本文に移動
全体  > 文化

[レビュー]韓国の80年代生まれ、産業化世代と民主化世代をつなぐ

登録:2021-05-08 03:02 修正:2021-05-08 06:41
『追い越しの時代』 キム・シウ、ペク・スンホ、ヤン・スンフン、イム・ギョンビン、ハ・ホンギ、ハン・ユンヒョン著/メディチメディア(2020) 
『追い越しの時代』//ハンギョレ新聞社

 『追い越しの時代』の企画は、「80年代生まれの社会的言説とは何か?」との問いから始まった。50年代生まれが主軸となった「産業化世代」といわゆる「386」と呼ばれる「民主化世代」に続き、最近は「90年代生まれ言説」が登場している状況において、世代間をつなぐものとしての「80年代生まれ」言説を確認してから次に進むべきだという問題意識が、著者たちとのコンセンサスを形成した。

 これまで産業化世代と民主化世代を経て、「親日/左派」と「保守/進歩」という特定イデオロギーを基盤とした二項対立は、分野を問わず韓国社会を貫通してきた分析枠として位置づけられてきた。実際には、これは韓国社会を正しく映し出す鏡というよりは、敵味方を分けるのに適した道具として用いられてきた。社会発展のスピードについていけない政治言説は、どのように克服しうるのだろうか。これに対する解決策として著者たちが注目したものこそ、まさに韓国社会の中枢となる「80年代生まれ」だった。では、彼らには何か特別なものがあるのだろうか。

 著者たちは、70年代生まれと90年代生まれの間に挟まれた80年代生まれの特殊なアイデンティティに注目する。80年代生まれは発展途上国だった韓国で育った最後の世代であると同時に、青年期に先進国としての「韓国」を経験した最初の世代だということ。発展途上国時代を生きてきた既成世代の経験と、生まれた時から韓国が先進国入りしていた90年代生まれ以降の世代の経験をあわせ持つことから、既成世代と90年生まれ以降の世代を両者ともに理解しうる。また、産業化世代と民主化世代を対決意識や蔑視なしに客観的に見つめることができる初めての世代と言える。

 『追い越しの時代』は、政治言説の両極化を打破し、「80のための政治」を探るための著者たちの準備の言説であり、政策的提言である。韓国社会内における「ポピュリズム」の機能と社会中間層の力量の再評価を論じる「ポピュリズムとフィードバックの社会」、韓国現代史の政治的事件を俯瞰しつつ、それらを可能にした「忘れられた主体」を探索する「中道派の国」、「ニューライト」の歴史歪曲だけでなくインターネット上の歴史的嫌韓情緒も共に扱う「ニューライト」、オンライン世論調査をもとに今日の韓国の青年世代が持つ社会意識を考える「ニューノーマル」、韓国社会の対立構造のひとつの軸となっている「世代間の分裂」をいかに解決すべきかを論じた「86世代の戦争」、新型コロナウイルスへの対処と世界の中の韓国の位置を扱った「ポストコロナ時代」、人類学者チョ・ハン・へジョン教授の「先亡国」概念によって韓国社会の変化の潮流を分析した「先亡国の逆説」、公開採用領域を減らすことが韓国社会に最も必要な構造改革だと主張する「公正の再定義」、韓国産業化の成功の原因を歴史的に探る「奇跡の再構成」、韓国の文化的特質がどのように現代社会に長所として作用するかを扱った「韓国はまだ弱小国なのか」など、どれ一つとして見逃せない内容だ。

 「今は私たちにとって『追い越しの時代』です」。共に民主党のイ・ナギョン前代表のこの演説内容からも分かるように、韓国は劣等感を基盤とした「先進国の追撃」から脱し、今や堂々と先進国の隊列に合流している。「世代論」と「政治的レッテル貼り」から脱し、韓国社会の直面する状況と問題を客観的に分析し、適切な代案を探ることこそ急がれるという著者たちの言葉のように、先進国としての韓国を認め、その基準にふさわしい社会システムを構築することこそ、韓国社会の直面する課題ではないかと思う。

シン・ジュシク|メディチメディア編集者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/994222.html韓国語原文入力:2021-05-07 05:00
訳D.K
シン・ジュシク//ハンギョレ新聞社

関連記事