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[コラム]任期終了まで「前政権のせい」を唱え続けるであろう「幽霊政権」

登録:2023-08-09 06:23 修正:2023-08-09 11:33
2日夕方に開かれた「2023セマングム第25回世界スカウトジャンボリー」の開会式に参加した尹錫悦大統領と夫人のキム・ゴンヒ女史が参加者たちと共に紙飛行機を飛ばしている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権にとって、災害は必ずしも予想だにしなかった瞬間、何の前触れもなく訪れるわけではない。6年間準備しており、1千億ウォン(約108億円)を超える予算を投入した行事でも、災害の現場に変わるのはあっという間だ。水浸しの湿地にテントを張る隊員たち、破れたカーテンと泥水が流れるシャワー室、ベジタリアンのある行事担当スタッフに支給されたというご飯と豆腐2枚だけの食事…。SNSを通じて世界に広がった写真は衝撃的だ。K-POPの本場に行けるという期待を胸にセマングムを訪れた全世界の青少年たちの失望感を考えると、胸が痛む。

 初めは木一本のない干拓地で大規模なキャンプを行うのに、猛暑対策を立てなかった無神経さだけが問題だと思っていた。ところが退所した参加者たちの証言を聞く限り、キャンプの施設と食事、衛生、安全まで行政の全面的な失敗だったようだ。キム・ヒョンスク女性家族部長官が国会で「台風、猛暑対策も万全だ」として心配はいらないと自信を示したのが10カ月前のことだ。5月にはハン・ドクス首相がセマングム現場を訪問し、「準備状況をきちんと点検した」という報道資料まで出した。3省庁の長官が参加した大会組織委員会と首相が主宰した政府支援委員会は、一体何を準備し、何を支援したのか。

 政府省庁のある局長級公務員はこのように語った。「セマングムは干拓地であるため、真夏の猛暑と浸水は予見されたものだった。しかも全世界から4万3千人余りが参加する行事ならば、長官でなくても次官または室長級が2~3週間程度は現場に常駐しながら問題を点検しなければならなかった。誰もそのようなことに関心を持たなかったことに(同じ公務員として)驚いた」。女性家族部と文化体育観光部、行政安全部など3省庁の長官のうち1人でもきちんと仕事ができる人がいれば、それで次官や室長、局長を現場にあらかじめ派遣し点検していれば、韓国の行政動員能力では短期間でもこのような凄惨な失敗は防げたはずだ。大統領室と首相室は省庁任せで知らん顔をしており、長官らは責任を持って進行状況を確認しようとせず、全羅北道はどうすれば中央政府予算をさらに引き出せるかを考えている中で、ジャンボリー現場で災害が起きたのだ。にもかかわらず、今後法的処罰を受けるのは末端の公務員たちだろう。コントロールタワーにいる「お偉いさん」たちは政治的責任さえ負わない可能性が高い。これが1年3カ月間にわたり尹錫悦政権が国政を運営してきた姿だ。そのような国政運用が部署長や次官に現場に気を配るよりは、大統領夫妻の動線と言動だけに全神経を集中させたのではなかろうか。

 与党「国民の力」は「文在寅(ムン・ジェイン)政権と全羅北道のずさんな準備の責任を問う」方針を示した。大統領室高官も「準備期間は文在寅政権時代だった。実務準備は自治体(全羅北道)が中心になって行ったと聞いている」と語ったという。韓国で開かれた国際行事が自治体の無理な誘致で困難を経験した事例は多い。近くは2018年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪や2014年の仁川(インチョン)アジア大会もそうだった。地方自治体の国際スポーツ行事誘致を制限する法律案が国会で発議されたこともあるほどだ。それでも一旦誘致すれば中央政府が積極的に介入し、過度なほどうまく運営すると評価されてきた。そんな大韓民国政府は今どこに行ってしまったのだろうか。むろん、キム・グァンヨン全羅北道知事は責任を免れない。しかし、今さら失敗の主な原因が地方自治体にあると主張するのは稚拙と言わざるを得ない。「ジャンボリーはコロナ以後、韓国で開催する最初の大規模な国際行事」だと意味付けしたのは現政権ではないか。今回の失敗は、現政権の行政力がまともに作動していないことを示す一つの象徴的な事件だ。

 今後の展開は火を見るよりも明らかだ。尹錫悦政権はセマングムジャンボリーに割り当てられた1千億ウォンを超える予算を「利権カルテル」が奪い惨事が起きたと主張するだろう。「文在寅政権の5年間で国がどれほど腐ってしまったのかを見てほしい」としながら、前政権の高官に捜査の刃を向けるだろう。しかし、仕事で成果を出すためには、まず責任を取る姿を見せなければならない。現政権は任期中、すべての責任を前政権に転嫁し、予定されたことまで白紙化する「無為」の統治を展開するつもりのようだ。「尹錫悦政権は文在寅政権の行事準備の枠組みを崩さず、行政的・財政的支援を行っただけ」という与党の論評を見ればなおさらだ。そのように5年が過ぎれば、尹錫悦政権は将来、本当にあったのかもわからなくなるほど存在感のない「幽霊政権」として記録されるかもしれない。

//ハンギョレ新聞社
パク・チャンス|大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1103305.html韓国語原文入力:2023-08-08 12:13
訳H.J

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