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地球上の水資源の97%を占める海水…わずか4ドルで飲料水に変わる?

登録:2022-02-23 08:23 修正:2022-02-23 10:16
安価で高効率の海水淡水化装備を開発 
1平方メートルの装置だけで1家庭分の飲料水の供給が可能 
現時点では概念の証明実験の段階…実用化が課題
全世界の人口の3分の2が水不足の状況に陥っている=ピクサーベイ//ハンギョレ新聞社

 地球は水の惑星だ。宇宙から地球が青く見えるのは、地球の表面の70%を覆っている海のためだ。科学者らは海水が地球全体の水の97%に達すると推定している。このうち、人類が飲料水や生活用水に使う淡水は3%に満たない。淡水のなかでも地表水はわずか1%、地下水まで合わせても30%に過ぎない。

 地球の水の分布の実態を知ると、人口100億に向かって進みつつある地球の各地で水不足問題が起きている理由は、容易に推測できる。程度の違いはあるが、全世界の人口の3分の2が水不足の状況と無関係ではない。

 水不足問題を解決する最高の代案は、海水を淡水に変えて使うことだ。しかし、淡水化施設を造り使うためには、多くのエネルギーと費用を要する。淡水処理後に残る塩分の副産物の処理も悩みの種だ。このような要因のため、水の状況がいっそう劣悪な開発途上国に淡水化システムを導入することは難しい。

 米国マサチューセッツ工科大学(MIT)と中国の共同研究チームが、既存の淡水化方式に比べ、より簡単に安く、塩分の副産物の問題も解決できる小型淡水化システムを開発し、国際学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した。

新しい海水淡水化装置の回路図=MIT提供//ハンギョレ新聞社

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太陽光と自然対流現象を利用する単純構造

 研究チームは、既存の太陽光淡水化システムで海水を吸い込むために用いられる芯管(wick)のないシステムを開発した。これが、塩分の蓄積に脆弱であり掃除が難しい芯管の短所を乗りこえることを可能にした。さらに、材料費にわずか4ドル(約460円)を使うだけで、一つの家庭に毎日飲料水を供給可能な装置を作ることができる。

 商用化する場合、海水淡水化分野の適正技術の事例として注目される。適正技術とは、多額の費用を要する先端技術の代わりに、社会のインフラの現実に適合した安価で安定した技術のことだ。

 この装置の淡水化方式は、太陽光で水を暖め、自然な対流現象を利用し、水を蒸発させるものだ。

 芯管の代わりに、小さな穴が一面にあいている3重のポリウレタンシートと太陽光を吸収するカバーが、この淡水化装備の中心だ。穴のサイズは幅2.5ミリメートルになる。

 海水から淡水にする過程は次のようなものだ。まず、この装置を水の上に置くと、ポリウレタンシートにあいている小さな穴を通じて水が上っていき、シート上段に薄い膜のように広がる。すると、その上を覆っている黒いカバーを通じて吸収された太陽光エネルギーが、水を蒸発させ純粋な水を抜きとる。

 続いて水が蒸発し、残った塩分は穴を通じて下に降りていき、下側にある冷たい海水が上ってきて、新たな淡水化サイクルが始まる。塩のため上側にある水の密度は下側にある水より高くなるが、この密度の差が自然な対流現象を起こし、水を続けて淡水化できるよう循環させる。

 研究チームは、試験の結果、塩分濃度20%(重量基準)の場合でも、太陽光で水を蒸発させることで80%以上の効率を示したと明らかにした。さらに1週間経過後も、装置から塩分の結晶は検出されなかった。

MITの研究チームが作った海水淡水化の試験装置= MIT提供//ハンギョレ新聞社

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廃水処理・医療器具の殺菌にも応用可能

 この装置で特に意味があるのは、日常生活で多く使われる材料で作ったという点だ。スポンジやメモリーフォーム(シート状の緩衝材)などの素材に用いられるのが、このポリウレタンだ。研究を率いたMITのイブリン・ワン教授(機械工学)は報道資料で「多くの淡水化研究は新材料に焦点を合わせているが、私たちは家庭で使う材料を使う」とし、「この装置は、おそらく芯構造がない初めての製品だろう」と述べた。

 研究に参加していないサウジアラビアのアブドラ王立科学技術大学の王鵬教授は「淡水化設備の塩分蓄積問題を解決する革新的な方式」だと述べ、「エネルギー効率が高く、耐久性が良いうえ費用まで安く、極めて有望にみえる技術」だと論評した。

 しかし、現時点では、概念の証明の段階の実験装置を作ることに成功しただけだ。実際の生活に使える実用的な装置に改造することが今後の課題だ。研究チームの計算によると、集水面積が1平方メートルの装置だけでも、一つの家族が毎日使う飲料水を十分に提供でき、材料費は4ドルだ。研究チームは数年内に商用化が可能だと予想した。

 研究チームは、まずは電気を使えない人里離れた地域や災害地域で有効に使えるはずであり、システムを拡張する場合、発展途上国の飲料水問題を解決することにも大きな助けになると期待している。王教授は「装置の構造は単純であるため、開発途上国に良い機会になり得る」と述べた。

 さらに研究チームは、汚染した廃水を処理したり医療器具を殺菌することにもこの技術を使用できると明らかにした。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1032032.html韓国語原文入力:2022-02-22 11:08
訳M.S

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