韓国語は、日本語、ツングース語、モンゴル語、チュルク語と共に、トランスユーラシア語に属す。別名「アルタイ語」と呼ばれるこの語族は、西のトルコからモンゴルを経て東の韓国と日本、カムチャツカ半島に至る広い地域に分布している。現在、トランスユーラシア語に分類される言語は98言語に達する。
トランスユーラシア語の最大の特徴は、「目的語の次に述語が来る」という点だ。また、英語にみられる接続詞と関係代名詞がなく、同じ種類の母音だけが並ぶ母音調和や修飾語が名詞の前に来ることも、この語族の代表的な文法上の特徴だ。
トランスユーラシア語の起源は、あまりにも広大な地域の人口と言語の分散、農業伝播の歴史が複雑に絡んでおり、学界の熱い論争の種の一つだ。これまでは、概してトランスユーラシア語の起源を、4000年前の中央アジア大草原の遊牧民としていた。これらの人々が東と西に移動し、世界で最も広い範囲にわたり言語を広めたのだろうという推測だ。
ところが、ドイツのマックス・プランク人類史科学研究所が率いる国際共同研究チームが、これまでの通説とは全く違う研究結果を出した。韓国を含む11カ国の35の研究機関により構成された研究チームが、国際学術誌「ネイチャー」に発表した論文で、「歴史言語学と考古学、古遺伝学の3分野のデータを基に交差検証・分析した結果、トランスユーラシア語族の起源は、初期新石器時代の約9000年前の中国遼河一帯でキビの農業を営んでいた耕作人たちの言語だと明らかになった」と主張した。キビは稲作の前から栽培されていた雑穀だ。
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6500年前に東に移動し、韓国語の起源を形成
研究チームは、この地域の98言語の3193の農業・食品関連の語彙セットから言語の家系図を作り、255の遺跡から出た遺物の類似性、様々な遺跡から収集した269の古代の作物の年代測定資料、アムール川と韓国、日本で収集した19人の古代人の遺伝子と、これまでに発表されたトランスユーラシア語地域の古代人23人の遺伝子、現代人約2000人の遺伝子分析データなどを比較分析した。
その結果、初期新石器時代である9000年前の中国東北部の遼河地域でキビを栽培していた農夫たちが、その後、東と西に移動し、トランスユーラシア語の拡大が始まったという結論を下した。キビ耕作の初期である9000年~7000年前に人口が増え人口の分散を誘発し、これらの人々の一部が6500年前に東に移動し始め、韓国の西海岸地域や沿海州に到着し、韓国語の起源を形成したということだ。研究チームによれば、一般的に稲作は付加的な労働が必要なため、人口を吸収する傾向がある。一方、キビはやせた土地でもよく育つが、単位面積あたりの収穫量は少なく、定着地を拡大させるパターンを示す。
研究陣チームは「欲知島(ヨクジド)の古代韓国人の遺伝子を新たに分析した結果、これまで日本にだけ存在したと言われていた日本人の祖先の縄文人がそこで暮らしていて、現地人との混血が行われた事実も明らかになった」と主張した。
その後、3300年前に遼東や山東地域に住んでいたこれらの人々が、朝鮮半島に移住し、米と麦、小麦を耕作リストに追加し、3000年前にこれらの農作物が日本の九州に伝わったことが明らかになった。それを機に日本は縄文時代から弥生時代に移り、日本語への「言語転移」(linguistic shift)が行われたと研究チームは明らかにした。
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黄河流域とは異なる品種の栽培…言語の分散経路も変わる
さらに、今回の研究を主導したマックス・プランク研究所のマーティン・ロベーツ博士は「遼河流域のトランスユーラシア語族の祖先と黄河地域のシナ・チベット語族の祖先は、同じ時期にそれぞれ異なる種類のキビを栽培していた」とし、「これがそれぞれ異なる言語の分散経路をたどっていく土台になった」と英国紙「ガーディアン」に述べた。
9000年前の中国東北部の遼河の農耕民を起源とする今回の「農耕仮説」は、4000年前の中央アジアの大草原の遊牧民を起源とする「牧畜仮説」とは、時期や地域、生活パターンなど、すべての面で完全に相反するものだ。したがって、これをさらに詳しく裏付けられる後続研究が必要だとみられる。
ロベーツ博士は「韓国と日本、中国のような国々は、単一言語、単一文化、単一血統を持つと描写される」とし、「民族主義的な議題を持つ人々にとっては、自分の言語と文化の起源が国境の向こうにあるということは不快な真実だが、すべての言語と文化、人間は混じりあっている」と述べた。