「大韓民国政府と米合衆国政府は、両国の長く強いパートナー関係を認め、緊密な経済関係を強化することを望んでおり、貿易・投資に対する障壁の縮小・撤廃を追求すると共に…両国間の貿易・投資において本協定の恩恵を縮小する恐れがある新たな壁の設置を回避することを決議し…」。2012年3月15日に発効された韓米自由貿易協定(FTA)協定文第1ページに明示された両国の自由貿易地帯の創設目的に対する内容だ。
発効7年目を迎えた韓米自由貿易協定が約10年前の協定締結当時、市民社会団体が懸念して批判した「巨大経済圏の米国による一方的な力の論理の行事」が現実化し、危険な局面を迎えている。鉄鋼や洗濯機、自動車などにわたるトランプ行政府の無差別的な通商障壁の前で、「両国が自発的経済協力パートナーとして結んだ自由貿易協定」はその無力さを露呈している。
キム・ヤンヒ大邱大学教授(経済学)は「トランプの一方的な韓国産輸入規制攻勢に韓米FTAが何の力も発揮できず、弱点を露呈している」とし、「2007年の交渉当時から『巨大経済圏米国との高いレベルでの市場開放協定は、相手国の市場が大きいだけに、輸出には有利だが、同時に非対称的に力の優位を持つ米国に韓国が引き回される恐れがある』という両面があったが、その限界を示している」と話した。
米国はトランプ政権発足後、鉄鋼・化学製品などに手当たり次第に輸入規制を課している。昨年末基準で韓国産製品に対する米国通商当局によるセーフガード・反ダンピングなどの輸入規制(調査中を含む)は合わせて31件で、このうち8件が昨年に新たに設けられた。通商拡大法第232条に基づく「輸入鉄鋼に対する25%の関税」賦課措置以前にも、韓国産鉄鋼は、反ダンピング保護貿易の攻勢で大きな打撃を受けている。それぞれ2013年から2015年にわたり調査が始まった油井用鋼管や送油管、熱延鋼板の場合、規制以前に6億~8億ドルだった対米輸出額が、2016~17年には年平均3億~6億ドルに減った。
韓国産製品の対米輸出の道が塞がれていく一方、牛肉やスケソウダラ、天然ガスなど、米国産製品の輸入は急増し、対米貿易収支は2016年232億ドルから昨年179億ドルへ大幅に減少した。「韓米FTA廃棄」まで取り上げるトランプ大統領をなだめるため、韓国政府と業界が積極的に対米輸出量を減らし、米国産製品の輸入を増やす雰囲気さえ感じられる。「両国間自由貿易の拡大」という協定の趣旨が変わっていく様相だ。
協定パートナーとはいえ、米国には2国間の交渉枠組みだけでは対応するのが難しいため、貿易秩序の正常化と力の均衡の実現を目指し、韓国も日本主導で11カ国が正式署名した環太平洋経済パートナーシップ協定(TPP)への参加を考慮すべきという声もあがっている。キム・ヤンヒ教授は「私たちが不満を示しても米国側は聞く耳を持たない」とし、「米国がTPPへの後続参加を慎重に検討しているという報道もあるが、韓国もTPPに加盟し、この枠組みの中で他の加盟国と力を合わせてトランプに共同対応しながら、牽制する戦略も必要だ」と話した。
「相互互恵的な利益バランス」を標榜した協定が非対称の不均衡なゲームに入っている状況で、政府は通商手続き法の規定による「韓米FTA履行評価報告書」の作成を最近完了した。通商交渉本部関係者は「3月末に国会に報告する予定」だとし、「数百ページにのぼる報告書は、これまで6年間協定が韓国経済と産業に与えた影響を包括的に点検する内容を盛り込んでいる」と話した。