本文に移動
全体  > 経済

OECD「韓国の財政健全性最優秀」...「借金への強迫観念」がもたらした歪んだ成績表

登録:2015-11-08 22:53 修正:2015-11-09 06:53
GDPに比べた国家債務の比率40%台 
OECD平均118%の半分にも満たない 
「追加の財政健全化、必要ないレベル」 
緊縮予算にこだわり福祉支出が後退 
家計借金増える中、政府の懐だけが温かい 
投資と成長が犠牲になる可能性も

 経済協力開発機構(ОECD)が韓国を「財政の健全性最優秀国」に挙げた。今年5月には、国際通貨基金(IMF)も韓国の財政健全性と財政余力を世界で2番目に高く評価した。国際信用評価会社のムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が今年に入って韓国の国家信用を格付けしたが、その根拠も良好な財政余力だった。国外から見た韓国の財政はこのように良好だ。国家債務の増加と財政収支の悪化に対する警告が絶えない国内の視点とは大いに異なる。

 今月6日(現地時間)OECDが発表した「2015財政状況報告書」によると、評価対象OECD加盟国30カ国の財政状況は、2008年の金融危機以降、ほとんど悪化した。加盟国の「国内総生産(GDP)に比べた国家債務」の平均は、2007年の80%から2013年には118%まで上昇した。金融危機以降、景気活性化のために主要国が金利の引き下げなどの緩和的金融政策と共に、積極的な財政政策を展開したことによる結果だ。

主要国の国家債務比率(2013年)(資料:OECD、企画財政部、単位:%)。ОECD平均118。上から日本、米国、フランス、イギリス、ドイツ、オーストラリア、韓国。※国家債務比率は中央・地方政府と非営利の公共機関の負債を含む一般政府負債をGDPで割った値//ハンギョレ新聞社

 韓国も同じ期間、財政の健全性が悪化した。国家債務比率は、2007年に28.7%だったのが、2009年に31.2%に、2014年には35.9%に上昇した。国際基準とする一般政府債務(非営利公共機関の負債を含む)の基準負債比率も40%台だ。しかし、ОECD加盟国の平均(2013年118%)に比べれば非常に低いレベルだ。ОECDは今回の報告書で、「韓国は危機克服の過程で、拡張的財政運用をしたのに、追加の財政健全化が必要ないレベル」だと評価した。経済の脆弱性を改善するために追加の財政を投入する余力が十分だということだ。それと共にOECDは「韓国は高い家計負債と遅い賃金上昇のせいで経済成長が鈍化している」と指摘した。

 一方、国内では与野党や政府にかかわらず、国家債務の増加規模のみに注目が集まっている。国家債務は、2007年の299兆ウォン(約31兆9800億円)から、2014年には533兆ウォン(約56兆8800億円)に230兆ウォン(約24兆5500億円)増えた。この期間中に累積財政赤字(管理財政収支基準)も150兆ウォン(約16兆700億円)に達する。企画財政部が9月に提出した2016年度予算案についてセヌリ党(ユ・イドン院内報道官)は、「国家債務比率が40%に達しており、懸念の声が高まっている。 (債務が)適切なレベルなのか、国会審議で綿密に検討する必要がある」と主張した。新政治民主連合(イ・ジョンゴル院内代表)は、「朴槿恵(パク・クネ)政権は財政支出改革を掲げたにもかかわらず、その運営はひどいものだ。財政破綻を引き起こす無対策の予算」だと批判した。政府も債務比率の上昇を懸念し、来年度に総支出の増加率を例年より大幅に引き下げた緊縮予算案を国会に提出した。特に予算の最も多くの割合を占める福祉分野の支出は、公的年金の自然増加分を除けば、今年の予算よりも減少した。財政の健全性を口実に福祉の縮小を現実化しているのだ。

 このような国内の視点は、IMFの表現を借りれば、「債務への強迫観念」に近い。IMFは、今年6月に発表した「国家債務はいつ減らすべきか」と題した報告書で「低い債務水準は危機に備えられる余力となるが、債務縮小で投資と成長が犠牲になったら、(債務の減少で生まれた)余力は幻想に過ぎない」と指摘した。IMFの財政余力評価でノルウェーに次いで、韓国が世界で第2位の高い評価を受けたことも「借金への強迫観念」がもたらした歪んだ成績である可能性がある。

 政府の懐は温かいが、家計の懐は寒くなっていくのに伴う悪影響は大きい。匿名希望の経済部処の幹部は、「政府の負債は、世界で最も安定的であるのに、家計負債は、世界で最も危険な現在の状況は明らかに異常だ。特に少ない財政支出から始まった低い福祉水準は家計の負債を増やし、消費余力を減らす結果として表れている」と述べた。

世宗/キム・ギョンラク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-11-08 19:56

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/716495.html 訳H.J

関連記事