登録 : 2015.08.13 23:23 修正 : 2015.08.14 09:30

逝かれた方の足跡 キム・スヘン教授を送る

故キム・スヘン(金秀行)教授 //ハンギョレ新聞社

 先週末、韓国マルクス経済学界の泰斗であり進歩学界の元老であるキム・スヘン教授が亡くなったという悲報が飛び込んで来た。 誰よりも健康で活力にあふれた方だったので、突然の消息がまだ現実とは感じられない。 線が太く身の去就が明確で他人に迷惑をかけることを嫌った、その性分どおり知人に負担を与えたくなくて誰も予想できない方式で忽然と逝かれたのか? それとも、この世と別れる時は誰も知り得ないのだから、一日一日最善を尽くしなさいというメッセージを劇的な方式で残そうとされたのか?

若い学者の大半が一時研究放棄
年を取るほど積もっていった研究実績の「模範」
「現実社会主義はマルクス主義からの離脱」
ソ連・東欧・中国・北朝鮮などを「警戒」
生涯揺らぐことのなかった「見事な学問人生」

 キム・スヘン教授は韓国マルクス経済学の開拓者であった。分断国家であると同時に反共冷戦国家である韓国で、マルクス主義は長い間、学問的論議の対象ではなく政治的弾圧の対象だった。 そのため、マルクス経済学は公式の学界ではなく大学の運動圏学生たちの地下サークルなどで秘密裡に、そして当然アマチュア的に学習された。 そのような状況を打開し、マルクス経済学を重要な経済学思潮であり同時に現代知性史の欠かすことのできない遺産として認められるようにする上で、キム・スヘン教授ほど寄与した方は見当たらない。

 キム・スヘン教授は資本論を完訳し、また、マルクス経済学に対する大衆的著述と大学での講義、そして大衆講演などを通してマルクス経済学の普及と大衆化に誰よりも多くの寄与をした。 またマルクス経済学に立脚した世界経済と韓国経済の分析など、多様な分野で学問的業績を残した。数十冊の著書と訳書、そして100編近い学術論文が、先生の中断なき学問的精進をよく見せてくれる。韓国の少なからぬ学者たちが、若い頃には研究に邁進し、年を取って社会的地位が安定すると共に研究から遠ざかっていったのに比べて、先生は年を取るほど一層多くの研究実績を上げるという模範的な姿を見せた。

 マルクス主義と関連して多くの人が持つ問いの一つは、マルクス主義がソ連、東欧、中国、北朝鮮などの“現実社会主義体制”あるいは“歴史的社会主義体制”とどういう関係にあるのかということだろう。 この問題に対してキム・スヘン教授は、初期から明確な視点を明らかにしている。 ソ連-東欧などの体制はマルクス主義の具現物ではなく、マルクス主義からの重大な離脱だということだ。 マルクスが志向した未来社会は、個人の基本的自由が充分に保障され、社会経済的平等が達成されて、個人間の協力と連帯に基づいて個人の自我実現が成り立つ「自由な個人の連合体」というものだ。 このような視点に立っていたから 1990年代初めのソ連・東欧圏体制転換以後にも揺らぐことなくマルクス主義研究者としての信念を堅持することができたのだろう。

 弟子であると同時に後輩として長年傍らで過ごした筆者の目には、キム・スヘン教授は非常に気さくで強直な性格の持ち主だった。何かが“あるように見える”格好の良い表現や衒学的表現を遠ざけ、誰もが理解できる平易な言語で自己の主張を展開した。 遠まわしに言うのでなくストレートに“トルチック(石の直球)”を飛ばす語法とトーンの高い強い慶尚道なまりによって、典型的な慶尚道の男と見られがちだったろうが、実際にはその体つきと同様、豊かで懐の広い暖かい人柄の方だった。

 後輩や弟子、そして社会運動家を助ける必要のある時には優しく献身的に助けながらも、それを他人には知らせなかった。 それで何年も経ってから、それも他人の口を通して先生の美談を伝え聞く事が多かった。 人間関係では何より相手の意思を尊重する自由主義者的な面貌を見せた。 ご自身と縁を結ぼうとする人々を幅広く受け入れたし、あれこれの理由で遠ざかる人々を引き止めようとしない“クールな”方だった。

 キム・スヘン教授は自己の学問的視点を堅持するにはまことに険しく劣悪な現実で、自身に与えられた運命を不平なく受け入れて本人が走るべき道を一直線に走り通した。 知識人が自己の信念と志操を守るには非常に残酷な条件を持った社会で、左顧右眄することなく自己の学問的良心にしたがって一生を貫く知識人の一典型を見せた。

 キム・スヘン先生、長い間本当にお疲れ様でした。そして見事な人生を送られました。もう重い荷を下ろして安らかにお休みください。

シン・ジョンワン聖公会大社会科学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-08-03 21:50
http://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/703017.html 訳A.K(2038字)

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