華厳経観音菩薩の神秘的な姿・居所を形象化した名品
民間還収の重要な先例…今後一カ月間一般公開を予定
高麗仏画の傑作である14世紀中葉頃の「水月観音図」1点が、国立博物館に収められた。国立中央博物館は17日、(株)韓国コルマーホールディングスのユン・ドンハン会長から「水月観音図」の寄贈を受ける記念行事を開き、観音図をマスコミに公開した。
ユン会長は今年初め、日本の古美術業者から約25億ウォン(2億3千万円)でこの作品を購入し博物館に寄贈した。「水月観音図」は、仏教経典『華厳経』の「入法界品」に出てくる観音菩薩の居所と姿を描写した仏画だ。高麗仏画の中でも色感、構図、描写力に優れているため高麗仏画の白眉とも呼ばれる。高麗水月観音図はインドの南海岸にあるという聖山、補陀洛迦山の岩に座った観音菩薩が画の大部分を占め、左下に描かれた幼い善財童子と会う場面を加える構図でほとんどが描かれている。
今回寄贈された水月観音図はシルクに描かれたもので、観音菩薩が画面の全面を満たす高麗仏画の典型的図像を見せている。微笑を浮かべた観音菩薩は、からだと頭から出る光である身光と頭光に囲まれ、金剛宝石の上に半跏趺坐した姿だ。金泥唐草模様の透明な天衣を捲いた。菩薩の前面には菩薩と会おうとする善財童子を小さく描き、左側中間には承盤と淨瓶が描かれている。博物館の専門家たちは「赤外線撮影等を通して分析した結果、色々な図像を繊細で流麗に描いた水月観音図の傑作だ。全体的に剥落やき損が進んでいるが、観音菩薩と善財童子など図の重要部分は図像が比較的よく残っていて、絵画史的価値が高い」と評価した。
国立博物館が水月観音図を所蔵するのは今回が初めてだ。水月観音図は、国内外をあわせて46点が残っていると知られている。韓国国内では、リウム美術館が2点、アモーレパシフィック美術館とウカフ文化財団、湖林博物館が各1点ずつを所蔵していて、そのほとんどが国家宝物に指定されている。今回の寄贈で韓国国内に所蔵された高麗水月観音図は計6点になった。博物館側は「流出文化財を民間が還収し、国家に寄贈する重要な先例になった」として「今後一カ月間、常設展示室で一般展示した後に保存処理に入る計画」と明らかにした。