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[記者手帳]韓国の免税店はなぜ大企業ばかりなのか

登録:2016-03-18 22:53 修正:2016-03-19 07:30
中国人観光客の急増で免税店の追加と特許期間を延長? ソウル中区のデパートにある免税店売場の中国人観光客 =キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 総売上9兆2千億ウォン(約8800億円、世界1位)。利用者3498万人。 不況下でも2桁の高い売上増加率と平均営業利益率6~7%台の安定した収益性。 業界1・2位を占めるロッテと新羅の市場占有率が79.6%に達する寡占構造。 いわゆる「金の卵を産むガチョウ」と呼ばれる韓国免税店市場の昨年基準の現住所だ。

 今月末、韓国政府の免税店制度改善方案発表を控え熱い論議が続いている。 発端は昨年下半期に免税店特別許可期間を10年から5年に短縮した「改正関税法」により初めて実施された、事業者再承認審査だ。 ロッテとSKがそれぞれワールドタワー店とウォーカーヒル店を失い「5年周期事業再承認」方式が俎上に載せられた。

 16日、世論収斂のために開かれた公聴会で免税店の新規特別許可の追加発行、5年の特別許可期間延長、特別許可手数料(年間売上の0.05%)引き上げ是非など、争点別に複数の改善案が提示されたが、異見の存在だけが確認された。 興味深いのは大企業間の対立だ。 新たに市内免税店事業に進出した企業は、過当競争への憂慮を前面に掲げて新規事業権の発行に反対しているが、新規進出を望む企業は正反対の主張だ。 これは逆説的に言えば、そのどちらの主張も説得力が弱いということを示している。

 マスコミも大企業広告主の顔色を伺いながら一進一退している。 当初は「5年周期事業再承認」方式では、既存業者の投資と仕事が一瞬にして消えるとして脱落企業を代弁したが、最近は新規進出希望企業を意識してか、許可制ではなく申告制や登録制(事業自由化)に切り替える方案を示している。 保守系マスコミが「5年特別許可期間」を攻撃した本当の理由は、自分たちが経営する総合編成チャンネル事業が2017年に再承認審査を控えているからだという憶測まで出ている。 関税庁の幹部は「企業側は自分たちに有利な主張ばかりして、マスコミはこれを濾過することなく報道している」と指摘した。

 結局、カギは政府や国会が一部の大企業やマスコミの「我田引水」の主張に振り回されることなく、国家経済に役立つよう原則を明確にすることだ。 政府は中国人観光客の急増を理由に、ソウル地域の免税店追加と特別許可期間の延長を検討中だと言われている。 だが、これは大企業の利益だけを折衝した一時しのぎに過ぎない。 野党と市民団体が提起している大企業特典論の払拭と中小・中堅企業との均衡発展のための取り組みは見られない。

 市場経済において、免税店のように供給は制限されている一方で参加希望者が多い場合、一般的な選定方法は競争入札だ。 ソウル大のパク・サンイン教授は「政府が外国人観光客の規模に合わせて適正免税店数を決め、一定の資格要件を充足し、最高額を提示した業者に事業権を与える競売方式が効率的」と話した。 18日、未来創造科学部が通信事業者を対象に発表した周波数競売計画が良い例だ。 政府が周波数競売で得る収入は3兆ウォン(約3000億円)を超える見込みだ。 反面、免税店業界の1・2位を占めるロッテと新羅は昨年7兆ウォン(約7000億円)を超える売上を上げたが、納めた特別許可手数料は僅か36億ウォン(約3億5千万円)だった。

クァク・ジョンス経済エディター席先任記者 //ハンギョレ新聞社

 政府は競争入札の場合、依然として事業不安定性の問題があるとして否定的だ。 また、自由化方案についても過当競争への憂慮を挙げて難色を示している。 政府が免税店の大企業寡占構造改善に消極的なのは、中小・中堅企業に対する取り組みがないことからも確認できる。 関税法は特別許可数の30%以上を中小・中堅企業に割り当てることを定めているが、現実的には中小・中堅企業の売上額比重は6.2%に過ぎない。 国民経済の均衡発展のために免税店事業を通じて中小・中堅企業を生かす妙手が必要だ。

 そうしなければ政府発表後にも「免税店はなぜ大企業ばかりが独占するのか?」という疑問が続くだろう。

クァク・ジョンス経済エディター席先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/735718.html 韓国語原文入力:2016-03-18 19:19
訳J.S(1890字)

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