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アフリカダニ…8年間何も食べず繁殖、27年も生きた

登録:2022-02-25 09:45 修正:2022-02-26 06:35
[アニマルピープル] 
8年断食しても繁殖に成功 
乾燥と少ない餌に適応、「極端な『持つ戦略』」
アフリカの乾燥地帯に生息する甲羅の柔らかいダニ。学名はArgas brumpti=ジョナサン・コーエン提供//ハンギョレ新聞社

 45年にわたる長期の観察研究は偶然始まった。米ニューヨーク州の小都市に位置するビンガムトン大学の生物学者ジュリアン・シェパード教授は、1976年に自分の専攻分野ではないアフリカダニの生きた標本をプレゼントされた。

 このダニが次の世紀まで生き延びるとは、彼は夢にも想像できなかった。そのうえ、雌のダニは8年間何も食べずに生き残り、最後の雄が死んでから4年後に繁殖に成功した。

 シェパード教授は「衛生昆虫学ジャーナル」最近号に掲載された論文で「このアフリカダニがダニの中で最長寿記録を立てた」とし「寄生節足動物がどれほど極端に『待つ戦略』を展開するのかをよく示している」と明らかにした。

 このダニはアフリカ東部と南部のサバンナや砂漠など乾燥地帯に生息する種で、甲羅が柔らかく、雌は2センチまで育つ大型種だ。大小の哺乳類やトカゲにくっついて血を吸うが、動物が眠る浅い洞窟や砂場、体を掻くシロアリの巣などで宿主動物を待つ。

大型の哺乳類が背中を掻くのにぴったりのナミビアのシロアリの塔。ダニが宿主を待つ場所の一つだ=オルガ・エルンスト、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 シェパード教授は実験室で、ケニアの洞窟で採集した雌6匹、雄4匹、幼虫3匹からなるダニ集団をガラス瓶に入れ、一定の温度(21度)と湿度(81%)を維持して育てた。実験室で恒温・恒湿を維持するのは難しくなかったが、問題は餌だった。

 最初は実験動物のウサギやネズミなどを宿主として提供し、その後はネズミの血液を抜いて与えたりもした。生きた動物をダニの餌として与えるのが難しいうえ、動物実験をしなくなり、シェパード教授は1984年に餌やりを中断した。

 断食を余儀なくされた雌3匹は、1992年まで全く餌を食べずに生き残った。第1世代のダニたちは2003年まで生きた。27年も生きたわけだ。

最長寿のダニと明らかになったArgas brumptiを紹介したハリー・フックストラルの本「アフリカのダニ」(1956)の図版//ハンギョレ新聞社

 シェパード教授は「生物が環境に適応する姿はいつも魅惑的だ」とし「このダニも長期間水を得るのが事実上不可能な環境と、宿主と出会うまで長期間何も食べずに待たなければならない生活方式によく適応した」と、同大学の報道資料で述べた。

 驚くべきことは、ダニが長い断食に耐えただけでなく、その後餌を食べると、繁殖を始めたという事実だ。8年間の断食が終わった直後、シェパード教授は自分の血を提供したが、生き残った雌のうち1匹が3年にわたって繁殖に成功し、2世をつくった。

 最後の雄が断食中に死んだのは4年以上前の1988年だが、雌はどうやって繁殖できたのだろうか。シェパード教授は、「雌と雄の幼虫がすべて生まれたことを考えると、単性生殖ではなく、雄の精子を長期間保管しておき、餌を食べ始めた後に受精した可能性が高い」と明らかにした。

アルガス属のダニの産卵の様子=米疾病管理及び統制センター提供//ハンギョレ新聞社

 2世のダニたちは27歳を迎えた現在も生きており、系統分類を研究する南アフリカの共研究者の手に渡った。このダニがどのように水とエネルギーを節約して生存することができたかは、後続の研究課題になった。シェパード教授は「私の研究の関心事は蛾の精子の生理学」だとし「南アフリカの研究者がダニを活用できて嬉しい」と述べた。

 このダニは人間に病気をうつさず、これまで生態があまり知られていなかった。しかし、このダニにかまれると非常に痛く、傷が数カ月から数年間残るという。

引用論文:Journal of Medical Entomology, DOI: 10.1093/jme/tjab205

チョ・ホンソプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/ecology_evolution/1032253.html韓国語原文入力:2022-02-23 15:31
訳C.M

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