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供給過多で自滅に向かう韓国ドラマ

登録:2014-12-15 10:34 修正:2014-12-15 13:37
放送8社で今年102編も作る
総合編成テレビとtvNの加勢が影響
番組数が増え似た設定やリメーク中心
教養など他のジャンルより視聴率高い
経営陣は赤字出してもドラマ製作
「ドラマがあまりに多く自滅する」
ドラマ『朝鮮の銃使い』//ハンギョレ新聞社

 韓国は今テレビドラマの洪水に巻き込まれている。その気になれば土曜日の午後は座ったままでドラマを見続けることになる。ドラマ再放送専門のケーブルテレビやIPTVの録画データで再放送を見なくても、10時間連続でドラマを観るのが可能だ。今月6日土曜日を例にとれば、午後1時30分の『MBC』から始まり夜11時の『TV朝鮮』までドラマが休むことなく続いた。

ドラマ『伝説の魔女』//ハンギョレ新聞社

 14日に『ハンギョレ』が直接数えてみると、2014年の1年間に製作されたドラマは102編にもなった。『KBS1』を除く地上波3社と総合編成チャネル(総編、地上波並みの番組構成を持つケーブルテレビ) 4社、そしてケーブルテレビでドラマを量産する『テレビN』まで集計した結果だ。MBC25編、『SBS』24編、『KBS2』23編で、地上波だけでも72編に達する。そこへテレビNが20編、総編4社も11編製作した。2010年に約73編だったのが毎年増えていった。ドラマのディレクターさえ「韓国ほどドラマが好きな国はない」と言う。

 ドラマの番組数が増えたのは総編とテレビNがドラマ市場に参入したためだ。2011年末に開局した総編4社のうち、『JTBC』は今年7編をリリースし、昨年はドラマを一つも作らなかったTV朝鮮も3編放送した。『MBN』も今年からドラマ編成を始めた。『チャンネルA』は今年一つも作らなかった。2006年開局当時に一つしか製作しなかったテレビNは今まで合計75編を作った。

ドラマ『恋愛の発見』//ハンギョレ新聞社

 ドラマが増え週末ドラマや平日のミニシリーズだけ観ていては時代に遅れをとるようになった。テレビNでは「金・土ドラマ」が始まり、土曜、日曜、金曜ドラマまで登場した。JTBCは火曜ドラマ『ソナム女子高探偵団』を放映する。KBS2も来年から金曜ドラマを2編連続で送りだす予定だ。KBSのあるドラマディレクターは「地上波も総編やケーブルを相手にしなければならないのでドラマ編成曜日がますます細分化されている」と話す。

 問題は量的増加が質的向上につながっていない点にある。今年の地上波ドラマ72編のうち平均視聴率20%を超したのは5編に過ぎない。ストーリーも似通っている。102編のうちメロドラマやロマンチックコメディが約40編だ。『私の生涯の春の日』、『僕にはとても愛らしい彼女』、『アイアンマン』のように同じ時間帯の地上波の水・木ドラマの設定が似すぎて眉をひそめることもある。素材が枯渇して外国ドラマに飽き足らずウェプトゥーンやウェブ小説のリメーク作も後に続いた。KBSの別のドラマ ディレクターは「ドラマ競争が激しくなり、実験的な作品を出すのはますます難しくなっている」と話した。

ドラマ『来たぞ! ジャン・ボリ』//ハンギョレ新聞社

 ドラマ製作が直ちに放送会社の収益改善をもたらすわけでもない。MBCのあるドラマディレクターは「広告市場は委縮しており、大当たりでも出ない限り多くのドラマは作れば作るほど損」と言う。視聴率1位を誇るドラマであっても、ほとんどの広告収益が製作費に満たないのが現実だ。MBC週末ドラマ『バラ色恋人たち』は視聴率が20%に肉迫したが、広告は予想の半分もとれなかった。放送通信委員会が6月に出した「2013年度放送事業社財産状況公表集』によると、昨年の地上波3社の広告売り上げは1兆5321億ウォン(1ウォンは約0.1円)で前年比5.1%減少した。

 ドラマ製作の競争が激しくなり俳優と作家の報酬が高騰しているのも赤字体質を助長している。名の知れた作家は一日当たりの作家料が3000万~4000万ウォンだ。俳優は1億ウォンも受け取る。MBCのディレクターは「ミニシリーズの製作費が普通の3億ウォン程度なら作家と俳優合わせて1億5000万ウォンくらいを持っていく。ドラマが増えれば彼らの報酬はさらに高くなるだろう」と話した。

ドラマ『鄭道傳』//ハンギョレ新聞社

 こうした事態に対し地上波3社のドラマ局ディレクターからは「ドラマがあまりに多い。このままでは自滅する」という悲鳴まで聞こえてくる。ある地上波のディレクターは「経営陣に対し週末午後に連続二編出しているドラマを一つに減らし、平日の夕方に二編で編成された連続ドラマを減らしてほしい要求をしている」と語った。地上波ディレクターはまずは70分続くドラマの時間を短くすべきだと話す。

ドラマ『大丈夫、愛だよ』

 こんな状況にもかかわらず放送局がドラマに熱狂する理由は何か。地上波ディレクターは視聴率にこだわる経営システムを根本的な原因に選ぶ。任期が決まっている経営陣としては、実験的な試みよりは視聴率という目に見える経営実績が無視できないというのだ。収益面では見せかけに過ぎないがドラマは他のジャンルより視聴率が高いのは事実だ。また、総編とケーブルは別の理由でドラマに精魂を込める。ある総編関係者は「SBSが開局当時に『砂時計』で話題をさらったように、“ドラマの大当たり”が局のイメージを高めるのに最も効果的」と話した。『三銃士』や『ジャガイモの星』といったドラマで話題作りに失敗したテレビNが『未生』の成功で一気に再評価されたのも同じ理屈だ。大衆文化評論家のハ・ジェグン氏は「ドラマが増えれば視聴者の立場としては選択の余地が広くなっていいけど、決まった興行のやり方を繰り返したり似た内容のドラマが溢れてしまうと、多くの番組が公害のように感じられるようになる」と話した。

ナム・チウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2014.12.14 21:10

https://www.hani.co.kr/arti/culture/entertainment/669076.html?_fr=mt2 訳Y.B

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