18歳のA君は今年8月に5億ウォン(約4640万円)で伝貰(チョンセ=一定金額を家主に預けて家を貸し借りする方法。家賃は別途発生しない。このケースでは家主に伝貰金5億ウォンを預けている)で借りていたソウル瑞草区(ソチョグ)のマンションを11億ウォン(約1億200万円)で購入した。6億ウォン(約5570万円)の現金が必要だったが、契約2カ月前、3日間にかけて親が2億ウォン(約1855万円)、親族4人が1億ウォン(約928万円)ずつを贈与した。課税標準5億ウォンを超えると贈与税率は30%だが、1億ウォン以下は10%と大幅に下がる。税金を減らすための「違法分割贈与」が疑われるケースだ。
40代のB氏は今年9月、ソウル龍山区(ヨンサング)のマンションを26億ウォン(約2億4100円)で購入した。伝貰金5億ウォンで借りている物件であり、自分の預金3億ウォン(約2780万円)に11億ウォンの融資を受けて資金を調達したが、6億ウォンは両親から借りた。しかし、この金は親が銀行から借りた「個人事業者への融資」だった。「融資用途以外への流用」のケースだ。
国土交通部、行政安全部、ソウル市、金融委員会、金融監督院は28日、今年8~9月に申告されたソウル地域の共同住宅(マンション分譲権を含む)取引を調査した結果、532件の違法贈与と23件の融資規定違反、10件の虚偽申告を摘発したと明らかにした。今年過熱しているソウルの不動産市場を落ち着かせるために政府が行った厳しい調査の結果だ。政府は10月11日に合同調査に着手し、資金の出所が疑わしく、周辺相場より低めに、あるいは高めに申告されたソウル地域の共同住宅の異常取引2228件を抽出した。そのうち取り引きが完了した1536件のうち991件の売買当事者から、契約書、代金支払の証拠資料、資金の出所および調達の証拠資料、金融取引確認書などの釈明資料の提出を受け、2カ月間の調査を行った。
違反の疑いのあったケースの多くは「家族間の違法贈与」だった。40代の夫婦は22億ウォン(約2億400万円)のマンションを購入し、現金11億ウォンを夫の親から調達した。このうち半分は贈与として申告し、税金も納めた。残りの5億5千万ウォン(約5100万円)は「無利子で借り入れたもの」と主張したが、政府の合同調査チームは違法贈与と判断した。40代のC氏は弟から7億2千万ウォン(約6680万円)を借り、伝貰金16億ウォン(約1億4800万円)で借りているマンションを32億ウォン(約2億9700万円)で購入した。借用証も書いておらず、弟に利子を渡したこともない。合同調査チームは、こうした違法贈与による脱税が疑われる532件を国税庁に通報した。ソウルの各区別に見ると、松坡区(ソンパグ)が53件で最も多く、瑞草区51件、江南区(カンナムグ)と銅雀区(トンジャクグ)がそれぞれ38件だった。
住宅街価格別に見ると、9億ウォン(約8350万円)以上が212件(39.8%)で最も多く、6億ウォン未満が167件(31.4%)、6億~9億ウォン未満153件(28.8%)の順だった。6億ウォン未満の中低価格の住宅でも脱税が疑われるケースが多いのは、最近強化された融資規制のため、住宅購入時に家族から融通してもらうことが多くなったためと見られる。昨年の「9・13住宅市場安定対策」以来、ソウルをはじめとする調整対象地域では、すでに住宅を所有している人が新規に住宅を購入する際の住宅担保融資が禁止され、所有していない人が住宅を買う際も、公示価格9億ウォンを超える住宅は実際に居住する目的で購入するのでない場合は融資が禁止されている。したがって、伝貰で賃貸中の住宅を購入する、いわゆる「ギャップ投資」取引の場合、家族間で金をやり取りしながら「借入」や「分割贈与」を偽装するケースが多いというのが、不動産業界の診断だ。NH投資証券のキム・ギュジョン不動産研究委員は、「住宅を購入する際、足りない資金を家族間で融通したり贈与することが例外なく税務調査を受けることになれば、今後投資目的の住宅売買は相当萎縮する可能性が高い」と指摘した。
事業者への融資をマンションの購入費用に転用したケースは23件だった。「個人事業者住宅売買業融資」で24億ウォン(約2億2300万円)を借り、本人が居住する目的で42億ウォン(約3億9000万円)のマンションを買った事例も摘発された。金融委と金監院は追加調査を行い、「用途以外への流用」が確認された融資を回収する計画だ。遅延申告による延滞税を逃れるために契約日を操作した10件には追徴課税される。
政府の合同調査は引き続き行われる。不動産市場への脱法的な資金流入を防ぎ、過熱した不動産市場を落ち着かせるのが狙いだ。ソウルで8~9月に取り引きが完了した1536件のうち、まだ釈明資料を提出していない545件については調査が進行中だ。売買当事者と仲介人が釈明資料の提出を拒否すれば3000万ウォン(約278万円)以下の過料が課され、国税庁にも通知される。また、10月に申告された共同住宅取引1万6711件のうち1247件の異常取引を抽出し、このうち契約済みの601件と、8~9月の取引のうち売買契約が完了した187件も調査対象に追加された。ソウル地域に限定されていた調査は、国土部を中心に実取引常設調査チームが組織される来年2月からは全国に拡大される。