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中国、3期目入りを控えた習近平主席…もはや肩を並べるのは毛沢東のみ

登録:2022-10-13 10:33 修正:2022-10-13 11:04
習近平3期目の中国の未来 
米国けん制・成長低迷・貧富格差…試練の前に立つ「中国夢」
2017年10月24日、北京で開かれた中国共産党第19回全国代表大会に、習近平国家主席をはじめ中央政治局常務委員、前・現職共産党幹部が参加している様子。習主席の3期目を確定する第20回全国代表大会は今月16日に開かれる=北京/AP・聯合ニュース

 「習近平3期目」発足を控えた中国北京の街には、妙な緊張感が漂っている。7日、北京の中心部を南北に分ける長安街の統制が始まった。信号機ごとに配置された遮断員は、住民の自由な移動を制御した。天安門広場は普段から外国人記者の出入りを許可していないが、この日から警備は一層厳重になった。公安はあちこちで住民の身分証を確認してから通過させた。中国共産党の主要行事が開かれる人民大会堂の屋根にぎっしりと刺さった赤い旗だけが、まもなく始まる「重要な行事」が迫っていることを知らせた。北京の空気は、祝祭とは程遠いように感じられた。

 10年前の2012年11月、世界は新しい中国指導者となった習近平国家主席(69)を期待に満ちた目で眺めた。気さくで親しみやすいイメージの習主席が、米国と肩を並べるようになる中国を、より開放的で活力あふれる国家へと導いていくだろうという期待だった。残念ながら期待は失望に変わった。習主席が権力に就いた10年間、中国には民主主義、人権、自由、開放などの世界の主要国が共有する普遍的価値よりも、国家が主導する統制、秩序、沈黙、封鎖の機運がより広くはびこった。

 振り返ってみると、これは10年前からある程度予告されていた。中国共産党は当時「閉鎖的で誤った旧道」と「旗を変える誤った道」のいずれも進まないとし、「中国独自の社会主義道」を明らかにした。中国の昔の失敗と西欧の普遍的な道のどちらからも脱した「マイウェイ」を宣言したのだ。その延長線上で、習主席はついに今月16日に開幕する共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)を通じて、「中華人民共和国の父」毛沢東以外は誰も進んだことのない「15年以上」の政権の道を歩もうとしている。10年の経歴を積んだ老獪な習近平と彼の中国を、世界は今や期待ではなく憂慮の目で見守っている。

 習主席の3期目入りを中国の人々がどう考えているのか、正確な世論を把握することは難しい。中国では公式世論調査を認めていない。2018年3月、国家主席職の3期連任を認める改憲の際には、全国人民代表2964人のうち99.8%にあたる2958人が賛成した。反対は2人だった。

 もちろん、これを中国の世論と言うことはできない。習主席の3期連任の試みを批判した人々は、刑務所にいくか職を失った。中国人の大半が加入しているソーシャルメディアの微博(Weibo)などは検閲が激しく、3期連任反対の意見などを上げることができない。中国の学者や専門家たちも言葉を控え、党の公式の立場を述べる程度だ。この10年間、社会統制を強化してきたため、意味のある反対行動が出ていない。

 中国共産党が習主席の3期連任を正当化する中核の根拠は「自信」と「危機感」だ。習主席は中華人民共和国建国100周年を迎える2049年までに米国を超える「社会主義現代化強国」を建設するという、いわゆる「二つ目の100年」目標を掲げている。過去の指導者たちと習近平2期まで、中国は崩れた国家の枠組みを立て直し暮らしの問題を解決する「一つ目の100年」目標(小康社会達成)に集中してきた。習主席3期からは発展のスピードを上げ、世界最強国の米国を超える「二つ目の100年」目標(中国夢達成)に向けて進まなければならず、これを達成できるという主張だ。

 実際、習主席の10年間で中国の国内総生産(GDP)は8兆5322億ドル(2012年)から17兆7340億ドル(2021年)へと倍増した。1人当たりの国内総生産も6300ドル(2012年)から1万2556ドル(2021年)へと急増した。2012年の中国経済の規模は米国の52.5%に過ぎなかったが、2021年には77.1%にまで成長した。中国は約10年以内に米国の経済規模を上回ることを目標にしている。

 このような重大な時期に中国は、米国の強力なけん制▽中国内部の腐敗▽不均衡発展など、内外の課題に直面している。この危機を乗り越えて目標を達成するためには、習主席を中心とした強力なリーダーシップが必要であり、その結論が3期連任ということだ。ソウル大学国際大学院のチョ・ヨンナム教授は、ウェブマガジン「アジアブリーフ」で、習主席の3期目入りを通じて中国共産党は「中国政治の安定性に対する懐疑と未来に対する憶測を抑えることができ、政策の連続性も確保できる」と評した。この10年間、3期目入りに向けて社会政治的に周到に動いてきた習主席が、これから本人の連任を正当化するためにより一層緻密な統治を継続していくだろうという見通しだ。

 しかし、目前の試練は多い。最大の不安要素は米中戦略競争だ。中国がトウ小平の遺志だった「韜光養晦」(才能を隠して時を待つ)基調を廃棄した後、2010年代初めから東シナ海や南シナ海などで米国との対立が始まった。現在、対立の軸は伝統的な安保を越えて貿易と先端技術分野に拡大している。米国は2017年12月、国家安保戦略(NSS)を改正し、中国を「体制に挑戦しうる唯一のライバル」と位置づけており、ジョー・バイデン大統領は、現在人類が米国の代表する民主主義と中国の代表する権威主義の間の「変曲点」の上にあるという言及をもはばからない。

 次の不安要素は経済だ。安定的な経済成長は習主席体制の最も強固な基盤だったが、危険要素に変わっている。中進国の所得基準である1人当たりの国内総生産1万ドルを突破すれば、以前のような高速成長が難しくなる。今年の中国の経済成長率は、中国の「ゼロコロナ」政策による封鎖の影響が大きいが、政府目標である5.5%にはるかに及ばない3%程度に留まる見通しだ。この10年間の平均成長率6.6%の半分に過ぎない。経済的補償がなされなければ、中国人がしばらく横に置いていた社会政治的要求を提起しはじめる可能性もある。

 急激な貧富の格差の拡大も3期目の習主席が解決しなければならない主要課題だ。社会主義国家の中国の方が米国よりも貧富の格差が大きいという統計が出たことに伴い、習主席は昨年秋以降、分配に重点を置いた「共同富裕」を強調している。最近の景気低迷で後回しにされているが、分配は習主席が解決しなければならない最も難しい課題にほかならない。

 最後の変数は台湾だ。習主席が3期目入りの理由を証明し、ひいては4期目の大義名分を作るために、「統一を成し遂げる」という誘惑に陥らないともいえない。西欧の軍事専門家たちが、習主席の4連任が決定される2027年を不吉さをもって見ているのもそのためだ。今回の党大会で、党の憲法である「党章」が改正され、統一に関する語句がさらに具体的で強硬なものに変わるだろうという見方が出ている。習主席が台湾侵攻という「誤った判断」を犯せば、当事者である台湾と中国だけでなく、韓米日すべてが巻き込まれる惨事につながりかねない。韓国としては到底考えたくないシナリオだ。

北京/チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1062272.html韓国語原文入力:2022-10-12 12:28
訳C.M

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