登録 : 2017.01.19 23:30 修正 : 2017.01.20 06:47

脱北から15年のピアニストのキム・チョルウン 

24日、ハウスコンサートの舞台で演奏  
北朝鮮、ワーグナーやラフマニノフは禁止 
1日9時間の練習でテクニックが卓越

脱北ピアニストのキム・チョルウン氏が16日午後、ソウル麻浦区のハンギョレ新聞社を訪れ、ピアノの前に座った=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社
 25歳のときに最年少で「朝鮮国立交響楽団」の首席ピアニストに抜擢、平壌(ピョンヤン)舞踊音楽大学とロシア国立チャイコフスキー音楽院卒業。父は北朝鮮の道知事級、母は大学の国文科教授、祖母は平壌最大の百貨店の支配人(社長)…。

 2002年に南に来る前まで、ピアニストのキム・チョルウン(43)は「北朝鮮で成功している」若者だった。脱北の動機は「自由な音楽をするため」だった。事情がある。ロシア留学を終え平壌に戻ったキム・チョルウンは、音大の女性同期生にプロポーズしようとリチャード・クレイダーマンの「秋のささやき」を練習した。ところが誰かが申告し、国家安全保衛部に呼び出され取調べを受けた。「ああ、平壌で私の音楽人生は終わった!」と思った。それが北朝鮮を離れた直接的なきっかけだった。

 南に来て15年、キム・チョルウンは百済芸術大学の外来教授、ソウル教育大学の研究教授として働いている。24日、ソウル城東区(ソンドング)の聖水(ソンス)カフェで開かれる第518回「ハウスコンサート」の舞台に立つ彼に16日、ハンギョレ新聞社で会った。

 「北朝鮮から来てずいぶん経ったが、今回の舞台を通じてピアニストとして完全に大衆と会えると思うと期待も大きく、デビューの舞台のようにドキドキします。これからはハウスコンサートはもちろん、さらに多くの演奏の舞台に立つ覚悟です」

 彼は2009年の米カーネギーホールでの演奏など、海外公演の経験が豊富だ。今回、ハウスコンサートの演奏曲はショパンのノクターン20・21番とプレリュード4番、ドビュッシーの四つの小さな組曲、咸鏡道民謡のドンドルラリだ。韓国で育てた最初の弟子のイ・ミンジと一緒に演奏する曲もある。

 南北のクラシック音楽環境はどのように違うかが気になった。「北も南と一緒です。バイエル、チェルニー、ショパン・エチュードは全く同じで、童謡を編曲した「児童団歌」や「革命軍ごっこ」を弾くというのがちょっと違います。大学ではショパン、リスト、グリーグ、ムソルグスキー、ショスタコーヴィチなどを学びます。ラフマニノフはアメリカへ行ったことで、ワーグナーはヒトラーが好きだったということで、禁止曲です。ラヴェル、ガーシュウィンも禁止ですが、ドヴォルザークは許されます。「アメリカ」などを作曲しましたが、民族主義者だということでしょう」

 ロシア留学時代には、ラフマニノフ、プロコフィエフ、ムソルグスキー、グリンカを数多く練習した。「私がチャイコフスキー音楽院に通っていた時が社会主義崩壊直後であったため、北朝鮮留学生は私とチェリストの二人しかいませんでした。大使館で寝泊りしながら学校に通いましたが、おかずはキムチしかない時代でした。個人的にはチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番と『四季』の6月と11月が好きです」

 キム・チョルウンは、北朝鮮のクラシック音楽のレベルは高いと強調した。「硬くはあるが、午前9時から夕方7時まで血のにじむ特訓をするのでテクニックがずば抜けています。2008年のニューヨーク・フィル平壌公演の時、朝鮮国立交響楽団を指揮したロリン・マゼール氏に直接聞いたのですが『テクニックが世界的なうえに、楽譜を見ないで演奏するオーケストラは初めて見た』と言いました」。特に、北朝鮮の音楽教育は「総合体」(全人教育)を志向する。「大学でピアノ専攻の場合、2年間は朝鮮のチャンダン(伝統的な朝鮮音楽のリズム)、朝鮮舞踊、バレエが必須科目であるうえ、作曲対位法・楽器編成法・調律法・和声学など、音楽家として総合体を作る教育をします。私が編曲までするのはそのような教育のおかげですね」

 彼が韓国の住民証を取得してから15年。父親は亡くなり、母親はソウルに連れてきた。家庭を築き7歳の娘と5歳の息子がいる。しかし、まだ「異邦人」のように感じる時が多い。それで北朝鮮から出て来た人たちのために何かしたいと思っている。「脱北者の子どもを集めて南北青少年オーケストラを作りたいです。平和のメッセンジャーとしての役割です」

ソン・ジュンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2017-01-19 21:07
http://www.hani.co.kr/arti/culture/music/779431.html 訳M.C(1971字)
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