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米国産牛肉、輸入倍増…韓国農畜産業に連鎖打撃

登録:2017-12-11 20:58 修正:2017-12-12 08:08
韓米FTA発効後、米国産の市場占有率が急増 
ほとんどすべての農畜産物に“広く深い”打撃 
改定交渉で関税再調整など積極的対応が必要 
新しい通商条約法「農業保護・育成義務」を明示
米国系大型安売りスーパーマーケットのコストコで売られている米国産牛肉//ハンギョレ新聞社

 韓米自由貿易協定(FTA)の改定交渉を控えて、韓国政府が「農業はレッドライン」として交渉対象から除外すると明らかにしているが、協定発表以後の5年間で韓国の農畜産物の被害が急増しているため、むしろ韓国側から米国に対して農畜産物分野の関税譲許再調整を要求すべきだという指摘が出ている。

 11日、米国産農畜産物の輸入物量を見れば、狂牛病波動以後、2008年6月に輸入が全面再開された牛肉は2007~2011年の6万6千トン(年平均)から2012~2016年には12万6千トンに82.7%増加した。豚肉は同じ期間に23%増え、鶏肉・粉ミルク・チーズまで含む米国産畜産物の全体輸入物量は19.4%増加した。輸入金額基準では、増加率が57.8%に達する。

 米国産の輸入増加により、韓国の農家の被害も急増している。肉用牛経営農家は2011年の15万7千戸から2016年には8万5千戸になり、36.1%減った。同じ期間に養豚農家は1773戸(32.8%)、酪農農家は714戸(16.1%)減った。韓国国内での消費量のうち国産が占める「自給率」は、牛肉は2012年の48.1%から2016年には39.0%に、豚肉は78.2%から72.7%に下がった。

 協定発効後の5年間の農家全体の被害は、米国産輸入対象の有無や輸入量の変化を問わずほとんどすべての品目にわたり“広く深い”。農畜産物は一般工業製品と異なり、食品という特性上、ある品目の輸入が増えれば、他品目まで影響を受け、農畜産物全体の生産・消費が共に打撃を受ける。また、農家ごとに米国産輸入被害が少しでも少ない作物に移動するため、他の品目でも過剰生産が発生し、それにともなう価格暴落などの被害が連鎖的に誘発される。

 チョ・ソクジン酪農政策研究所長は「今もそうだが、牛肉など農畜産物敏感品目の関税が完全に撤廃される今後5~10年間、韓国の農業は“煮えた湯の中のカエル”の境遇」だと話した。農産物の特性上、協定履行期間が経過するほど農業被害は幾何級数的に大きくなるという話だ。アン・ビョンイル高麗大学教授(食品資源経済学)は「農産物市場は、品質・価格競争力に劣らず消費者の味と好みが(米国産に)慣れれば、国内農家は回復不能な被害をこうむることになる」として「農産物の関税撤廃が、10~15年の長期スケジュールになっていても、発効から5年で国内農家がこれほどの被害をこうむっているならば、今後はさらに難しくなるだろう」と話した。

 韓米自由貿易協定で米国産輸入農産物に対する関税撤廃率は97.9%(品目数基準)に達する。農畜産物譲歩対象合計1531品目のうち、過去5年間で関税が完全撤廃されたのは954品目だ。すなわち、品目数基準で37.3%はまだ関税が残っている。

 米国産農畜産物の輸入増加要因としては、協定にともなう関税縮小・撤廃効果が大きいことが分かった。韓国農村経済研究院のハン・ソクホ室長は「過去5年間、牛肉・豚肉・チーズ(輸入量192%増加)・粉ミルク(輸入量1300%増加)・果物など、関税率の下落・撤廃と無関税割当クォーター(TRQ)品目を中心に輸入が増加した」と話した。米国産の穀物・飼料・鶏肉は、協定発効以後に逆に輸入量が減ったが、貿易協会は「米国内の作柄不振と鳥インフルエンザの発生など、現地の事情のため」と分析した。ハン・ソクホ室長は「韓国国内のほとんどすべての農家が米国産の輸入増加にともなう直間接的な所得・生産被害をこうむっている」と話した。

 これに伴い今回の改定交渉で、農畜産物譲歩の既存の不均衡を改善する方向で韓国の交渉当局が逆に攻勢に出なければならないという要求が高まっている。ソウル大学のイム・チョンビン教授(農業経済学)は「農畜産物分野で譲歩の再調整を通した両国間の“利害バランス戦略”を積極的に駆使する必要がある」と話した。キム・ホンギル全国韓牛協会会長も、牛肉輸入関税(2011年40%、15年間バランス撤廃)を現在の水準(24%)で凍結するか、撤廃期間を20年に再設定し、米国産牛肉の衛生条件を現在の30月齢から20月齢未満に調整しなければならないと主張した。韓国農業経営者中央連合会のハン・ミンス政策室長は「米国産に対するかんぬきの役割を全く果たせずにいる農産物セーフガード(緊急輸入制限)発動基準(牛肉年間30万トン)を大幅に緩和し、粉ミルクなど無関税クォーター割当量(粉ミルクの場合、年間5千トンから毎年3%ずつ複利増量)の不当で不均等な条件を削除するなど、実質的改善を米国に要求しなければならない」と主張した。通商条約の締結手続きおよび履行に関する法律は「政府は通商条約の履行を理由に、憲法の規定による農・畜・水産業の保護・育成などの義務を傷つけてはならない」と明示している。

 一方、韓国政府は18日、韓米FTA通商条約締結計画を国会に報告するのを最後に、国内での履行手続きをすべて終え、米国との日程協議を経て改定交渉への着手を公式宣言する予定だ。

チョ・ゲワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/823027.html韓国語原文入力:2017-12-11 18:29
訳J.S

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