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[書評]韓日右派の「歴史バックラッシュ」に脈絡的批判で対抗する

登録:2020-03-02 07:11 修正:2020-05-16 08:47
歴史社会学者のカン・ソンヒョン 
『反日種族主義』7カ月後に最も徹底的な分析・批判書出版 
「偽りを発話する位置を示し、その偽りの声を相対化する方法で論争開始」
『脱真実の時代、歴史否定を問う:「反日種族主義」現象批判』(カン・ソンヒョン著/青い歴史・1万7900ウォン)//ハンギョレ新聞社

『脱真実の時代、歴史否定を問う:「反日種族主義」現象批判』
カン・ソンヒョン著/青い歴史・1万7900ウォン

 『反日種族主義』が出版されてから7カ月後に、韓日右派連合の「歴史バックラッシュ」攻勢に対抗する最も徹底的で総合的な反論書が出た。これまで1、2冊の本が出てはいたが、旧態依然だったり部分的な批判に留まっていた。だが『脱真実の時代、歴史否定を問う』は、韓日の歴史否定集団が掲げる主張と論理の脈絡を示す方法で本質的な鉄槌を加える。

 著者のカン・ソンヒョン聖公会大学教授は社会学を専攻したが、韓国を始めとする東アジアの思想統制と公安、戦争とジェノサイド、冷戦と過去清算などを深く研究してきた歴史社会学者だ。彼はプロローグで本の方法論をこのように説明する。「何らかの脱真実事態について『これは偽りだ』と暴露したり、脱真実を助長する個人や集団に『あなたは嘘つき』だと烙印を押すのは、脱真実現象から抜け出すのではなく、そこにさらに巻き込まれるだけのことだ。 (…)脱真実時代に歴史否定論者に対応する方法は、偽りを発話する位置を示し、その偽りの声を相対化する方法で始めるのが最善だと考える」

別名「ビルマロード」の中国嵩山のある村で、中国軍第8軍の兵士が捕虜として捕えた「慰安婦」と取った写真。一番右側の臨月の女性の名前はパク・ヨンシム。写真を撮られた当時、パク・ヨンシムは下血しており、結局死産した=青い歴史提供//ハンギョレ新聞社

 「脈絡的批判」と呼ぶに値するこの方法論がはっきり示される象徴的な事例が、第二次世界大戦当時の米軍と英軍の捕虜審問資料だ。実証主義者を自任するイ・ヨンフン元ソウル大学教授は『反日種族主義』で、「米軍の審問記録が慰安婦制度の本質と実態に関して他のどの記録より詳細で正確な情報を含んでいる」とし、主要な論拠として引用しながらも、実際にはその審問記録の正確な名前と作成者などを明らかにしなかった。カン教授はイ・ヨンフン元教授が「日本軍捕虜尋問報告第49号」(以下尋問報告49号)を見たのだろうと判断する。この資料は日本の極右派が日本軍「慰安婦」を否定する主張を行う時にしばしば活用する資料で、インターネットに「原資料のコピー」が飛び交っている。カン教授は該当の文書を誰がどのような目的で作成したのか脈絡を理解してこそ、文書を十分に分析できると言う。「尋問報告49号」は米陸軍のインド・ミャンマー戦線に配属された米国戦争情報局(OWI)心理戦チーム(別名、レドチーム)の日系二世の情報兵士アレックス・ヨリチが米軍の対日心理戦の材料に使おうと1944年10月1日に作成したのだ。アレックス・ヨリチはビルマのミッチーナーからレド収容所に移送された朝鮮人「慰安婦」20人と彼女らを管理した日本人業者夫婦2人を審問した。

中国雲南省保山騰衝の外塹壕に散らばった朝鮮人女性の遺体を中国軍の埋葬組が眺めている。日本軍による「慰安婦」虐殺の証拠だ=青い歴史提供//ハンギョレ新聞社

 イ元教授は「慰安婦とは日本軍に附属した職業的娼婦」だとか「1年後の1943年後半に負債をすべて返済した慰安婦は帰国できるとの命令が下され、一部は朝鮮に帰還した」として「自由廃業」が可能だったと主張する。「尋問報告49号」を根拠とした主張と見られる。しかし、カン教授は同じ捕虜を審問した他の資料を交差検証してみると、イ元教授などが隠そうとする真実が明らかになると言う。ニューデリー所在の英軍合同軍事情報尋問センターが作成した「東南アジア翻訳尋問センター心理戦尋問報告第2号」(以下、尋問報告2号)がそれだ。「尋問報告2号」は「慰安婦」が前借金(前金)と利子を全て返せば朝鮮に帰ることができる無償通行券を受け取ったが、「戦時状態のために慰安婦の中で今までに離れた人はただの一人もない」と明らかにしている。その上で「尋問報告49号」をそのまま信じるとしても、「負債をすべて返済した」という条件が付くのなら、それは自由廃業ではないとカン教授は反ばくする。

 「慰安婦」が「職業的娼婦」であるというイ元教授の主張の根拠は、アレックス・ヨリチが使った「プロスティチュート」(prostitute)という単語だ。ところが当時、アレックス・ヨリチが聞いた日本語の単語は「慰安婦」という意味の「イアンフ」だった。これを日系兵士が参考した辞書からprostituteと翻訳したのだ。「言い換えれば、prostituteは現在の意味で『娼婦』を意味する普通名詞ではなく、『慰安婦』を指して翻訳する特定の概念」だった。しかも、「アレックス・ヨリチは女性の中の一部は『地上で最も古い職業』で働いたことがあるが、大多数は無知で教育を受けることができず、病院に入院した負傷兵を訪問して包帯を巻くなどの仕事だと認識して来て、このような詐欺に騙されて何百円の前払い金を受けたが、これが借金となり隷属したと書いた」。詐欺による強制動員の事実を明確に示したのだ。必要な内容だけを恣意的に選んで歪曲する日本の極右派とイ・ヨンフン元教授式の詭弁がそっくりそのまま明らかになる。イ元教授はここで一歩進み、アレックス・ヨリチが「日本人業者」と表現したことを「朝鮮の斡旋業者」に変えたりした。

 イ元教授はある「慰安婦」が一度に1万1000円を送金したが、これは今日の価値で3億4400万ウォン(約3100万円)だとして、「慰安婦」が途方もない金儲けができるいい仕事だったと強調する。しかし、これも日本軍の占領地で急激に上昇した戦時インフレを隠す方法で事実を歪曲した典型的な嘘だ。「1941年12月を100で基準とすれば、(該当の送金が行われた)1944年12月は東京の物価指数は130であり、シンガポール物価指数は深刻な戦時インフレにより1万766だった。したがって1万1000円は東京では132円の価値にしかならなかった。(…)送金するのが許されたとしても、朝鮮でそれを現金として引き出すのには大きな制約があった。 (…)結局、全く価値のない軍票を集めた格好になったという評価が一般的だ」。著書はこのように几帳面な交差検証を通じて、イ元教授と日本の極右の偽りの主張を一つずつ論破する。

『反日種族主義』は最近までに日本だけで約40万部が売れた。各種の嫌韓図書の大衆化に油を注いだようなものだ=青い歴史提供//ハンギョレ新聞社

 『反日種族主義』は「実は私が『土着倭寇』だ」(朴槿恵(パク・クネ)政権の最初の大統領府報道官であるユン・チャンジュンの発言)のように公共の場所で親日派宣言をできるようにした起爆剤となった。このような現象は解放以来初めてだとカン教授は言う。朴槿恵政権の国定教科書推進など政権レベルで遂行した「歴史戦争」の結果、オールドライトとニューライトの境界が崩れ、親日派が図々しく頭をもたげることができる環境が造成されたのだ。『反日種族主義』の著者の一人であるイ・ウヨン氏が日本の極右派の金を受け取り日帝を美化する講演をして回っても、何の良心の呵責も感じない状況だ。韓日の右派連合は「日本の極右派」の佐瀬昌盛の教え-「誰も100パーセント証明することはできないので、全ての事実は論証の問題ではなく説得力の問題だ。詭弁でも熱心に、声を高めて、さらに確信的に自分の主張をするのが有利だ」-の通り、相対主義と反知性主義で武装して歴史の真実に向かい汚れた刀を振り回している。

 偽りに対抗する道はただ一つ、倦まずに真実を言うことだ。著者がプロローグの最初の文章で提示した米国ドラマ『チェルノブイリ』の最初の場面で、録音機から流れる言葉がその理由を代わりに説明する。「偽りの対価は何でしょうか?偽りを真実と勘違いするのが問題なのではありません。本当に危険なのは、偽りをずっと聞いていると真実を見る目を完全に失うということです」

イ・ジェソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/930239.html韓国語原文入力:2020-02-28 10:23
訳M.S

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