原材料は現金、売上はつけで
黒字でも現金はない
ガソリン小売業など小規模事業所が多数
「返済請求の負担少ない融資が必要」
忠清南道で4人の職員を雇いガソリンスタンドを経営するKさん(61)は2日、ガソリンを買う現金が足りず、銀行から融資を受けた。ただでさえガソリンを現金で買ってつけで販売するため現金が不足している上、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で売り上げまで減っているためだ。Kさんはハンギョレとの電話インタビューで「製油会社はたった1万ウォン(約876円)すら現金で受け取ろうとし、顧客はみな地域の常連なのでつけにしろと言う。昨年受けた融資で持ちこたえているが、いつまで持ちこたえられるか分からない」と話す。
造園関係の事業所を営むCさん(52)も最近、現金調達に奔走している。原材料の半分ほどを中国から現金で買ってこなければならないが、購買企業の決済日が少しずつ遅れているからだ。Cさんは金が不足する度に、企業の信用評価に影響を与えないように個人融資で現金を調達してきた。Cさんはハンギョレの電話取材に対し「うちの会社はまだましだが、新生企業は原資材をすべて現金決済する上、銀行から融資もしてもらえない。何とか融資を受けても税金、管理維持費などをきちんと出していなければ信用等級が下がるため、実質的に融通できる資金はさらに少ない」と話す。
中小企業と小商工人の立場からすれは、COVID-19で売上が減っているため、ただでさえ厳しい現金事情がより厳しくなっている。このような企業は、原材料は現金で買い、販売代金は帳付けの場合が多い。金の受け取りは遅く支払いは早いから、現金が足りないのが1、2カ月だけでも不渡りに陥る危険が大きいのだ。
ハンギョレが金融情報会社Fnガイドに依頼し、2018年現在の2014社のKOSPIとKOSDAQの上場企業の現金循環周期を調べたところ、原材料購入からその代金を決済するまでの平均期間が10日以下の企業は438社(22％)だった。このうち原材料購入がほとんどないソフトウェア会社や持株会社などを除けば、200社以上が木材、金型、飲料製造、半導体素材装備会社などの製造業だった。他の企業が平均で38日後に原材料購入費用を精算するのに対し、これらの会社は20日あまり早く精算することになる。これは現金が非常に豊富で、決済日をあえて延ばす理由がないという意味でもあるが、その反対に交渉力が足りないために決済日を延ばす能力がないという可能性もある。業歴が短かったり、売上高が小さくて交渉力の落ちる中小企業のほとんどが後者に当たる。
実際、中小企業中央会が昨年12月に発表した「2018年中小製造業実態調査」によると、中小製造業が原、副材料の購入代金を現金で決済した比率は94.1％に達する。一方、販売代金を現金で受け取った割合は85.2％にとどまった。残りの14.8％のうち手形が11.2％、売掛債権担保融資などをはじめとする現金性決済が3.7％だった。製品を売り、その対価として手形を受け取ったり融資を受けるという意味だ。
人件費が大きな割合を占める5人以下の小規模事業所の立場は特に劣悪だ。韓国中小企業学会のユン・ビョンソプ副会長は「ソウルの文来洞(ムルレドン)や乙支路(ウルチロ)の芳山(パンサン)市場などに集まる4、5次部品組立会社は、金融危機の度に大きな打撃を受けてきた。販売代金として1次協力会社の手形を受け取るのだが、購買企業が不渡りを出せば手形自体が紙切れになってしまう」と述べた。また売り上げの小さい小規模事業所であればあるほど、融資の優先順位が後回しにされる可能性が高いとして「金融界の死角地帯にいる企業に2兆ウォン(約1750億円)ほどの資金を財源から供給して管理すれば、倒産せずに生き残ることができ、後でその金を返すこともできる」と提案した。
中小企業研究院のパク・ジェヨン研究委員も「帳付けをすぐに現金化できない企業は金融会社から支援を受ける手段が相対的に少ない。売掛債権担保融資制度はあるが、大企業との取引ではなく中小企業間の取引の場合、返済が難しいとみて貸し渋る」と指摘した。また「英米圏はこうした場合に備え、返済請求権がない売掛債権担保融資である『ファクタリング』制度や、取引証書を担保に個人間取引(P2P)市場から資金を調達する。韓国社会もこうした方法をもう少し活用できるはず」と提案した。
訳D.K
