ドナルド・トランプ米大統領が引き金を引いた鉄鋼貿易戦争の渦中に、米国産農畜産物が欧州連合(EU)や中国など被害当事国が狙う最優先報復対象であり「自国産除外」を貫徹するために活用する圧迫カードとして登場している。キム・ヒョンジョン通商交渉本部長も、現地で米国肉類協会に集中接触し、「ホワイトハウスの説得に参加してほしい」と要請するなど、米農産物を弱い環として終盤の「韓国産除外」に総力を挙げている。
6日、産業通商資源部はキム本部長が1次訪米(2月25日~3月2日)期間に、米国行政府および議会の主要人物だけでなく、肉類協会・穀物協会・畜産協会の代表など農畜産業界と会い「鉄鋼25%一括関税」に関連したアウトリーチ(利害関係者接触・説得)活動を集中展開したと明らかにした。鉄鋼紛争の局面であるのに、米国の農産物業界にあまねく接触した点が注目される。産業部の高位関係者は、ハンギョレとの通話で「農畜産業界アウトリーチは、今回の輸入鉄鋼関税賦課対象から“韓国産の除外”を引き出すための戦略的テコ」だと説明した。トランプ大統領が最終的に輸入鉄鋼への関税賦課に最終署名する状況が近づけば、被害当事国が最初に米国産農畜産物を狙った報復関税に乗り出すため、米国の農業界が率先して「鉄鋼輸入規制反対の声」をホワイトハウスに積極的に伝えてほしいと要請しているという話だ。迂回的に農産物を刺激する、ビリヤードで言えば「スリークッションを通したホワイトハウス説得」だ。
欧州連合と中国は、米国産輸入農産物に正照準を当てている。ジャン=クロード・ユンカー欧州連合執行委員長は2日、「バイク製造業者のハーレー・ダビッドソン、ウイスキー生産業者のバーボン、米国産オレンジジュース、ジーンズメーカーのリーバイスに報復関税を検討中」として正面対抗に出た。中国も、大豆やトウモロコシなど米国農産物に対する報復関税を有力な対応カードとして検討中だ。中国は米国農産物の世界第2位の輸入国であり、米国としては中国の報復に最も脆弱な品目が農業であるということだ。
ただし、キム本部長が韓国も最後のカードとして米国産牛肉に報復関税を賦課することができるという威嚇を米国農産物業界に示しているかは確認されていない。通商交渉本部の関係者は「牛肉報復関税は両国間でとても敏感な問題」として、返事を避けた。米国産牛肉(現在の輸入関税率は24%)の韓国市場輸入物量は昨年17万7千トンで、オーストラリア産を抜いて14年ぶりに1位に上がった。
キム・ヒョンジョン本部長は6日、再び米国に発った。訪米期間は、トランプ大統領が鉄鋼関税賦課行政命令に最終署名すると思われる9日までだ。一方、産業部は、韓米自由貿易協定(FTA)第3次改定交渉と関連して「開催日時をめぐり、両国間の調整がまだ進行中」と明らかにした。当初は今月初めに開くと展望された第3次交渉は、鉄鋼紛争がさく烈して延期されており、今後の改定交渉で米国は「韓国産鉄鋼除外」をカードとして掲げ、自動車など他の品目での交渉優位を狙うだろうと見られる。