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不労所得より勤労・事業所得への課税多い…「租税公平主義違反」という批判も

登録:2020-07-24 06:42 修正:2020-07-24 10:24
所得税最高税率の引き上げが議論になっている理由とは 
 
株式譲渡益控除の引き上げによる 
税収9千億ウォンの減少分を 
高所得者に対する税率引き上げで補う 
「原則反映しない窮余の策」という指摘も
ホン・ナムギ経済副首相が22日、国会議員会館で開かれた「2020税法改正案」党政協議で発言している。右からホン副首相、共に民主党のチョ・ジョンシク政策委議長、キム・テニョン院内代表//ハンギョレ新聞社

 韓国政府が今年の税法改正案で、超高所得者に限定して所得税率を引き上げることを決めたことをめぐり、議論が続いている。不労所得である株式譲渡益に課すことにした税金を減らし、勤労・事業所得から税金をさらに徴収するのは租税公平性に欠けるという批判の声があがっている。財政支出が増えている状況で、財源調達に関する総合的な戦略なしにその場しのぎの対応をしたという指摘もある。

 23日、政府の税法改正案による税収効果の分析結果によると、証券取引税(2.5%)を来年から2023年まで2回にわたって1.5%に引き下げた場合、計2兆4千億ウォン(約2150億円)の税収が減るものと予想される。2023年から上場株式の譲渡益に20%の税金を課す案は、1兆5千億ウォン(約1340億円)の税収増大効果があるものと推算された。証券取引税は1年前倒しして引き下げ、株式譲渡益への課税は対象を「2千万ウォン(約180万円)超過」から「5千万ウォン(約550万円)超過」に縮小したため、当初の計画より9千億ウォン(約800億円)ほど税収が減少する見込みだ。

 その代わり、政府は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の苦痛分担を名目に課税標準10億ウォン(約8940万円)を超過する所得(勤労・総合所得税納税者上位0.05%)に課す所得税率を現行の42%から45%に3%引き上げることにしたが、これによって増える税収増加が約9千億ウォンと推算される。税収の試算額だけを見ると、株式譲渡益課税の後退で減った税金を、超高所得者の所得税引き上げで補っている格好だ。ソウル市立大学のキム・ウチョル教授は「労働者が株式取引で大金を稼いだ人たちの代わりに税金を払っている格好だが、支持を得られるかどうかは疑問だ」とし「バランスの取れた所得税体系の改編に関する論議もなく、最高区間税率だけをピンポイントで引き上げなければならない理由が何なのか、納得できる説明が見当たらない」と批判した。

 今回の所得税の最高税率引き上げは、実質的な再分配効果のある水準の増税規模ではなく、対象も非常に限られている。これに対し「所得のあるところに税金がある」という租税原則を反映していないという批判もある。免税者の割合を縮小する計画が盛り込まれていないのも残念な部分だ。経済協力開発機構(OECD)加盟諸国の所得税の最高税率現況を見ると、今回の税率引き上げで韓国は全36カ国中、日本、フランス、ギリシャ、ドイツ、オーストラリア、英国とともに7位にランクされることになる。所得税を納めない免税者の割合は韓国が38.9%であるのに対し、米国は30.7%、カナダは17.8%、オーストラリアは15.8%、日本は15.5%、英国は0.9%だ。

 仁川大学ファン・ソンヒョン教授は「所得税体系全般にわたり非課税・減免を縮小し、免税者の割合を減らしてこそ、しっかり税収を確保できるし、名分にも合致する。最高税率だけ引き上げるのは税収効果に限界があるうえ、租税抵抗ももたらす恐れがある」とし、「政府が今年、税法改正案を増税でも減税でもない税収中立に設計しようとしたため、窮余の策を取った」と指摘した。

 所得税最高税率の引き上げは、今年の税法改正案の推進過程で、やや遅れて確定されたという。企画財政部の関係者は「過去にも政策的必要によって高所得層の区間税率だけを微調整した事例があり、特別なケースではない」と述べた。株式譲渡益課税計画の縮小は、個人投資家の反発世論に政府が傾いた“政治的決定”という批判を受けている。企画財政部のイム・ジェヒョン税制室長は20日、事前ブリーフィングで「さまざまな理由で上場株式課税全面導入が難しかった」とし、「所得税史上初めて(株式譲渡益に)課税することに意義がある」と述べた。

イ・ギョンミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/955020.html韓国語原文入力:2020-07-24 05:02
訳H.J

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