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朴大統領好みの展示に反対した中央博物館の館長更迭

登録:2016-03-25 02:07 修正:2016-03-25 08:43
教育文化主席室に数回呼び出され
国立中央博物館 //ハンギョレ新聞社

 展示推進担当の団長は 
「チョン・ユンフェ氏の娘に関する波紋」を調査 
元文化体育観光部局長 
大統領府、当初から不純な意図疑った可能性も

 昨年末、2016年の展示日程を組む作業に追われていたキム・ヨンナ国立中央博物館長は、大統領府教育文化首席室に呼びつけられた。

 急いで大統領府を訪ねた彼女に、キム・サンリュル教育文化首席が話した案件は、フランスの装飾美術の歴史を紹介する企画展を博物館で開催しようという提案だった。展示は韓仏修交130周年を迎え、フランス装飾美術館とフランスの有名ブランド企業の連合体であるコルベール財団の主導で、ルネッサンス時代から近世近代期を経て2000年代まで、歴代の名品を中心にフランスの装飾美術の歴史を韓国に紹介するという内容だった。国内での展示の関連費用は、スポンサーのコルベール財団の有名ブランド企業が負担するという条件も提示された。文化体育観光部の関係者らは、教育文化首席室が関連協議の過程で、この展示について大統領が強い関心を持っていることを、キム館長に何度も強調したと証言した(一方、教育文化主席室は展示が立ち消えになった後、大統領が関心を持つようになったと主張した)。

 ある関係者の証言は注目に値する。「昨年教育文化首席室が今年の韓仏修交の記念イベントを報告する際に、朴槿恵(パククネ)大統領がフランス装飾美術の展示を直接見に行きたいと特別な関心を示したという。それ以降、教育文化首席室は緊急体制に入った。この展示の準備に集中し、必ず成功させるため、文化体育観光部や国立中央博物館のキム・ヨンナ館長、教育文化交流団関係者を直接呼んで督励した。しかし、キム館長が予想に反して反対したため、展示の準備に支障が出るようになった」

 展示を通じて、フランスの装飾名品の歴史を示すという企画意図そのものには、特に問題がなかった。しかし、キム館長は断固とした反対の意思を明らかにした。展示の後半にカルティエやルイヴィトン、エルメスなどの有名ブランド企業が世界市場で現在売っている高価なアクセサリーやジュエリーなどのブランド品が、特別に用意されたショールームに展示されるという部分が納得できなかったからだ。韓国を代表する公共の展示機関で商業性の高いブランド品を展示するのは、それらの製品を広報に繋がりかねないとして、懸念を示したのだ。

 2008年にも、国立現代美術館の徳寿宮館が開いたフランスのカルティエの名品コレクション展が、世論の激しい批判にさらされたり、世界有数の博物館や美術館も、ファッションブランド品の展示で非難される事例が少なくないため、キム館長の反対は常識的にも説得力があった。フランスでは、大規模な公共美術館がファッションブランド品の展示を開くことに寛容だが、韓国は商業展示に敏感で、社会的な雰囲気の違いもあった。

キム・ヨンナ前国立中央博物館長 //ハンギョレ新聞社

 文化体育観光部と博物館の関係者は、キム館長が国立中央博物館では(それらのブランド品を)展示できないとして、再三反対の意向を示したことで、大統領府からかなりの圧迫を受けてきたと証言した。大統領府に何度も呼び出され、展示するかどうかをめぐり教育文化首席室と神経戦を重ねなければならなかった。「なぜ展示できないのか。大統領が出席する展示を、絶対に立ち消えにさせるわけにはいかない」と強い圧力を加えたという。直属の上司である文化体育館観光部のパク・ミングォン第1次官にまで、朴大統領の意向を掲げて展示の開催を催促され、キム館長は他の業務ができないほど深刻なストレスに悩まされたと博物館の関係者らは証言した。キム館長もハンギョレとの電話取材に対し「昨年末から(大統領府に)怒られ続けた。大統領が関心を持った展示だから、必ずやらなければならないということが、全く理解できなかった」と打ち明けた。

 キム館長の反対により、フランスの企業が2月中旬に支援の意思を撤回し、結局展示が実現できなかったことを受け、直ちにキム館長とパク・ミングォン第1次官を更迭する人事が行われた。文化体育観光部の関係者らは、大統領が重視する展示を実現できなかったことに対する“不敬罪”が決定的な役割を果たしたと証言した。

 注目すべきなのは、キム館長の更迭には展示の立ち消えに加え、他の伏線が敷かれた情況があるということだ。文化体育観光部と博物館の関係者は、大統領府が展示が実現しなかったのをキム前館長だけの意志ではなく、反政府的な公務員の組織的な抵抗として捉えているのが、より深刻な問題だと指摘した。博物館スタッフに追加の懲戒を考えているという証言がこれを裏付ける。実際、展示を推進した博物館部門の主務省庁の教育文化交流団の団長は偶然にも、2013年に朴大統領の側近のチョン・ユンフェ氏の娘が乗馬の国家代表に選ばれて問題になった当時、乗馬協会の監査を実施したことで、朴大統領から直接「悪い人」と言われ左遷されたノ局長だ。だからこそ大統領府がその意図を疑い、注視しているのではないかという見方もある。

 文化体育観光部のキム・ジョンドク長官は、館長と次官の更迭の背景について、全く別の話をした。キム長官は先週の記者懇談会で、キム館長の更迭の背景について「博物館内で考古学と美術史専攻との対立があり、今回の人事で美術史ではなく、考古学側の文化財専門家(後任のイ・ヨンフン館長)に交替した」とし、パク前次官の交替も「国民とのコミュニケーション機能の強化するためのもの」と釈明した。

ノ・ヒョンソク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-03-25 01:17

https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/736822.html 訳H.J

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