本文に移動
全体  > 経済

ピケティの不平等解決策「高所得層の税金を引き上げる政党が必要」

登録:2018-10-31 10:04 修正:2018-10-31 12:01
2018アジア未来フォーラム基調講演 
パリ経済大学のピケティ教授 
ノッティンガム大学のウィルキンソン名誉教授 
 
「韓国の最上位1%の所得が大幅に増加 
所得・相続税率を引き上げる政治勢力が必要」 
「資産・教育の不平等、社会関係の崩壊 
不労所得を防ぐ経済民主主義の導入を」
今月30日午前、ソウル市竜山区のソウルドラゴンシティホテルでハンギョレ新聞社主催で開かれた第9回アジア未来フォーラムの開幕式で、フランス・パリ経済大学のトマ・ピケティ教授が「不平等、その現在と未来」をテーマに基調講演をしている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 2018年アジア未来フォーラム初日の30日、「不平等の現在と解決策」をテーマに開かれた基調講演の最初の登壇者として立ったフランス・パリ経済大学のトマ・ピケティ教授は、「なぜ民主主義は不平等を解消できず、不平等がますます深刻化しているのに政治的対応はぬるいのか、なぜ不平等の深刻化が低所得集団の強力な再分配の要求に接続・点火できていないのか」と問いかけた。

 「不平等、その現在と未来」をテーマとした講演で、ピケティ教授は「(所得・資産・教育の)不平等をめぐる政治的対立は非常に多次元かつ多層的で複雑だ」とし、「不平等の克服のためには消費税の累進税率を上げ、教育でより多くの公共財を提供する平等主義志向の強力な政党の綱領が必要だ」と語った。「21世紀資本」を掲げて初めて韓国に来た4年前には、不平等の解決策をグローバル累進税強化に合わせたとすれば、今回は「政治的対応」をその解決策として明快に示したということだ。1時間あまりの講演中、彼は「20世紀半ばに世界的に所得不平等が減ったのには、所得・相続税の変化など政治構造的な変化がその中心にあった」と強調した。最高所得層に対する米連邦所得税率は、1980年代に82%まで累進的に引き上げられた。

 ピケティ教授は、このような政治的対応にも関わらず、米国の資本主義は崩壊するどころか第2次大戦以後1980年代まで非常に高い生産性増加率を記録した点に注目した。彼は「このような経験は生産性の下落がなくても不平等な格差を縮められることを示している」とし、「累進的な所得税引き上げが政治的に難しいのは事実だが、不平等を緩和するためには積極的な政治的対応が必要だ」と述べた。続いて韓国・日本・中国など東アジア諸国でも所得・相続税率が不平等に向き合って闘う最も重要な手段となり得るという点と、「不平等と対決する政治勢力」を形成するという政党への投票構造も不平等の構造とその終息に影響を与えるという点を指摘した。

 ピケティ教授は「教育の不平等」にも注目した。彼は「親の所得水準が子どもの大学進学率を決める要因として作用するが、教育公共財にアプローチする教育の機会が重要だ」とし、「今後、韓国の教育不平等のデータを集めて韓国的な不平等の特徴を調べ、不平等に対応する方法を探ってみる」とも話した。さらに「国際的には新興国と先進国の間で、国内的には中産層と下位階層の間で所得格差が縮まっているが、同時に最上位1%の所得が全体所得の27%(米国)に達する一方で、人口の絶対多数(下位90%)は1人当たりの実質所得の増加率が減少している」とし、「弱体化」と「悪化」を同時に示すグローバル不平等の二つの側面を提示した。講演の終わりに彼は上位1%の所得増加幅が驚くほど急上昇する、いわゆる「ゾウの曲線」に触れ、「韓国も例外ではない。現在の不平等の傾向を手放しで放っておくのか」として、政治的・社会的対応を求めた。

英国ノッティンガム大学のウィルキンソン社会科学名誉教授が今月30日午前、ソウル龍山区のソウルドラゴンシティホテルで開かれた第9回アジア未来フォーラムで政策対談を続けている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 より平等な社会が生産性においても成長するというダイナミックな経路をピケティ教授が主唱した一方、二番目の基調演説に登壇したリチャード・ウィルキンソン英ノッティンガム大学名誉教授(社会力学)は、所得・資産・教育などでの多層的不平等が各種の「社会的関係」を崩壊させ、社会的活力と個人的才能を抑圧するプロセスをさまざまな国際比較で明らかにした。特に、横軸に所得不平等指数を置き、縦軸に疾病有病率、社会的移動性、学校内の集団いじめ、刑務所の収監率、期待寿命、肥満など社会的指標を配置した多様なグラフを通じて、所得不平等と社会的病理現象の間の相関関係を一目瞭然に提示して注目を集めた。

 ウィルキンソン教授は「不平等に対する既存の通念と理解は間違っている」という言葉から始め、所得・資産・教育の不平等は単に物質的な格差を超え、優越感・劣等感、支配・服従、劣位と優位など社会心理的な側面で社会的相互関係に大きな影響を与えると主張した。不平等が深刻化すれば、他人との関係で相互信頼が落ち、社会的凝集力と所属感を落とし、これによる挫折と剥奪感、憎悪と羞恥心など敏感な「感覚」が社会全体において非常に重要になるということだ。彼は「高い所得とよい働き口を持った階層の生活の質も、『より平等な社会』であるほど高まる」とし、所得を分かち合い共有する社会のための企業内賃金格差の縮小、資産不労所得の格差縮小などの「経済民主主義」をより良い社会に向けた解決策として提示した。

チョ・ゲワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/868054.html韓国語原文入力:2018-10-3108:52
訳M.C

関連記事