現代の都市で暮らす人々は、ほとんどの活動時間を座った姿勢で過ごす。また、業務でなくても活動時間が夜遅くまで続く場合が多い。これは慢性的な睡眠不足と運動不足を招く。だから、座っている時間を減らして運動時間を増やし、十分な睡眠を取ることが健康の専門家の基本的な勧告事項だ。
では、一日のうち座っている時間をどの程度まで減らせば良いのだろうか。立っている時間と運動時間はどの程度が適当で、睡眠時間はどの程度にすべきだろうか。
オーストラリアのスインバン工科大学、ベイカー心臓・糖尿病研究所、オランダのマーストリヒト大学の共同研究チームが、40~75歳のオランダの成人約2400人の一日の行動を分析したデータを土台に、5種類の活動を一日24時間のうちどのような割合で配分するのが健康に最も良いかを提案する研究結果を発表した。
欧州糖尿病学会(EASD)が発行する国際学術誌「Diabetologia(糖尿病学)」に発表された研究によると、健康のための最適な24時間の配分方法は、座っている時間が6時間、立っている時間が5時間、睡眠時間が8時間20分、低強度の活動が2時間10分、中・高強度活動が2時間10分。
低強度の活動は、家事から夕食の準備に至るまで多様な日常活動をいう。1分当たり100歩(時速4キロ余り)未満がこれに当たる。例えば、浄水器の水を飲むこと、トイレを行き来すること、友達と話しながら歩くことなどだ。
中・高強度の活動は早歩きや体育館での運動のようにわざわざ行う活動をいう。1分当たり100歩以上の早足がこれに当たる。
今回の研究は心臓病、脳卒中、糖尿病のリスクを減らすための健康生活法を探るための作業の一環として行われた。
■昼食後の低強度の活動が効果大
研究チームは、分析のためにセンサーを着用した成人2000人余りを対象に、24時間の身体の動きを7日間追跡した。実験を始める前に、対象者の腹囲と血糖、インスリン敏感度を測定した。参加者の身体状態によって異なる最適の時間帯のうち、重なりあう部分を最適の区間とみなした。
研究の結果、座っている間は毎時間暇あるごとに低強度の身体活動を行えば、新陳代謝が活発になることが明らかになった。特に昼食後の低強度の身体活動の効果が高いことが分かった。
今回の研究が提示する推奨事項は、具体的な指針というよりは、夜空の北極星を指し示す羅針盤のようなものだという点が強調された。つまり、これを目標にして、ここに近い方向へと行動を変えれば、健康に良い変化が生じる可能性があるということだ。例えば、自家用車を運転する代わりに公共交通機関を利用したり、夜遅くまでテレビなどの映像を視聴しないことなどが役立つ。
研究チームは「今回の研究は心臓病・糖尿病のリスクと最適な一日24時間をつなぐ最初の予備研究であり、今後長期間にわたってさらなる確認が必要だ」と補足した。
*論文情報
https://doi.org/10.1007/s00125-024-06145-0
Associations of 24 h time-use compositions of sitting, standing, physical activity and sleeping with optimal cardiometabolic risk and glycaemic control: The Maastricht Study.