国民年金をはじめとする韓国の年金基金が“幽霊株式”事態を招いたサムスン証券との取引をいっせいに中断した。
国民年金基金運用本部関係者は10日「金融事故の発生にともなう取引安定性への懸念のため、サムスン証券との直接運用取引を9日から中断した」と明らかにした。基金の株式注文窓口として利用する取引証券会社から除外したという意味だだ。株式の運用を任せた資産運用会社を通した取引制限は、金融当局の検査結果を見てから決める予定だ。私学年金、公務員年金、教職員共済会など他の年金基金は、直接運用も委託運用もサムスン証券との株式取引を中断することにした。私学年金関係者は「金融監督院の検査結果を反映して、6月分期の評価時に取引証券会社を再選定する予定」と説明した。
最大手である国民年金の国内株式投資規模は136兆3千億ウォン(1月末基準、約13.6兆円)で、このうち半分を超える74兆ウォン程度を直接運用している。年金基金は、株式物量を数十の証券会社に分けて注文を出しているが、取引の中断が長期化すれば、サムスン証券の打撃は少なくないものと見られる。金融監督院の検査で、サムスン証券が重懲戒を受けることになれば、年金基金との取引再開は難しくなりうる。ファンドの移動など一般投資家の離脱につながる場合、同社の強みである小売営業も困難に陥りかねない。サムスン証券は高額資産家顧客が多く、金融商品の販売など資産管理部門で競争力が強いと評価されている。
手形発行など短期金融業務ができる「超大型投資銀行(IB)」への指定時期も一層遠ざかる見込みだ。実質的な大株主であるサムスン電子のイ・ジェヨン副会長の適格性問題で審査が保留された状況に加え、大型事故まで起こしたためだ。
業界が見る問題の深刻性は、当面の収益減少よりも、否定的な評判効果によるサムスン証券の信頼墜落にある。幽霊株式を持ち出して売った職員のモラルハザードを超えて、内部統制など取引システム全般に関する不信が高まっているからだ。サムスン証券の株価は、10日も4.4%急落した。“幽霊株”事態が起きた6日からの下落幅は10.7%に達する。長期投資指向の年金基金を中心に、機関投資家は連日160万株前後の記録的な売り越しを続けていて、投げ売りの様相まで見せている。