「韓国の展示では2つの仏像が厳粛に見えたと聞きましたが、日本の展示では表情がはるかに人間的で繊細だと感じました」
韓国と日本を代表する古代の仏像の前で日本の観客は熱狂していた。9日午後、東京の上野公園にある東京国立博物館本館2階ホールは押し寄せた人波で埋まっていた。ここでは韓国の国宝78号の半跏思惟像と、日本の国宝の奈良中宮寺の半跏思惟像が並んで見つめ合う「ほほえみの御仏―二つの半跏思惟像―」の日本巡回展が開かれていた。ソウル国立中央博物館に続き、先月21日から今月10日まで行われた二つの仏像の東京巡回展は、期待を上回る熱気の中で幕を閉じた。
展示場の2つの仏像の前に集まった日本の来館者は、長い間仏像の周りを回りながら、真剣なまなざしで見つめていた。ある老婦人は「仏様」と何度も口にしながら合掌を繰り返し、ある中年の男性は78号像の下に座り食い入るように半跏思惟像の表情を眺めながらスケッチをしていた。手帳に鑑賞を綴る若者たちも目立った。右足を左足の膝にかけ、右手を右の頬にあてる姿勢を取る半跏思惟像は、仏像の正面を基準にして南東の方向から見ると、その特徴がもっともよく表れるという。そのためか、そちらの方向から作品を注意深く観察する愛好家も少なくなかった。
今回の展示はソウルとは異なり、千円の観覧料を払う有料展示だったにもかかわらず、約3週間の展示期間の入場者が8万人を超えたという。今年5月24日から6月12日までソウル・龍山(ヨンサン)の国立中央博物館で開かれた無料巡回展の入場者が5万人だったことに比べ、期待以上の反応だ。日本の国宝の中宮寺の半跏思惟像が初めて寺を離れ、外部の博物館で展示されたという点も注目を集めた要因に挙げられる。今月4日には明仁天皇と皇后が、観客が退場した夜に展示場を訪れ、感慨に満ちた表情で観覧していた。
展示場の企画の狙いは明らかだった。二つの仏像を10メートル以上離し、照明を暗くしていたソウルの展示と異なり、二つの仏像の距離を5メートルに縮めた。その代わり、仏像の背景として青灰色の壁を設置し、集中照明と拡散照明を絶妙に使い分けることで、仏像の表情と姿をより一層浮き彫りにした。古代に朝鮮半島から日本へと渡った半跏思惟像様式の流れよりも、二つの像の穏やかで人間的な姿にもっと注目するように、照明と作品の配置に趣向をこらしたのが新鮮だった。韓国から訪れたある美術史研究者は「韓国の展示では神秘感が強調され、国宝78号像と中宮寺像ともに線が鋭く、やや硬い印象があったが、東京の展示は2つの仏像の表情と姿勢の真骨頂を詳しく見られるように照明を配慮した点が素晴らしかった」、「特に78号像が、これまであまり感じられなかった慈悲深く、温かい貴人としての風貌を強く醸し出していることに驚かされた」と感想を語った。
2013年の対馬仏像盗難事件以降、日韓の国立博物館の間には冷ややかな雰囲気が漂っていた。韓日国交正常化50周年を迎え、大々的に推進することにした大百済展などの交流展も、条件が合わず中止された。その影響なのか、東京国立博物館や日本文化庁は今回の巡回展の開催が決まってからも、展示の支援には終始消極的な態度だった。展示交流検討委員会に韓国の国立博物館関係者は含まれたが、日本の文化庁や国立博物館の関係者は参加しなかった。このような状況で、実際に展示を実現させた主役たちは早稲田大学の二人の学者だった。仏教美術史家の大橋一章名誉教授と在日同胞で歴史学者の李成市(イソンシ)教授は、数年前に両国の博物館の共同展示推進計画を聞き、数年間に渡って日本政財界の後援者を探し続けた。対馬仏像盗難事件などを理由に、出品を渋っていた中宮寺の日野西住職と信徒らにも、韓日友好のために必ず必要な展示だと説得し、仏像の搬出と展示を実現させた。見返りを望むことのない二人の研究者の情熱と真心が、より成熟した韓日文化財交流のモデルを作り出したと評価されている。
韓国語原文入力:2016-07-14 16:19