本文に移動
全体  > 文化

カゲロウの大群はジュラ紀にもいた…恐竜はどうやってしのいだのか

登録:2022-06-11 08:59 修正:2022-06-11 11:52
[アニマルピープル] 
中国南部で2億年前の化石発見 
複雑な生涯、これまで知られていたよりも古くからあった
中生代ジュラ紀初期、中国南部の川辺で絶滅したカゲロウ系統の成虫が大量発生した想像図。水中で長時間を過ごした後、水の外に出て大きな群れをなし、短時間につがいを作り死ぬという生涯はすでに2億年前に確立されていたことを示している=ヤン・ディンファ提供//ハンギョレ新聞社

 毎年5~6月になると、漢江(ハンガン)などの川辺の住民は、大きな群れを成して明かりに向かい押し寄せるトウヨウモンカゲロウの成虫に難儀する。死骸をシャベルでかき出さなければならないほど多く押し寄せる虫が原因で店の運営に支障をきたし、せっかくマスクを外せるようになったのに、口の中に入ってくるカゲロウのため散歩や自転車に乗るのが怖いという話も出ている。

 では、「徳沼(ソウル東部の漢江沿いの地名)のティンカーベル」という別名と違って苦痛や不便を与えるカゲロウの群れは、人間が生みだした人工照明や気温上昇のためなのだろうか。そうではないという証拠が出てきた。

毎年この時期、漢江沿いにはトウヨウモンカゲロウが大量発生し、周囲に暮らす人々は難儀する。京畿道驪州市梨浦ダムの明かりに集まったカゲロウの群れ=キム・キソン記者//ハンギョレ新聞社

 カゲロウが約2億年前のジュラ紀の時代にも大きな群れを成していたことを示す化石が発見された。恐竜が歩き回っていた中生代でも、古代のカゲロウは爆発的に繁殖し、川辺を飛び回っていた可能性が高い。

 中国科学院南京地質古生物研究所の博士課程の張前旗氏らによる国際研究チームは、科学ジャーナル「地質学(Geology)」と「歴史生物学(Historical Biology)」の最新号に掲載した論文で、「最も長期間カゲロウの群れが良い状態で保存された化石を発見した」とし、「カゲロウの複雑な生活史は、すでにジュラ紀初期に確立されていたことがわかる」と明らかにした。

 研究者らは、中国南部の広西チワン族自治区賀州市にあるジュラ紀の化石の産地である西湾盆地で、他の昆虫や植物、サメの卵などとともに、多数のカゲロウの化石を発見した。発見したカゲロウは現在は絶滅した系統で、381匹が翼、胴、触角などをそのまま保つ完全な状態で化石として残っていた。

中国南部で発見されたカゲロウの成虫の群れの化石=中国科学院南京地質古生物研究所提供//ハンギョレ新聞社

 張氏は「化石のカゲロウの方向を分析した結果、明確な方向性はみられず、また、微細な附属肢が損傷していない点から、カゲロウの死骸が遠い所から流れてきて蓄積したものとは思われない」と報道資料で述べた。つまり、ジュラ紀のカゲロウも爆発的に出現して死に、化石として残ったという話だ。

 カゲロウは、幼虫の時は水中で数年間過ごすが、成虫になると水の外に出て、大きな群れを成した後、何も食べずにつがいを作ることだけに没頭する。水の外の生活は数時間から数日間にすぎず、韓国語では「ハルサリ」(「一日生きる」、転じて「その日暮らし」という意味もある)と呼ばれるようになった。

カゲロウの化石の精密写真と絵=張前旗ほか(2022)「歴史生物学」提供//ハンギョレ新聞社

 研究者らは、「つがいを作るために大きな群れを成す行動は、現在のカゲロウの先祖についてのみ知られていたが、今回発見されたカゲロウは、現在は絶滅した古代の系統であるため、カゲロウの複雑な生涯は、すでにジュラ紀初期に確立されていたことがわかる」と明らかにした。研究者らはまた、「この化石は、昆虫が群れを成しつがいを作る最も古い証拠」だと付け加えた。

 カゲロウの大量発生は生態学的にも重要だ。魚以外の捕食者に周期的に豊かな餌があるという期待を抱かせ、周辺の植物にも水中の栄養分を伝達する役目を果たしていると、研究者らは明らかにした。

毎年、漢江などの韓国の川辺で大規模に出現するトウヨウモンカゲロウの様子。口が退化して噛みついたり刺したりしない澄んだ水の指標生物だ=チョン・グァンス、国立生物資源館提供//ハンギョレ新聞社

 大きな群れを成すカゲロウは、人に迷惑をかけるが、成虫は口が退化しており、人を噛んだり刺したりはしない。また、水質が良い場所でのみ生きる指標生物でもある。

引用論文:Geology, DOI: 10.1130/G50055.1

チョ・ホンソプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/ecology_evolution/1046481.html韓国語原文入力:2022-06-10 10:22
訳M.S

関連記事