そこにはないものはなかった。 友達が持ってきた総天然色の香りの出るボールペンも、空腹を抱えた下校途中にちょっと食欲を慰める‘ちょこちょこ’と‘クジ’も、夜ごと目の前にちらついた8ビット ゲーム機の中の‘ペルシャの王子’も、全てが文房具屋にあった。 今は教師になったが、幼い時期 「夢は何か」と大人たちに訊かれれば、カン・ウンス(仮名・32)氏は 「文房具屋の主人です」と答えたりした。
「昨年、偶然に母校の前を通ったが足しげく通った文房具屋がなくなって、その場にはコンビニエンス ストアができていました。」 カン氏の声に物足りなさが滲んでいた。 「学校へ行く道で、スズメが精米所に立ち寄るように文房具屋に立ち寄った。 急いでいるときは、気立ての優しい主人のおばさんがツケで準備物を用意してくれたりもしたが、幼い日の思い出も一緒になくなったようだ」と彼は語った。
文房具やがなくなっている。 小学校一つを囲んで競争した小さな小売り文具店を今は見つけるのが難しくなった。 27日統計庁資料によれば、全国の小売り文具店は1999年の2万6900余店舗から2009年には1万7800余店舗に減った。 10年間に1万店舗がなくなった。 墜落速度は急だ。 2011年には1万5700余店舗へ再び2000余店舗が減った。
他の路地商圏と同じように、大型マートの無分別な開店と大型事務用品業者の登場は、小売り文具店の枯死を予告した。 3年前に施行された政府の‘学習準備物支援制度’も主原因に挙げられる。 子供たちの準備物を用意しなければならない共稼ぎ父母と低所得層の負担を減らすために導入された制度で、市・道教育庁が学習準備物予算を支援すれば各学校が公開入札を通じて準備物を購入して学生たちに配っている。 ‘薄利多売’で勝負しなければならない‘最低価入札制度’には零細商人が入り込める隙間はなかった。
小売り文具店商人は自己救済策を用意しなければならなかった。 ソウル中浪区(チュンナング)の中谷(チュンゴク)小学校前で6坪(19.8㎡)の零細な文具店を営むキム・ヨンスク(49)氏は、27日文具店に冷蔵庫を入れた。 新学期になっても子供たちはもうノートを買うために文具店に訪れることはない。 中学生のノートは今年に入って一冊も売れなかった。 "売上が3年前に比べて3分の1に減りました。 アイスクリームでも売ればよかったが、持ちこたえる才覚がありませんでした。」 キム氏はため息を吐いた。 彼は「近隣で20年間文房具屋をしてきた隣人は今月、生活情報誌に店舗売却広告を出した。 大儲けは望まずに母親の気持ちで文具店を営んできた。 政府が私たちのような零細商人でも暮らせるようにしてくれたら」と訴えた。
キム氏のような小売文具店の主人たちが初めて一つになった。 文具商人の集いである学習準備物生産・流通人協会と経済民主化国民運動本部は27日午前、国会政論館で記者会見を行い、「学習準備物支援制度は良い制度だが、中小商人が徹底的に排除されているので、文具店バウチャー制度を検討するなり、零細な中小商工人協同組合や地域の文具店から優先購入するよう政策を用意し、路地商圏を保護しなければならない」と主張した。 アン・ジンゴル参与連帯民生希望チーム長は「大型マートだけでなく最近ではオフィスデポなどの多国籍企業までが文具類市場に進出している。 政府が文具の生産と流通を中小企業適合業種に指定しなければならない」と指摘した。 オム・ジウォン記者 umkija@hani.co.kr