界を大手2社体制に再編し、競争を少し緩和する必要がある。すぐにはサムスンと大宇の合併が難しいとしても、研究開発や生産設備の共有などの協力を通じ、(大手2社体制に)似た効果を生むことができる」と述べた。

アン・テホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1061124.html韓国語原文入力:2022-10-04 02:45
訳M.S

関連記事