本文に移動
全体  > 経済

韓国、RCEP・CPTPPに続きIPEFも参加へ…「メガFTA」続く理由は

登録:2022-04-11 08:08 修正:2022-09-24 10:25
RCEPは2月発効、CPTPP、加盟申請の直前段階 
米国主導のIPEF参加へ 
WTO多国間主義の退潮・サプライチェーン問題で浮上 
CPTPPは国内交渉、IPEFは対外関係の設定が課題に
ホン・ナムギ副首相兼企画財政部長官が8日、ソウル光化門の政府ソウル庁舎で開かれた「第6回対外経済安全保障戦略会議」を開いている=企画財政部提供//ハンギョレ新聞社

 韓国政府は、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)の加盟申請書提出を準備している状況で、米国主導の「インド太平洋経済フレームワーク」(IPEF)構想にも参加する方向に決めた。CPTPPとIPEFは、2月に発効した「地域的な包括的経済連携」(RCEP)とともに代表的な「超巨大自由貿易協定」(メガFTA)に挙げられており、韓国内外で最大の通商懸案として浮上している。

 ホン・ナムギ副首相兼企画財政部長官は8日、対外経済安全保障戦略会議で、CPTPP加盟申請の時期は「現政権内」だと釘をさした。新政権発足を控えた過渡期だが、当初公言していた3~4月とは大きくは違わないスケジュールだ。IPEF参加については、「肯定的な方向の立場で今後の計画を論議する」と述べた。参加に向けて定められた方向性は、すでに予想されていたものだ。外交部は先月24日、報道官の定例会見で「韓国政府は、IPEFを積極的に歓迎する」と述べ、外交チャンネルを通じてそのような意向を米国側に伝達したことを明らかにしている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領側が韓米関係を相対的にいっそう重視・強調していることが、IPEF参加に向けた歩みのスピードを上げている雰囲気だ。

 IPEF構想は昨年10月、米国のバイデン政権の提案で始まった。コロナ禍後に浮上したデジタル、サプライチェーン、クリーンエネルギーのような新たな通商議題に対する域内の包括的経済協力を追求する内容だ。米国主導でインド太平洋地域の同盟国をまとめる経済・安全保障協力体の性格を帯びており、中国牽制・包囲戦略の一つと称されることが多い。

 メガFTAの相次ぐ浮上は、世界貿易機関(WTO)の多国間主義体制の無力化から始まった点が大きいと分析される。産業通商資源部のアン・ソンイル新通商秩序戦略室長は、「(WTO体制では)満場一致に近い『コンセンサス・ビルディング』方式で意思決定されるため、変化する時代に合う新たな協定を作ることが難しく、アウトプット(成果)を出せない状況に至ったのはかなり前のこと」だと述べた。2国間FTAが相次いで締結されたのは、その中で分かれ出た一種の抜け道だった。その2国間FTAも、すでに多く結ばれているうえ、狭小性という別の限界をみせた。WTOの多国間主義の退潮とともにメガFTA構想が浮上したのはこのような背景からだ。

 韓国貿易協会・国際貿易通商研究院長を務めたパク・チョニル韓国都心空港代表も、「グローバル・バリューチェーンが複雑になり、2国間FTAでは対応することがますます困難となり、巨大経済圏を一つにするメガFTAが次々と出現することになった」と述べた。半導体の供給難や尿素水不足問題で痛感させられたサプライチェーン問題は、メガFTA参加に対する必要性をいっそう強めた。資本の国外進出が多くなり、製品を作りだす際に複数の国が複雑に絡むグローバルな経済環境において、2国間FTA方式で障壁を下げることでは限界に直面せざるをえなかったという説明だ。

「インド太平洋経済フレームワーク」(IPEF)は、米国のジョー・バイデン大統領が昨年10月、東アジア首脳会議(EAS)で打ち出した構想だ。バイデン大統領が3月24日、ベルギーのブリュッセルで北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を終えた後、記者会見で発言している/ロイター・聯合ニュース

 CPTPPは、メガFTAの元祖格とされるRCEPの跡を継ぎ、開放の面で一段階高いという点で注目される。これには、オーストラリア、カナダ、日本をはじめとするアジア太平洋地域の11カ国が加盟国として参加している。中国は韓国に先立ち、昨年に加盟申請書をすでに提出した状態だ。米国は、CPTPPの前身である「環太平洋経済パートナー協定」(TPP)に入ってこれを主導し、トランプ政権時に脱退した。当時のTPPもまた、中国牽制ないし包囲戦略だと認識された。IPEF構想は、当時のTPPより安全保障・国際政治的な性格をさらに強く帯びている。商品貿易の自由化を重視する伝統的な自由貿易協定(FTA)とは違い、貿易規範を新たに樹立する側に焦点を合わせているという点でも差がある。

 西江大学国際大学院のホ・ユン教授は「(WTOの)多国間主義では、新しい規範、例えばデジタル貿易、カーボンニュートラル、労働環境改善、中国の知的財産権侵害と国営企業補助金問題、技術奪取、産業スパイ問題を十分に立法化できないだけでなく、各国の通商政策を十分に管理することもできず、限界に達していた」とし、「このようなメガFTPを通じて、多国間の貿易自由化を先導的に早めることができるという可能性を示している」と評価した。メガFTPはまた、同質的なネットワークを形成し、サプライチェーンの混乱を防止しようとする目的も強く帯びているという分析だ。ホ教授は「過去のFTPでは、利益を多く稼ぎ費用を最小化する『効率性』重視のサプライチェーンだったが、今では、意を共にする国同士で協定を結び、サプライチェーンを安定的に確保しようとする『安定性』重視に変わっている」と述べた。

 貿易協会のチョ・サンヒョン国際貿易通商研究院長は、「CPTPPは農水産物(市場)の開放、IPEFは中国牽制のような懸念を含んでいるが、開放型の通商国家を志向する韓国の立場としては、初期段階から参加し、国益を保護できるようアジェンダを先取りする戦略が必要だと思う」と述べた。交渉に参加してから実際の発効までには相当な期間を要するため、「参加国が増えた状況で一足遅れで踏みだすより、まずは参加し、積極的な意見を出すほうがいい」という主張だ。

「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)加盟に反対する農漁民団体の会員らが3月25日、政府世宗庁舎で開かれた公聴会に参加し、加盟反対デモを行っている/聯合ニュース

 CPTPP加盟申請に先立ち、先月25日、政府世宗庁舎で開かれた公聴会では、農漁民の強力な抗議の声が噴出した。CPTPPの開放水準が高いうえ、オーストラリアやカナダのような農業大国が加盟国に含まれていることにともなう懸念であり、反発は今もなお続いている。協定加盟のための対外交渉に劣らず、農漁民を説得する対内交渉という大きな課題を抱えている。

 IPEFでは、これとは違い、中国に対する関係の設定という課題がいっそう目立ってみえる。貿易の壁をさらに下げることよりも、中国に対する牽制と思われる新たな規範を設定する性格を強く帯びており、国内の反発よりも対外関係側で場合によっては破裂音を起こしうる事案とみられている。

キム・ヨンベ先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/global/1038241.html韓国語原文入力:022-04-11 02:16
訳M.S

関連記事