国内外の電子商取引企業の物流センターで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が続出していることで、物流センターの運営上の限界が露呈している。商品の品揃えが多様になればなるほど、物流センターにはより多くの人員が必要となるが、物流センターの勤務環境の特性上、「距離を取る」などの守則が守られていないため、感染者がなすすべもなく増えていると指摘されている。
COVID-19の感染者が確認され、富川(プチョン)物流センターと高陽(コヤン)物流センターを閉鎖したクーパン(オンライン・ショッピングモールの一つ)の特徴は、他の電子商取引企業とは違い、商品の直接買入と直送を前面に打ち出していることだ。様々な販売者を出店させて販売者と購入者を仲介するにとどまるオープンマーケット形態とは違い、クーパンは商品を直接購入して倉庫に保管し、配送も直接担っているため、迅速な配送が可能であることを長所として強調してきた。こうした長所のおかげでクーパンの売上は毎年増加し、昨年は前年に比べ64%増加の7兆1530億ウォン(約6220億円)をあげたと公示されている。非対面消費が活発化しているCOVID-19局面でも、前年同期に比べ、売上げが大幅に伸びていると見られる。
しかし、多くの人手を必要とする物流センターでコロナ感染者が発生し、拡散の勢いは収拾がつかないほど強くなっている。クーパン富川物流センターの工程は概略すると、顧客による注文→ピックアップ(倉庫から注文された商品を選び出すこと)→梱包→地域ごとに分類→キャンプ(地域代理店)への配送から成る。一部工程の自動化が進んだとはいえ、大半は人が直接処理しなければならないというのが業界側の説明だ。物流業界の関係者は「一つの工程から別の工程へと移す作業程度ならベルトコンベアーが行うが、その他のほとんどの作業は人が直接行う必要がある。重さ、形がまちまちな数百万種類の商品から顧客が注文した商品を選び出して梱包する仕事をロボットが行うのは容易ではない。商品の数がさらに多くなれば、さらに多くの人手が必要となる」と説明する。中央災害安全対策本部によると、クーパン富川物流センターには約3600人が勤務し、23日から25日までに発生した同センターの感染者はピックアップ、梱包などの業務を担当していた。クーパンが昨年明らかにした商品の品目数(SKU)は600万。
複数の人々が共に働く場所であるにもかかわらず、距離を取ったりマスクを着用したりといった生活防疫守則も守られていなかったようだ。クーパンは「マスクをつけなければ物流センターへの立ち入りはできない」としているが、食堂などの休憩スペースを数千人がともに使う過程で感染した可能性がある。中央災害安全対策本部のパク・ヌンフ第1次長(保健福祉部長官)は28日、「物流センターの特性上、短時間内に集中的な労働が行われるが、職場内でマスクを着用していなかったり、『病気になれば休む』などといった職場内の防疫守則がきちんと守られていなかったようだ」と述べた。
クーパンだけの問題ではない。クーパンがベンチマーキングした米最大手の電子商取引企業アマゾンでも、物流センターの職員がコロナに感染する例が相次ぎ、批判の中心に立たされている。ロイターなどの外信によると、アマゾン物流倉庫の職員の死亡者数は今月22日現在で8人に達する。アマゾン職員の感染者数については公開されていない。米経済放送CNBCは、一部のアマゾン物流センターはサッカー場を26も合わせたほどの規模を持つにもかかわらず、勤務者が物を運んだり梱包したりする過程で「肩と肘を突き合わせて」働いていると報道した。コロナの影響により、アマゾンは職員による集合会議を取り消したり、センターごとに1億個のマスクを支給したり、約2300カ所の手洗いスペースを追加したりするなどの措置を取っているが、職員が手で荷物を運び、タッチスクリーンを複数名が使うことまで止めさせることはできないため、限界があるということだ。アマゾン労働者の安全問題が提起されると、オランダの年金運用機関APGなどの主要投資家はアマゾンに対し、労働者の保護がどれほど実効的に行われているかなどに関する資料を公開するよう要求している。