文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日の就任演説で「財閥改革の先頭に立つ。文在寅政権のもとでは、政経癒着という言葉が完全に消えるだろう」と強調した。財閥改革は、文大統領の10大公約のうち三番目に配置されるほど、意欲を示してきた改革課題だ。
文大統領はまず、財閥の違法な経営承継や皇帝経営、不当な優遇措置などをなくすと公約で明らかにした。このため、系列公益法人や自社株、迂回出資などを通じた大株主一家の支配力の強化を根絶すると約束した。公益法人に持分を贈与し、その支配権を確保することで税金を減らす一部大企業の慣行は、これまで問題になってきた。子会社の取締役が違法行為を働いた場合、親会社の株主が損害賠償を請求する多重代表訴訟制や電子投票制、書面投票制の義務化も推進される。小口株主の参加を高め、オーナー一族の専横に歯止めをかけられる制度だ。また、横領・背任など経済犯罪も厳しく処罰し、赦免権を制限すると明らかにした。
大企業の不公正な慣行も、検察、国税庁、公正取引委員会、監査院などで政府レベルの乙支路(ウルジロ)委員会(仮称)を組織し、改善に取り組む計画だ。発注や受注、インサイダー取引、納品単価の引き下げなどに対する全面的な調査と捜査を強化する方針だ。「経済検察」と呼ばれる公正取引委員会の地位と役割も大幅に強化される見通しだ。「公正取引委員会の中央捜査部」と呼ばれる調査局の復活が代表的な措置だ。財閥の経済力の集中を防ぐため、持ち株会社の負債比率と子会社・孫会社の持分率の要件も強化される。また、国民年金など機関投資家が主要株主として積極的に権利を行使する方針だ。いわゆる「スチュワードシップコード」(責任ある機関投資家の模範基準)の実効性を高め、それを支える計画だ。
財閥改革は4大(サムスン・現代自動車、LG、SK)・10大グループを中心に進められるものとみられる。文在寅大統領の核心的な経済諮問の役割を果たすキム・サンジョ漢城大学教授は最近、ハンギョレとのインタビューで「経済力集中の抑制政策などの公約の実効性を高めるため、4大・10大グループに集中して執行する。公正取引委員会による調査の強化もこれを念頭に置いたもの」だと説明した。
これを受け、大企業には緊張が走っている。実際、一部の大企業は直ちに公約関連影響の分析作業に入った。支配構造の改善、法人税の引き上げ、商法改正、金産分離など経営活動に直結する事案を重要度によって分類し、現況を分析する計画だという。4大グループのある役員は「乙支路委員会や公正取引委員会の地位強化などで企業活動が萎縮する恐れがある」と話した。