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誰もが老いて死ぬ?…「老化の宿命」逃れた長寿のカメの秘密

登録:2022-06-29 06:22 修正:2022-06-29 07:36
[アニマルピープル] 
性成熟後も身体損傷の復旧にエネルギーを投入 
老いても死亡率が伸びず、むしろ低下するケースも 
200歳のアルダブラゾウガメも…人の老化抑制と関連し、注目集める
ガラパゴスやセーシェル諸島の巨大なリクガメは100年以上長生きする。彼らは老いても成長を続け、生殖能力を維持することで絶滅を免れた=ピクサーベイ提供//ハンギョレ新聞社

 いくら医学が発達して安全な社会に住む人でも、老化とそれによる死は避けられない。しかし、人だけでなく、他の哺乳類や鳥類など、温血動物が逃れられない老化の宿命を、一部の爬虫類は軽く乗り越える。

 デンマーク南部大学のリタ・ダ・シルバ氏をはじめとする研究者たちは、世界中の動物園の膨大な情報を集めた国際動物情報管理システム(ZIMS)を利用し、動物園と水族館のカメが長生きするだけでなく、そのほとんどの老化が遅く、さらに老化が止まったり、逆行したりするケースまであるという事実を、今月24日付の科学ジャーナル「サイエンス」に掲載された論文で明らかにした。

アフリカのサバンナに生息するヒョウモンリクガメ。100年まで生きるという=カンバ、ゲッティイメージ提供//ハンギョレ新聞社

 研究者たちはカメ52種、約2万6000匹の資料を分析したが、調査した種の75%が極めて遅い老化スピードを見せ、80%は人より老化が遅かった。リタ・ダ・シルバ氏は「老化に関するこれまでの理論とは異なり、多くの種のカメが老化を遅らせたり、さらに老化のスイッチを完全に切ったりもする」とし、「老化がすべての生物の宿命ではない」と同大学の報道資料で述べた。

 進化生物学では、性成熟後に訪れる老化を身体の復旧と生殖間の相反する関係(トレードオフ)として説明する。細胞と組織の損傷を復旧することにエネルギーを費やすか、それとも次の世代に遺伝子を残す生殖にエネルギーを投資するかにおいて決定を下すわけだ。

最も長生きするカメの一種であるアルダブラゾウガメ。200歳以上生きていることが分かったが、立証が難しく、現在最長寿の個体は190歳=ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 ほとんどの動物は性成熟期を過ぎると成長を止め、体の機能が衰退し、最終的に死に向かう老化の道に進む。しかし、カメは性成熟後も細胞の損傷を補うのにエネルギーの投資を続け、老化を遅らせたり、回避したりするように見えると、研究者たちは分析した。多くのカメが一生成長を続け、雄は年を取って体がますます大きくなり、雌はより多くの卵を産むこともある。

 インド洋のセーシェル諸島に住むアルダブラゾウガメは、100歳以上生きる長寿のカメで、200歳まで生きる個体もいるというが、今回の研究で老化率(年齢を取ることによる死亡増加率)が0であることが分かった。年を取っても若い時と死ぬ確率が同じだという意味だ。

年を取るにつれて死亡率が若い時より低いことが明らかになったハミルトンガメ。微笑むような口の形が特異だ。東南アジアに広く生息しているが、ペットなどとして乱獲され、国際的絶滅危惧種に指定された=ウィボウワー・ザトミコ、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 東南アジアに生息するハミルトンガメは調査で、老化率がマイナスを記録した。年を取れば取るほど、老化どころかむしろ死亡率が低下する。ギリシャリクガメの雌も同様にマイナスの老化率を記録した。地中海沿岸に分布するこのカメも100歳をはるかに超える長寿カメとして知られている。

 老化が止まったり、老化率がマイナスになったりするからといって、これらのカメが永遠に生きるという意味ではない。論文の主著者の一人であるフェルナンド・コルチェロ教授は「老化がほとんどなされなかったり逆行したりするカメだからといって永遠に生きるわけではない」として、「ただ死亡確率が年を取るにつれて増加しないという意味」だと話した。言い換えれば、彼らもいつかは病気などによって死ぬ運命なのだ。

 これら長寿のカメは、老化を抑制する秘密が明らかになる前に地球から消える危機に瀕している。アルダブラゾウガメやハミルトンガメ、ギリシャリクガメはすべて乱獲と密猟によって国際的絶滅危惧種に指定されている。

 動物園のカメは野生より生息環境が良いため、死亡確率が低いものだ。しかし、この研究と共に「サイエンス」に掲載された米ノースイースタン・イリノイ大学のベス・ラインケ氏(生物学)などの論文を見れば、カメの長寿は必ずしも良い環境によるものというだけではない。

エジプトリクガメは雌より雄の老化率がはるかに低い。今回の研究でカメは雌より雄の方が老化も遅く、さらに長生きすることが分かった=ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 研究者たちは野生のカメを含めて変温動物77種の長期研究を分析したが、野生のカメの老化率は哺乳類より20分の1以上低く、鳥や人の半分の水準だった。また、ニュージーランド固有の爬虫類のムカシトカゲ(Tuatara)は、老化率がカメの90%水準で、平均寿命が137歳だった。

 19世紀半ばは40歳だった人の平均寿命が今では81歳に倍増した。しかし、これは主に幼児死亡率の減少と生活条件の向上による結果であり、年を取るにつれて死亡率が急増する老化率はそれほど変わっていない。そのことから、長生きするカメやサンショウウオ、ワニなど変温動物がどのように老化を抑制するかが注目を集めている。

引用論文:Science,DOI:10.1126/science.abl7811

チョ・ホンソプ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/ecology_evolution/1048572.html韓国語原文入力:2022-06-2817:00
訳H.J

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