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処分直前に救助された韓国の競走馬「ヌルボム」、故郷の米国で余生過ごす

登録:2024-02-06 09:45 修正:2024-02-06 10:29
[アニマルピープル] 
6年前に韓国に売られてきて3頭の子どもを出産 
昨年10月に済州の畜産協同組合の前で救助され 
米競走馬企業が保護の意向を明らかにし、5日に米国に向かう
昨年10月末に済州市涯月邑の畜産物共同売場の前で処分直前に救助された馬の「ヌルボム」が済州の臨時保護所で草を食べている=キム・ジスク記者//ハンギョレ新聞社

 昨年末、済州(チェジュ)で処分直前に救助された米国出身の競走馬が、6年ぶりに帰郷の道に向かった。この競走馬を韓国に売った北米最大の競走馬企業が、馬の救助の知らせを聞き余生の責任を負うことにしたため、帰郷が叶うことになった。

 5日、国際動物権団体「PETA」(動物の倫理的扱いを求める人々の会)と地域の動物団体「済州(チェジュ)ビーガン」は、昨年10月に済州市涯月邑(エウォルウプ)にある済州畜産協同組合の畜産物共同売場の前で救助した16歳の引退競走馬「ヌルボム」が、米国の競走馬企業「ストロナック・グループ」(The Stronach Group)が所有する米国フロリダ州の競走馬農場「アデナ・スプリングス」に送られることになったと伝えた。

ヌルボムは4日夕方、済州から慶尚南道泗川の三千浦港まで船で移動した後、5日昼に米国行きの航空機に乗った。写真は移動の準備をしているヌルボムの様子=団体提供//ハンギョレ新聞社

 ストロナック・グループは北米の主要な競馬場を多数所有する競走馬企業で、馬にとって安全なレース文化を作り薬品の使用を最小化するなど、競走馬の福祉保障のために努力している。2019年に引退した競走馬が済州畜産協同組合の前で処分直前に殴打される動画をPETAが暴露し、アデナ・スプリングスは翌年から競走馬の韓国輸出を禁止している。

 ヌルボムは2007年に米国ケンタッキーで生まれた牝馬で、競走馬の時期には「マイ・イルーシブ・ドリーム」(My Elusive Dream)という名前で呼ばれた。現役の頃には合計10回のレースに出場したが優勝できず、結局3歳で引退して繁殖馬として米国で5頭の馬を産んだ。そうして2018年に韓国に繁殖馬として売られて来て、2022年4月まで3頭の子どもを産んだ。ヌルボムは最後に産んだ仔馬が乳離れするやいなや、処分前に最後に過ごすことになる肥育農場に売られた。

ヌルボムは北米最高の競走馬の1頭である「エル・プラド」の娘であり、2018年に韓国に来てから3頭の子どもを産んだ。写真は昨年10月の救助直前に済州市涯月邑の済州畜産協同組合畜産物共同売場の前での姿=団体提供//ハンギョレ新聞社

 ヌルボムのつらい生は昨年10月に処分場で無残に終わるところだったが、当時、済州で引退競走馬の実態調査を行っていたPETAの調査官らと済州ビーガンの活動家によって劇的に救助された。その後、ヌルボムは済州ビーガンと協約を結んだ済州の馬保護施設で過ごしてしていたが、今回のストロナック・グループの提案で、本格的な帰郷の道に進むことになった。

 この1月間は出国のための検疫手続きを踏んでいたヌルボムは、4日に済州の臨時保護施設から船で慶尚南道泗川市(サチョンシ)の三千浦(サムチョンポ)港に移動し、同日正午に仁川(インチョン)空港から飛行機で米国シカゴに向けて出発した。その後、シカゴから再び陸路でフロリダ州南部のマリオン郡にある競走馬農場「アデナ・スプリングス」まで移動する予定だ。

ヌルボムは4日夕方、済州からで慶尚南道泗川の三千浦港まで船に移動した後、5日昼に米国行きの飛行機に乗った。活動家がヌルボムと挨拶を交わしている=団体提供//ハンギョレ新聞社

 ヌルボムの帰還が伝えられると、外国メディアも米国で生まれた引退競走馬が「第二の人生」を得たとし、関連ニュースを報じた。AP通信は1月29日(現地時間)、「『マイ・イルーシブ・ドリーム』の達成困難な夢がついに実現した」と報じた。これに先立ち1月8日(現地時間)、米国の週刊誌「ピープル」がヌルボムの帰還のニュースを報じ、ヌルボムが北米最高の競走馬の1頭に選ばれる「エル・プラド」の娘だと報じた。

 救助から3カ月間、ヌルボムを保護していた動物団体は、韓国も引退競走馬を世話する施設などを拡充して認識を改善する必要があると強調した。済州ビーガンのキム・ラニョン代表は「済州は馬の故郷と呼ばれるほどだが、これまで引退競走馬が余生を過ごす適切な保護施設を求めることには多くの困難があった」としたうえで、「済州市は全国で指折りの大型の馬処理施設を運営中である一方、馬を保護する施設は圧倒的に不足している」と指摘した。

昨年10月末に済州市涯月邑の畜産物共同売場の前で処分直前に救助された馬の「ヌルボム」が故郷の米国に帰ることになったと動物権団体「PETA」と済州ビーガンが5日に伝えた=団体提供//ハンギョレ新聞社

 PETAのキャシー・ギレルモ首席副会長は「ヌルボムはこれからは平和で安全な生活を送ることになるだろうが、韓国の数多くの引退競走馬は、今もなお処理場に向かっている」として、「PETAは、韓国馬事会が引退競走馬の保護のための適切な政策を展開するときまで、北米の競馬関連の企業に『競走馬の韓国輸出禁止』に参加するよう要求するだろう」と明らかにした。

キム・ジスク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/human_animal/1127293.html韓国語原文入力:2024-02-06 00:01
訳M.S

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