全羅南道霊光(ヨングァン)の原子力発電所ハンビッ1号機で発生した「熱出力暴騰事故」は、当時の設備運転者たちの判断ミスや安全不感症が原因だったことが分かった。設備異常や地震のような外部の影響よりも、人的な緩み、錯覚、予測失敗、未熟練などを意味する「ヒューマンエラー」が重なる場合、より大きな重大事故が発生する可能性があるという点を再確認させたという指摘が出ている。
21日、原子力安全委員会(原安委)と韓国水力原子力(韓水原)側の説明を総合すると、10日、ハンビッ1号機の熱出力が運営技術指針書上の制限値の5%を超え、18%まで急騰した原因は、原子炉の制御棒運転者らの計算と判断による制御棒の過多抜き取りだった。制御棒は原子炉の出力を調節する設備の一つで、制御棒が挿入されると出力が減少し、抜き取ると増加する。
制御棒は完全挿入時には0ステップ(段階)、完全抜取時には231ステップと表現される。原安委によると、制限値である5%の熱出力を維持するためには、制御棒は当時43ステップでなければならなかった。しかし、原子炉操縦士の免許がない韓水原職員が100ステップまで制御棒を抜き取った。これによって1時間に最大3%ずつ高くなるべき出力が、わずか1分で18%まで跳ね上がる事態が起きた。原安委は、当該職員に密着し口頭指示を下さなければならない原子炉操縦監督者免許所持者(発電チーム長)の指示・監督不行き届き情況を確認し、追加で調査している。
制御棒の過多抜き取りは、当時の現場作業者の中性子反応度の手記計算ミスと抜き取り可否の判断ミスのためだという。原発総合設計技術公企業である韓国電力技術で制御棒に関連する業務を行っていたハン・ビョンソプ原子力安全研究所長は「単純な操作ミスや設備の欠陥ではなく、人間の理性的行為の結果、事故が起きたことに注目しなければならない」と指摘した。実際に報告された制御棒関連事故のうち、設備異常による落下事故はあったが、運転者の制御棒の過度な抜き取りによる出力急増事故は今回が初めてだ。これに先立ち、1979年米国のスリーマイル、1986年ウクライナのチェルノブイリ、2011年日本の福島事故も、外部の要因よりはヒューマンエラーが主な原因だったという指摘が多い。
熱出力急増の時点以降、午後10時2分に原子炉が緊急停止されるまで12時間近くかかったのは、韓水原が様々な方法で測定される出力値のうち、低い値を基準としていたためだった。原子炉出力方式は炉心外の中性子束を見るか、主給水流量を通じて計測する方法、電気タービン出力を見る方法など、計3つがある。原安委と現場に調査団を派遣した原子力安全技術院は、一番目の方式で熱出力が18%まで高騰したのを確認し、韓水原は当時二番目の方法で計測して手動停止せず引き続き稼動した。このため原子力安全技術院調査団が午後4時に現場点検に着手し、6時間後になって手動停止が行われた。
韓水原は熱出力が最も高かった時、主給水流量を通じて計測した数値は公開していない。韓水原の関係者は「当該事案は原安委の調査範囲に属しており、明らかにすることはできない」と述べた。ハン・ビョンソプ所長は「流量が豊富に形成されていない原子炉の低出力条件では、原安委が基準にした方法が適切だ。意見の違いがあっても、安全を最優先にするならば保守的な計測方法を準用して直ちに手動停止すべきだった」と指摘した。
ハンビッ1号機は、出力の急増現象の2分後の午前10時32分に制御棒が原子炉に再挿入され、安定を取り戻した。韓水原は制御棒を手動操作する場合、1分に48ステップが動き2分要したと説明した。原安委は特別司法警察官を投入し、韓水原の原子力安全法違反の有無を捜査している。韓水原はハンビッ発電所長など責任者3人を職位解任し、原安委の調査とは別に内部監査を行うことを明らかにした。