4月7日の再・補欠選挙が残した政治的意味は「MZ世代(1980~2000年代初頭生まれのミレニアル世代と1990年代中盤~2000年代生まれのZ世代を合わせた言葉)」の発見だ。選挙が終わって1週間が経ったが、「進歩派の象徴」と思われていた若者世代が保守政党を支持した理由は何であり、なぜ性別によって票が明確に分かれたのかをめぐり、政界は解釈に奔走している。与党の共に民主党は「20代とコミュニケーションできなかった点を反省する」という立場文を出し、最大野党「国民の力」は勝利の功を「20代男性」として、彼らの心をつかむ方策作りに乗り出した。はたしてMZ世代の当事者たちはどう見ているのだろうか。
本紙は10日夜、この世代の男性3人、女性3人と「カカオトーク」のグループチャットで放談を行った。放談のテーマは「4・7再補欠選挙の有権者心理からみる20代」だったが、革新のない巨大二党の限界を指摘する厳しい指摘が多く出た。彼らには、政党が追求する理念と哲学よりも「自分の問題」に政党がどのように反応するかがより重要に思えた。対話に参加した人の名前は仮名にした。
「どの政党が『自分の問題』の利益になるかを考えた」
-今回の選挙結果を見て感じたことは何だろうか。何が選択に最も大きく作用したか。
クォン・イヨン(以下クォン)=投票を通じてより良い政治を作れるのか?無力感が大きい選挙だった。巨大二党の候補たちに期待しがたい選挙だった。
ハン・ソンジュ(以下ハン)=政権与党にしばらくブレーキをかけなければならない時期だと思ったが、当選が有力だという候補にも、第3候補の中にも特に票を入れたい人がいない選挙だった。
パク・ジョンヒョン(以下パク)=今回の選挙自体よりも、今後の大統領選挙の政権交代を念頭に置いて投票した。
-出口調査の結果、20代以下の男性は「国民の力」のオ・セフン・ソウル市長候補を圧倒的に支持した。20代以下の女性はオ候補よりも共に民主党のパク・ヨンソン候補に多くの票を入れ、「第3候補」を選択した割合も15%を超えた。このようなギャップをどう解釈したか。
ホン・スヨン(以下ホン)=20代の女性は、文在寅(ムン・ジェイン)政権に対する代案として「国民の力」以外の他の選択肢を考慮した。今回補欠選挙を行うことになった理由を、誰よりも敏感に受け止めているということ。違法撮影、n番部屋、MeToo運動などの影響で、「フェミニスト」であることを前面に掲げた群小候補たちにも票を入れた。まず、私たちが選挙の「変数」と思われるようになったということ自体に意味があるかもしれない。女性の票が政治的にもっと考慮されなければならないと思った。
ソン・ソヒ(以下ソン)=20代の女性たちは変化に対する熱望が高いと感じた。ジェンダーイシューに敏感で繊細に対応できる候補者、政治が必要だと思った。女性の立場から見れば、ジェンダー関連法案や制度が著しく少ない。あるとしても肌で感じられず、このような部分をカバーできる候補がこれからも支持を受けるのではないか。
-一方、20代男性の「国民の力」の支持をめぐり、「保守化した」という評価も相次いだが。
イ・チャンイル(以下イ)=国民の力の選挙キャンペーンが男性に有効だったとか、20・30世代の要求を満たしたとは考えにくい。「行くところがないからとりあえず大きい家に行った」という考えで、国民の力が反射利益を得たと思う。(オ候補の代わりに)パク候補を選んだ女性たちは、以前の選挙や政治活動で見せた国民の力のイメージの影響を受けたのだと思う。ジェンダー平等は必要だし、皆がより良い環境の中で安全で良い暮らしをしなければならないということに同意する反面、メディアまたは原理主義によってジェンダーイシューが変質し、男女の溝が大きくなるのではないかという心配もある。
ハン=男性はジェンダー対立が深まった時期を経て、保守政権よりも相対的に女性に近い政策を多く展開した進歩政権に反感を持つようになったのではないかと考えた。
-20代の女性たちが少数政党に票を入れた部分は、二党構図に対する反発と解釈できるだろうか。
クォン=私たちは政党に対する関心よりも、社会的イシューの方が敏感。これが政治的無関心や、成熟していない政治的選択だとは思わない。民主党、国民の力はいずれも若者の現実に対する理解が足りない。若者のための政治を少数進歩政党に任せるのではなく、巨大二党が私たちの世代を包摂できる政策の変化が必要だ。
ソン=同じ脈絡から「20代男性は保守、20代女性は進歩」という報道に共感できない。私たちの世代は進歩・保守のうち一つのイデオロギーに固執するよりも、社会的イシューなどをもとに流動的に動いているからだ。
ホン=政治があまりにも巨大二党を中心に構成されているので、政党と政策に対する部分が、市民たちに積極的に話されにくい環境になっていると思う。政党は、政策の多様性よりも中道層の票を持って来ようとする傾向のために似通った主張を掲げる。自分が支持する候補の当選の可能性を考えると、自分の信念と所信に沿って投票するのが難しく、次善策で投票するようになるという現象は残念。だからこそ、より社会イシューに反応するようになるようだ。
「それぞれが自力で生き抜く」時代、権力を使った利益に反発
-「公正」「実利」が重要である理由は何か。今後の選挙でもこのようなことが影響を与えると思うか。
イ=努力してもなかなか就職できず、マイホームも買えないだろうという考え、「金のスプーン」などに代表される二極化が深刻になった。前政権の不道徳などによって発足した現政権は「公正」を打ち出したが、これまでの政策をみるとそのような公正性に合致する政策はたくさんあったのか疑問。
ホン=それぞれが自力で生き残る時代に、若者たちが置かれている不安定な状況のせいだ。安定した人生、安全な人生、落ちこぼれのない人生が保障されない社会で、誰かが権力を利用して利益を得ること、能力もないのにただ乗りしようとする姿は、若者に反発心を抱かせるばかりだ。ただ、公正をめぐる談論が能力主義に陥ったら、問題解決は難しいだろう。能力がすべての指標になる社会にならないことを願う。誰が不利な環境に置かれていて、不当な差別を受けていて、機会を奪われているのかをよく見て、ともに生きられる社会を作ることが重要ではないか。
パク=私は、正義と道徳性は人それぞれ判断基準が違うと思う。自分には正義だが他人には不正義になるかもしれない。そのような理由を挙げるのは個人の満足のためだと思う。候補者の一貫性、専門性、その他の能力を見て投票したのもそのためだ。
イ=私も進歩と保守の価値よりも、私個人が好きなこと、私個人に得になる部分は何かをもっと多く考慮するようになる。
-政党がどんな価値を代弁することを望むか。
パク=そもそも、ある価値を一貫して代弁している政党があるのかがよく分からない。例えば、保守政党である国民の力が、党綱領にベーシックインカム(基本所得)を入れたことのように(一貫していない)。そのような価値を代弁する政党がないから、私たちはイシューごとに限界ある中で反応するしかないのでは。
クォン=一貫した政治的立場よりも、その内部に存在する「違い」がもっと大事に扱われるべきだと思う。今や「386世代」のように一世代全体をまとめる一般的で共通した立場を見い出すことは難しい。多元化した政治的立場を、今の政党政治でどのように反映すべきか考える必要があると思う。