サムスン電子は9月20日、ソフトウェアのアップデートを通じてギャラクシーノート7のバッテリー充電を60%までに制限し、10月29日には新型に変更した機器に対しても同じ措置を実施した。その度に「何を根拠に取った措置か」と問い合わせた。だが、前回も今回も「該当事業部に確認してみる」と言ったきり便りがない。
「根拠」を尋ねた理由は、してはならないことをしているのではという疑問を感じたからだ。サムスン電子はギャラクシーノート7を98万8900ウォン(出庫価格ベース、約9万円)で販売した。書類に署名して機器を渡された瞬間から該当機器はユーザーの財産だ。サムスン電子が一方的にギャラクシーノート7のバッテリーを60%までしか充電できないようにしたことが、納得がいかない最初の理由だ。充電が60%までに制限されれば、限度まで充電しても一日持たせるのが難しい。中間に再び時間をかけて充電したり、補助バッテリーを持ち歩くかしなければならない。ちょっとの不便どころではない。
サムスン電子は「消費者の安全のための措置」と話す。各国政府もギャラクシーノート7の飛行機内搬入中断措置とともに使用自制を要請し、韓国の国家技術標準院はギャラクシーノート7を急いで回収しろとの注文までしたということだ。サムスン電子の関係者は「韓国ではギャラクシーノート7の回収率が30%にとどまっている」として「ユーザーの安全のためには格別の対策を講じざるをえなかった」と話した。「穴」(交換・払い戻し)を作っておいて、そこに「追い立てる」(バッテリー充電制限)ことに何の問題があるかと問い直しさえする。
異常発火現象が発生することが明らかになったので、急いで回収するのは当然だ。それでもサムスン電子が直接顧客であり国民であるギャラクシーノート7ユーザーに「ムチ」を入れることまで容認されるわけではない。サムスン電子が回収率を高めるために使える方法は、いわゆる「ニンジン策」に厳格に制限されなければならない。通信料金の支援やスマートフォン・アクセサリークーポンの支給、次期新製品購買時の恩恵のような補償策により交換・払い戻しを促進することが正しい。回収が進まなければ補償を拡大するべきなのに、あろうことかムチを振り回すとは話にならない。不便を与えたり、財産権を侵害する充電制限はムチに近い。
充電制限が正当性を持つためには、社会的な共感が形成されたり、ユーザーの同意を求めるための十分な手続きが先行する必要がある。それでも企業が直接ムチを持ってはならない。本当に必要な措置ならば、十分な根拠を準備して政府機関が乗り出すように説得しなければならない。ところが、肝心の政府機関である国家技術標準院は充電制限に同意しない雰囲気だ。国家技術標準院の関係者はハンギョレに「自発的リコール履行を点検してはいるけれど、バッテリーの充電率制限をサムスン電子に勧告したことはない」と明らかにした。結果的に、サムスン電子は政府の注文・勧告・承認さえない状態で、ユーザーの財産権を侵害し、不便を及ぼすことをためらいなく行ったわけだ。
ちょうど一人の読者がギャラクシーノート7のユーザーだとしてEメールを送ってきて、同じ疑問を提起したのでサムスン電子側に答を催促すると「ギャラクシーノート7のことはもう忘れてほしい」という突拍子もない答えが返ってきた。そこで今回はギャラクシーノート7ユーザーに尋ねる。「サムスン電子がギャラクシーノート7ユーザーの同意もえずに、一方的に充電を60%までに制限したことをどう思いますか?」。さらには集団損害賠償訴訟を提起するついでに、この部分も含めて裁判所の判断を受けてみることを薦めてみたい。このままやり過ごせば悪い先例になりかねない。