アジア太平洋地域の超大型自由貿易協定(FTA)である環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への韓国の加盟に向けた議論が、具体的に進められている。先月15日の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の妥結と、米国の大統領選挙でジョー・バイデン候補の当選後に現れた流れだ。韓日中3カ国と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国が参加するRCEPの妥結により、韓日FTAの締結効果がすでに発生している上、バイデン政権で米国の「CPTPPへの復帰」決定が下される前に、韓国が先に加盟してこそ、従来の11カ国との国内市場開放(関税譲許)に向けた交渉において有利になるという判断から、韓国政府が加盟を表明する方向で通商戦略を固めたものと見られる。
バイデン政権、CPTPPに“復帰”する見込み
これと関連し、目を引くのは今月8日、米国を訪問したユ・ミョンヒ通商交渉本部長の動きだ。同日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が貿易の日記念式典で、「CPTPPへの加盟を引き続き検討していく」と述べた直後だ。ユ本部長は米国でロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とキャサリン・タイ次期通商代表部代表(米下院歳入委員会民主党首席専門委員)とそれぞれ面会した。この場で韓米両国はCPTPPへの加盟をめぐる両国の戦略と政策方向について協議したという。ある通商当局者は14日、ハンギョレの電話インタビューで、「韓国政府は加盟を引き続き検討するという立場をここ数年間維持してきた。大統領の発言はその延長線上にある」とし、米国が復帰する可能性について「CPTPPの地域内で米国は依然として主な市場だ。米国の新政権の通商政策方向が形成されていく状況を注視しながら、引き続き検討する」と述べた。同当局者はまた「米国が復帰する前に韓国が先に追加加盟国として入るかどうかなどをめぐり、様々な要素を考慮しなければならない」と付け加えた。2017年1月、トランプ政権はCPTPP脱退を宣言した。
興味深いのは、バイデン候補の当選とRCEPの妥結直後から、韓中日英の首脳と通商相らがCPTPPへの参加を公に言及している点だ。中国の習近平主席は先月20日、「(CPTPPへの)参加を前向きに考慮している」と述べており、英国のエリザベス・トラス国際通商部長官もRCEP妥結直後に「英国企業がこの地域の市場に深く入り込めるという点で、英国経済にとっても非常に重要だ」とし、加盟の意思をほのめかした。現在CPTPPを主導している日本の菅義偉首相も「RCEPの早期妥結と加盟国の持続的な関税削減の履行、そして加盟国の拡大を通じてアジア太平洋地域自由貿易地帯の創出を期待する」(11月20日)と強調した。来年、議長国を務める日本は、韓国と米国はもとより、中国などを協定に参加させるため、積極的に乗り出すものとみられる。
加盟時期繰り上げるほど「追加加盟」の交渉で有利
韓国と中国、英国など、地域内の主要国の追加加盟の動きが現実味を帯びるにつれ、バイデン政権の復帰の決定に弾みがつくという分析もある。対外経済政策研究院は「バイデン次期大統領が強調する同盟国との連帯の強化および国際協力体制の復元により、米国が主導する形のCPTPPの拡大または第2の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の推進が予想される」とし、「米国が伝統的な友好国として韓国の参加を要求する可能性がある」と予想した。ただし、バイデン次期大統領は現在、「まずは国内問題に焦点を合わせる」とし、CPTPPに復帰するかどうかに関する明確な言及は避けている。
環太平洋地域全体を対象にするCPTPPは、韓日中とASEAN10カ国などを包括するRCEPに比べ、市場開放自由化のレベルがはるかに高い。商品分野の関税譲許率(関税の即時撤廃または段階的削減)は95~100%(品目数基準)に達するが、追加加盟国には従来の11カ国に比べて「最も高い水準の市場アクセス(市場開放)」を認める義務が課せられる。バイデン政権で米国の復帰時期が引き続き遅れる場合、韓国としては加盟時期を早めるほど追加加盟交渉で国内市場の開放幅を縮小し、(市場開放の)時期を遅らせることができる。これまで韓国がCPTPPへの加盟をためらってきた理由の一つは、慢性的な貿易赤字が続く日本とFTAを締結する効果が発生するという論理だった。しかし、日本が含まれたRCEPの妥結を受け、すでにこの効果が発生していることも、むやみにCPTPPの加盟を見合わせるよりも先制的加盟に方向転換した背景といわれている。