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この星の主人はクジラだろうか…海に覆われた惑星発見

登録:2022-09-02 06:44 修正:2022-09-02 10:58
100光年の距離、めったにない「暖かい惑星」 
質量の30%が水…「最高の海洋惑星の候補」 
近い時期、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での観測を申請
天体の表面全体が海で覆われていると推定される系外惑星TOI-1452bの想像図=モントリオール大学提供//ハンギョレ新聞社

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が至急探索し確認しなければならない系外惑星が発見された。これまでの観測を基づく科学者らの推定によると、この惑星は全体が水で覆われた「海洋惑星」であるかもしれない。

 カナダのモントリオール大学系外惑星研究所(iREx)を中心とする国際研究チームは、地球から約100光年離れたりゅう座の連星系の星のなかでも大きな恒星であるTOI-1452を公転する系外惑星を観察したところ、表面全体が厚い海で覆われている可能性があることが分析により分かったと、国際学術誌「天文学ジャーナル(The Astronomical Journal)」に発表した。

 「TOI-1452b」という名前のこの惑星は、地球よりサイズと質量が少し大きいスーパーアースであり、非常に熱いわけでも寒いわけでもない、いわゆる「ゴルディロックスゾーン」にある。

 研究を主導したルネ・ドワヨン教授は「私たちの研究室で設計したスピルー(SPIRou)という名前の特殊な分光旋光計と自主開発した分析方法のおかげで、この独特な系外惑星を探知できた」と述べた。

 研究チームは、2019年に米航空宇宙局(NASA)の系外惑星探索用の宇宙望遠鏡「テス(TESS)」が発見した恒星TOI-1452の明るさが、11日周期でやや暗くなることに注目した。これは、この星を回る系外惑星が存在することを意味するからだ。惑星が恒星の前を通過する際、恒星の明かりは弱くなる。

 研究チームは、ケベック近隣のモンメガンティック天文台(OMM)の望遠鏡に設置された系外惑星専用の観測カメラ「ペスト(PESTO)」を利用し、追跡観察を始めた。TOI-1452は、太陽よりはるかに小さい赤色矮星に似たサイズのもう一つの星とペアとなり互いを回っている連星系だ。二つの星の間の距離は太陽から冥王星の2.5倍だが、テス望遠鏡では二つの星が一つにみえた。

 研究チームは、ペストのカメラの高い解像度のおかげで、この星が一つではなく二つで構成されており、惑星は二つの星のうちTOI-1452を回っていることを確認した。

系外惑星TOI-1452bは恒星を11日周期で回る=モントリオール大学提供//ハンギョレ新聞社

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海洋惑星という推定の根拠は

 この星は海洋惑星だとする推定は、どのようにして出てきたのだろうか。

 科学者らは、軌道を回る惑星の重力の影響により星の明かりがどの程度揺らぐかをみて、惑星の質量を推定する。また、恒星の前を通過する際、光をどのくらい遮断するかをみて、惑星のサイズを推定する。前者は視線速度(radial velocity)、後者は光度曲線(light curve)という。

 研究チームが50時間以上の観測により得たデータをもとに計算したこの系外惑星の大きさ(直径)は地球の1.7倍、質量は4.8倍だ。研究チームを興奮させたのが、まさにこの数値だった。

 天体の大きさと質量がわかれば、密度を類推できる。二つの値をもとに推定したこの系外惑星の密度は、1立方センチメートルあたり5.6グラムだった。地球(5.5グラム)に似た水準だ。質量が5倍大きな天体の密度が地球と似ているということは、この天体がより軽い物質で構成されていることを示している。

 したがって、この系外惑星は、地球のような岩石の惑星でありながらも、半径や質量、密度の関係は地球と大きく違う特性の天体だというのが、研究チームの判断だ。

 地球はどのような特性の天体なのだろうか。表面の70%が海である水の惑星だ。しかし、全質量に対して水が占める割合は1%未満だ。表面は湿っているが内部を掘ってみると乾燥した天体だ。

 水がより多い天体であれば、密度は地球に比べはるかに小さいだろう。研究チームは、この系外惑星の質量と密度を比較し、水が全質量の30%を占めると推定した。研究チームは、木星の衛星ガニメデとカリスト、土星の衛星タイタンとエンケラドゥスなどが似た割合を有していると明らかにした。

 論文の第1著者である博士課程の学生のシャルル・カデュー氏は、「TOI-1452bは、私たちがこれまでに見つけた最高の海洋惑星の候補の一つ」だと述べた。

 海洋惑星の特性を備えている数少ない暖かい惑星の一つであり、大気を研究することで仮説を検証可能なほど地球に近いという点からだ。しかも、この系外惑星は、一年を通じて観測可能な北極星の近くにあるりゅう星座の領域にある。

系外惑星で最もありふれた形態は地球より大きなスーパーアース型の岩石惑星(左側)とそれよりさらに大きな海王星型の氷惑星だ。海王星は地球の3.8倍=NASA提供//ハンギョレ新聞社

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ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の広範囲な化学物質識別力に期待

 研究チームの視線は、すでに、初期観測活動中であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に向いている。この海洋惑星をもう少し具体的に調べるためには、ハッブルの100倍に達するジェイムズ・ウェッブの優れた観測能力が必要になる。

 ジェイムズ・ウェッブは、過去には見ることができなかったものも探しだすことが可能な赤外線の広範囲な透過能力により、系外惑星の大気構成を立体的に把握できる。系外惑星の観測は、ジェイムズ・ウェッブの主要な任務でもある。

 系外惑星を観測する主な目的の一つは、地球外生命体または居住の可能性がある天体を探すことだ。ジェイムズ・ウェッブは、直接生命体の痕跡を探しだすわけではない。しかし、可視光線から近赤外線、中赤外線にかけての広範囲のスペクトルから、様々な化学物質を識別できる。その過程で、生命に関連付けられる様々なシグナルを見つけだすことが可能だ。まず最初に、惑星に大気があるかどうかを確認する。研究チームは、この惑星が、大気がほとんどない岩石天体である可能性もあり、水素とヘリウムで構成された大気を有する岩石惑星である可能性もあるという。テス宇宙望遠鏡の主な任務の一つが、まさにジェイムズ・ウェッブで大気を調べてみる価値のある系外惑星を選びだすことだ。

 ドワヨン教授は報道資料を通じて、「可能な限り早く、この不思議で素敵な世界を観測する時間を予約する計画」だと述べた。ドワヨン教授は、ジェイムズ・ウェッブの「近赤外線撮像・スリットレス分光器(NIRISS)」の首席研究員でもある。

 これまでに発見された5000個ほどの系外惑星のうち、35%は海王星(地球の3.8倍)のような氷惑星、31%は地球より大きな岩石惑星である可能性が高いスーパーアース、30%は土星や木星のような巨大なガス惑星であり、残りの4%が地球に似ていたり少し小さな岩石惑星だ。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1057038.html韓国語原文入力:2022-09-01 20:41
訳M.S

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