「韓国の大企業への経済力集中度は主要国で最下位水準で、100大企業の資産比率は低下している。規制一辺倒の大企業政策は全面的に見直すべきだ」
全国経済人連合会(全経連)は20日、3ページの短い報告書を発表した。そこで主張している内容は、後ろの部分の政策提言はいいととしても、前の部分の事実関係は非常に見慣れないものだ。大企業と中小企業との格差を中心として、韓国社会全般の両極化が深まっているという様々な統計と常識に反する内容となっているのだ。実状を正しく反映し、誤った通説を矯正しているのだろうか。
統計上の問題点が2つ目につく。他国との比較に用いた資料が、分母と分子の性質が異なるというのがその1つ。全経連は2019年の国富(負債を除いた国民の純資産)と比較した上位100大企業の資産総額(負債を含む)を計算し、韓国は17.7%で、比較対象を含めた5カ国の中で最下位だと説明している。英国は44.9%、ドイツ27.7%、フランス23.1%、イタリア19.5%と分析しているのだ。
分母に当たる国全体の統計は純資産概念であるため、公共・民間ともに負債の多い欧州地域の企業資産の割合が相対的に高く表れている可能性が大きい。企業側の資料としては負債を含めた総資産の概念を用いたことについて、報告書作成を率いたユ・ジョンジュ企業制度チーム長は「資料へのアプローチのしやすさ」の問題を挙げた。特別な加工なしに提供が受けられる各国企業の純資産資料はないというのだ。同氏は「国ごとの比較では、たいていは(分母に)GDP(国内総生産)を用いるが、今回はストック概念である資産と資産を比較した方式なので、より有効だと思う」とし「トレンドを見てほしい」と述べた。韓国の企業資産の割合は他の国より低いだけでなく、2010年に比べて低下傾向にあるという説明だ。
全企業数に占める大手企業数の割合は0.08%て、経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国中33位だ、と主張したくだりには、統計上の2つ目の問題点が含まれている。報告書には、韓国は「300人以上の企業体」、残りの国々は「250人以上の企業体」を基準としたと書かれているのだ。
同氏は「OECDが各国の統計を取りまとめて公開したものを使用した」とし「韓国と異なり、他の国々はおおむね250人以上を基準にしているのが現状」と述べた。これについて、経済改革連帯のキム・ウチャン所長(高麗大学教授)は「適切な比較統計がなかったためだとの推察は可能なものの、あまりにも差別的な基準だと思う」と述べた。
今回の報告書が持つ統計上の問題点を、国ごとの比較では不可避な難点として大目に見るのが困難なのには訳がある。経済力の大企業への集中度は低いだけでなく低下しており、大企業政策は全面的に見直すべきだという主張へとつなげているからだ。個別企業を基準にした報告書であるうえ、統計上の問題点もあるにもかかわらず、(個別企業ではなく)大手企業集団(財閥グループ)を中心とする韓国の財閥政策の改編を主張するのは道理に外れると思われる。
この報告書で国ごとの比較より目を引くのは、国内企業に占める上位企業の比重が低下していると分析しているくだりだ。韓国銀行の企業経営分析資料をもとにした件の分析結果を見ると、全企業の資産総額に占める100大企業の資産総額の割合は、1985年の47.5%から、通貨危機直前の1996年には31.4%にまで下がっており、その後は上がり下がりを経て2019年には31.6%となっている、と全経連は説明する。これを直ちに「経済力の集中度の下落」と断定するのは難しいが、企業間の格差はさらに広がる傾向にあるという常識とは異なる結果だ。最上位企業が負債を大幅に減らしたためなのか、中下位の新生企業が躍進して規模を拡大した結果なのか、または別の理由があるのかは、さらに検討せねばならない。