政府が17日に発表した「水素経済活性化ロードマップ」には、水素を主要エネルギー源として使用し、石炭・石油・ガスなどの化石燃料に代替しようとする中長期的な目標が盛り込まれている。これを通じて新しい成長動力を育て、環境にやさしいエネルギー社会へ転換するという構想だ。しかし「水素経済」が韓国社会が目指すべき究極的な未来なのか、懐疑的に見る見方が多い点は最大の難関だ。
政府計画の核心は、水素電気自動車の生産拡大と燃料電池の普及拡大、水素生産および供給システムの構築に焦点が当てられている。2040年までに水素電気自動車を620万台(累積基準)に増やすことをはじめ、現在14カ所の水素充電所は1200カ所に拡充し、発電用燃料電池も拡大普及させるという。これを通じて、2040年に年間付加価値43兆ウォン(約4兆2千億円)と42万の雇用を創出するというのが政府の計画だ。
政府が新しい成長エンジンとして水素を挙げたのは、「炭素経済」に代わるエネルギー源という点と、まだ米国、日本、ドイツなど一部の国家だけが進出した分野を先取りする余地が大きいという環境・経済的判断によるものとみられる。政府の意図どおり水素が自動車など輸送用燃料に代替され、電気と熱などを生産する主要エネルギー源に使われれば、経済・社会だけでなく国民生活全般に大きな変化をもたらすことになる。
政府の目標がバラ色に描かれすぎているという指摘も少なくない。移動手段や発電・家庭用として水素エネルギーが意味あるものになるには、内燃機関車や伝統燃料の「代案」としてすでに浮上している電気自動車や再生エネルギーおよびエネルギー貯蔵装置(ESS)を飛び越えなければならないためだ。政府は水素電気自動車の生産が年間3万5千台に達すると価格が5千万ウォン(約490万円)ぐらいで、10万台を超えれば内燃機関車水準の3千万ウォン台まで下落するものとみている。したがって、現代自動車のような生産者に量産体制を整えるように支援するのが核心だと見ている。産業通商資源部の関係者は「昨年も水素自動車の待機者が4千人を超えた」とし、「つくりさえすれば全部売れる状況なので、量産体系を整えるのが重要だ」と述べた。
政府の計画通り6年後の2025年まで、商業的量産水準である年間10万台(内需6万台、輸出4万台)生産に至っても、その時期に世界市場で電気自動車の技術開発レベルと価格競争力によって状況はまた変わる可能性がある。さらに、エネルギー貯蔵装置などバッテリー技術が相当部分進捗し、すでに商用化の段階という点で、残りの電力を貯蔵する手段としての水素は活用価値が小さくなるという指摘も出ている。
にもかかわらず政府は、国内の水素電気自動車や燃料電池などの関連技術が世界的な水準であるため、これをうまく支援すれば世界の水素経済を先導できるという自信を示している。産業部のチョン・スンイル次官は「韓国は水素電気自動車と燃料電池などの分野で世界的な技術力と最高水準の石油化学基盤、副生水素(石油化学工程で発生する水素)生産能力と活用経験、全国に完備された天然ガス供給力に強みを持っている」とし、「現在のロードマップの目標や開発量産計画はまったく無理な計画ではない」と述べた。
水素エネルギーが環境にやさしい高効率エネルギーになりうるかをめぐっても、議論が分かれる。水素は自然状態で単独で存在せず、水素を得るためには電気など他のエネルギー源が必要だ。水素を褐炭などから抽出する過程でエネルギー損失が発生するのはもちろん、二酸化炭素、硫酸化物、粒子状物質などが排出されることもある。ヤンイ・ウォニョン環境運動連合事務処長は「水素経済の核心である水素は周囲から簡単に得られるものではなく、天然ガスや原油などを精製して作るが、この過程で二酸化炭素などが排出される」とし「生産効率も落ちる水素に多くの予算をかけるのは理解しがたい」と述べた。
政府は経済性と環境性を総合的に考慮して水素経済の実現を目標にしたというが、限られた投資の余力が水素分野に過度に分配される恐れがあるという指摘が出て、むしろこの二つの宿題をちゃんと解決しなければならない課題を抱えることになった。