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[特派員コラム]習近平主席は餌に食いつくだろうか

登録:2022-10-15 08:06 修正:2022-10-16 05:54
先月30日午後、中国北京の人民大会堂で開かれた国慶節のレセプションで、中国の習近平国家主席が乾杯の挨拶をしている=北京/聯合ニュース

 中国の習近平国家主席が3期目に入ることがまもなく確定する。台湾海峡での物理的な衝突の可能性に対する懸念は、習主席の政権担当期間に比例して増加している。中国は武力を使ってでも台湾を征服しようとする欲求を持っており、米国は戦争を阻止しようと最善を尽くしているというのが一般的な見方だ。米国のジョー・バイデン大統領が軍事力を利用して台湾を防衛するという意思を4回も明らかにしたことも、そのような意味で理解されている。

 だが、このような見方ではすべてを説明できないともいえる。視野を広げてみると、巨大なパワーゲームでは名分と実際の意図は別物であり、誰かが説明して認めるまでそのような違いが隠されていることがよくあるからだ。侵略者と被侵略者だけがいるのではない。戦争をあおり立てる者、望んではいないが戦争が起きても仕方ないと傍観する者もいる。また、外部で戦争防止や終戦のための適切な努力をしない者、自己の利益だけを求める者など、複雑多岐な勢力が戦争の勃発と展開に影響を及ぼす。

 ウクライナを助ける米国の計算も、単純な「民主主義の守護」だけではない。ワシントンでは、核戦争までは挑発しないようにする範囲内でロシアを最大限追い詰めることが米国の戦略だという話も出ている。そうであれば、戦争の長期化でロシアの国力を消耗させることが適切な方法だ。実は、戦争初期からロシアの前身であるソ連の崩壊を促進した1979年のアフガニスタン侵攻を想起する見方が出ていた。米国のロイド・オースティン国防長官は4月、米国の目標は「ロシアがウクライナを侵攻したようなことは再びできなくなるほど弱体化」させることだと述べた。派手にウクライナに攻めこんだロシアは今、傷ついた野生の獣のように暴れ狂っている。

 他の国同士の衝突を誘導する「夷を以て夷を制す」で漁夫の利を得ることは、一つの有力な戦略だ。 国際政治学者であるシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー碩座教授が言う「餌と血(Bait and bleed、『誘導出血』ともいう)」戦略だ。餌を投げて戦わせておき、自国は本格的に巻き込まれることなく、敵に最大限出血させるのだ。米国のハリー・トルーマン元大統領は上院議員だった1941年、第2次世界大戦について「私たちは、ドイツが勝っていればロシアを助け、ロシアが勝っていればドイツを助ければいい。それにより、彼らが互いに可能な限り多く人を殺すようにしなければならない」と語った。

 米国が、ロシアとウクライナ、中国と台湾の衝突を望んでいたとか、望むとみなす根拠はない。だが、もしもの事態が発生した場合、台湾のような場所が宿敵にとっての泥沼になる可能性を考慮するだろうというのは合理的な考えだ。中国がさらに進出する前に阻止しようとするならば、中国のすぐ近くにあり太平洋に出る要所である台湾で“事”が起きたほうがましだと考える米国側の戦略家もいるはずだ。中国側では、ナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問などをみて、米国があえて自国を刺激していると主張したりもする。

 習主席は2015年、米国の当時の国務長官のジョン・ケリー氏に「太平洋は中国と米国のどちらも収めるほど広い」と語った。米国側では、中国の野望を直接表現したものとして広く知られた言葉だ。大口をたたくことは容易だが、後始末は難しいことが多い。台湾を屈服させるとしても、中国はさらに多くのものを失うことになりうる。習主席が、台湾が餌である可能性もあると考えて賢明に行動するよう願うばかりだ。

//ハンギョレ新聞社

イ・ボニョン|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1062570.html韓国語原文入力:2022-10-14 02:37
訳M.S

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