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米国が助長する新興国の外国為替危機

登録:2018-08-13 22:29 修正:2018-08-14 16:46
トランプ行政府が触発したトルコ リラ貨危機 
基軸通貨国の米国が、通貨危機触発しほう助 
開発途上国に一般特恵関税廃止など貿易戦争 
トルコを見せしめに開発途上国を飼い馴らし
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が12日、黒海に面した北東部の都市トラブゾンで演説し、トルコをめぐる通貨危機に対して「政治的な陰謀には屈服しない」としながら対決姿勢を明確にした。60年間あまり維持されてきた米国とトルコの間の同盟関係は、今回の事態で大きな打撃を受けると見られる=トラブゾン/AP聯合ニュース

 米国の報復性関税賦課で加速化したトルコのリラ貨暴落が、新興市場全般の通貨危機に広がる様相だ。

 13日アジア外国為替市場でドル当たりリラ貨価値は、一時13%落ちた7.24リラまで暴落し、史上最低値を記録した。リラ貨は10日時点ですでに16%も落ちた状態だった。リラ貨暴落の連鎖効果で、南アフリカ共和国のランド貨も13日に10%以上落ち、2016年6月以来の最低を記録した。劣勢を見せたインドのルピー貨も史上最低に落ち、ロシアのルーブル貨は2年6カ月、インドネシアのルピア貨は約3年ぶりの最低値を記録した。

今年の各国通貨の対ドル価値下落率//ハンギョレ新聞社

 通貨危機の拡散は、基軸通貨国の米国が主要同盟国のトルコに対して鉄鋼・アルミニウム関税を10日に2倍に引き上げたことに触発された。トルコ経済と関連が深いユーロ貨も13日に1ユーロ当たり1.137ドルまで価値が落ち、昨年7月以降の最低を記録した。世界の証券市場も萎縮した。この日、日本の日経225指数は2.0%、中国の上海総合指数は1.6%落ちた。韓国証券市場のKOSPIも1.5%落ちた2248.45で取引を終えた。またKOSDAQは3.72%急落した。ウォン-ドル為替レートは1133.9ウォンで5ウォン上がった。

 先週末のトルコリラ貨暴落に触発された新興国通貨暴落事態は“異例”だ。米国がリラ貨暴落を触発し、これを楽しんでいるように見えるためだ。基軸通貨国が通貨危機を触発しほう助するのは、自身が作った体制を自ら傷つける行為だが、ドナルド・トランプ行政府は関わろうとしていない。

 今回のリラ貨暴落は、トランプ行政府がトルコ産の鉄鋼とアルミニウム製品に対する関税を、それぞれ50%、20%に上げるという「報復措置」を出して始まった。トルコ政府が米国人アンドリュー・ブランソン牧師を釈放しないという理由のためだ。

 しかし、軋轢の根元にはトランプ行政府が標ぼうする「アメリカ優先主義」と即自的なアメリカの国益取りまとめがある。2017年1月にトランプ行政府がスタートした後、米国は中国や欧州連合(EU)を相手に「貿易戦争」を始めた。米国の標的は今や競争国を越えて開発途上国に拡大している。

 ウォールストリートジャーナルは、トルコ発の外国為替危機の特徴を「米国の知らぬフリ」と要約した。1990年代中盤のメキシコ通貨危機や1997年のアジア外国為替危機の時は、米国が解決のために善意の努力をしたが、この仮定はもはや有効ではない。トランプ大統領が「アメリカ第一主義」を前面に掲げ全世界の商業・金融関係を拡張・強化・保障するという使命を捨てたためだ。

 実際、米国は開発途上国に直接メスを入れている。ウォールストリートジャーナルは12日、米国がこれまで開発途上国に適用してきた一般特恵関税制度(GSP)を維持するかについて、国家別検討を進行中と伝えた。1976年に導入された一般特恵関税制度は、121の開発途上国の特定商品に対し米国が特恵関税を付与する制度だ。これは覇権国家であり基軸通貨国として開発途上国に「恩恵授与」を提供し、これら国家を米国の磁場内につなぎとめておく役割をしてきた。同新聞は、米国が「最近トルコを標的とすることになった」として、タイ、インドネシア、インドも特恵地位を喪失するかもしれないという通知を受けたと伝えた。トランプ大統領が米国に従順でない態度を見せるトルコを見せしめとしたのだ。

 このような態度は、米国の伝統的な外交規範と慣習をひっくり返すことでもある。トルコは、第2次大戦以後中東で米国の国益を支える“最後の砦”のような同盟国だった。中東唯一の北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコは、米国中心の中東秩序を維持してきた核心定数だった。トルコが70年あまりにわたる大切な同盟を根元から揺さぶるつもりかと怒るのもそのためだ。

 結局、エルドアン大統領がトランプ大統領にひざまずかない限り、トルコの通貨危機は続くと見られる。エルドアン政府は、米国に向かって「別の同盟を探す」と脅しているものの、候補国のロシアや中国には直ちに国際金融市場を落ち着かせる能力がない。

 トルコは現在、約3500億ドルの外債を抱えているが、外貨準備高は3日現在で1029億ドルに過ぎない。そのうえ、使用可能金額は200億ドル水準と伝えられた。すぐにも国家不渡事態に追いつめられかねない危機状況だ。外信は、今回の危機がトルコのように慢性的経常収支赤字に苦しんでいる南アフリカ共和国、アルゼンチン、インドネシアなどに広がりかねないと伝えた。リラ貨の暴落が、主要新興国通貨だけでなくユーロ貨、さらには世界の株式市場を揺るがす理由だ。

チョン・ウィギル先任記者、パク・スジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/857448.html韓国語原文入力:2018-08-13 20:21
訳J.S

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