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[記者手帳]構造調整用のごまかしの韓国版量的緩和

登録:2016-04-28 23:42 修正:2016-04-29 06:09

 「私たちは鍵も持たない金庫番か? 好き勝手にお金をお使い下さいと言う…。そういうやり方をするなら、企画財政部の下に通貨政策局を一つ作れば良い。何のために中央銀行を作る必要があるのか分からない」

 朴槿恵(パククネ)大統領と大統領府が海運・造船業の構造調整を控えて「韓国版量的緩和」という名前で韓国銀行の発券を連日圧迫し始めるのを見て韓銀幹部がした話だ。

 大統領府は韓国版量的緩和を他の国とは違う「選別的量的緩和」と定義した。 他国の中央銀行が景気浮揚のために紙幣を印刷して無差別に市中に出回らせているとすれば、韓銀は企業構造調整の目的に限定して「差別的に」金融を緩和しようという話だ。 KDB産業銀行と韓国輸出入銀行の資本拡充のために韓銀が直接出資をしたり、産業銀行の金融債を買い上げる方案を例に挙げた。

 大統領府などが量的緩和に「韓国版」とか「選別的」という修飾語をあえて付けるのには理由がある。 それは政府が構造調整に使うお金が必要だが、財政を使うことは嫌なので、韓銀に出して欲しいということをそう表現したのだ。 政府が韓銀の金庫を好き勝手に使った官主導時期に使った「特別融資」という古色蒼然たる言葉の代わり、この頃よく聞かれる「量的緩和」を借用して使っただけだ。

 大統領府は「財政には時間がかかるが韓銀は速い」という理由を挙げて、構造調整の財源用意の窓口として韓銀が望ましいという意を明確にした。 だが「韓銀は速い」が財政を使う代わりに韓銀の発券機能を活用する理由になるだろうか? 構造調整のために韓銀が発券するのは、特定企業の不良経営の責任を国民全員が分け合うようにするということだ。 当該企業がうまく行っている時期には大株主をはじめとする株主と経営陣のような特定利害関係者だけが果実を享受した。 だが経営が難しくなると国民全員に苦痛の分担を要求するということなのに、このようにするには社会的合意と政治的承認が必須だ。 大株主と経営陣は不良の責任を負ったのか、整理されるべき企業を韓銀が紙幣を印刷して延命させるのでなく韓国経済の回復に必要な構造調整の下絵を描いたのか、きっちり点検しその判断に政府と政界が責任を負わなければならないという話だ。

 しかし、大統領府が挙げた量的緩和は、こういう複雑な過程と重い責任を避けるために「ごまかし」をしていると映る素地が大きい。 財政投入は国会合意のために時間もかかり、責任のレッテルも残るので嫌だが、韓銀の発券ならば政治的責任も減らすことができ、それだけ国会の説得も容易だと感じて選んでいるように見える。

チョン・セラ記者//ハンギョレ新聞社

 構造調整問題の解決に韓銀だけは出てはならないということではない。 問題は出るに足る名分と手続き的正当性にある。 紙幣を印刷する発券力を動員するには、どんな形であれ「国会の同意」を取り付けろとの声が韓銀内部で高まっているのは、韓国版量的緩和が持つごまかしを分からなくはないためだろう。

チョン・セラ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/741754.html 韓国語原文入力:2016-04-28 21:32
訳J.S(1382字)

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