米国のジョー・バイデン大統領が、台湾が中国に攻撃を受けた場合、米軍を投入すると再び述べた。この発言でたびたび物議を醸しているにもかかわらず、すでに4回も同じ話を口にしており、米国-中国-台湾の三角関係の核心である「戦略的曖昧さ」を破棄する段階に入ったのではないかという見方がさらに強まっている。
バイデン大統領は18日に放送されたCBSテレビの番組「60ミニッツ」のインタビューで、中国が攻撃した時には米軍が台湾を防衛するのかという質問に対し、「実際に前例のない攻撃が加えられるとしたら、そうする」と答えた。「中国軍が侵攻した場合、ウクライナとは違って米軍兵力が台湾を守るのか」という確認の質問にも「そうだ」と答えた。中国の軍事的脅威が高まっている中、台湾が侵攻された場合には米軍を投入するという立場を重ねて明確にしたのだ。
米国はウクライナと同様に、台湾と相互防衛条約を結んでいない。1954年末に防衛条約を結んだが、1979年に中国と国交正常化し、これを破棄した。また、中国が重視する「一つの中国」原則を尊重し、台湾と断交する決断を下した。その後、中国が台湾に侵攻した場合、軍事介入をするかどうかを明確にしない「戦略的曖昧さ」を維持してきた。ただし、1979年に施行された台湾関係法に基づき、台湾の自衛に必要とされる兵器を販売してきた。
バイデン大統領が台湾防衛のための米軍投入の意思を明らかにしたのは、今回ですでに4回目だ。昨年8月にはABCのインタビューで北大西洋条約機構(NATO)の自動軍事介入条項に言及し、「日本、韓国、台湾に対しても同じだ」と述べた。同年10月のCNNの行事では「中国が攻撃したとしたら台湾を防衛するのか」という質問に「そうだ。我々はそのように約束した」と答えた。今年5月23日の米日首脳会談の共同記者会見でも「中国が侵攻した場合、台湾を軍事的に防衛するのか」という質問に「そうだ。我々はそうすることを約束した」と答えた。
バイデン大統領がこのような発言をするたびに、米国内外では「戦略的曖昧さ」の概念を熟知していなかったために出た失言ではないかという反応も出ていた。ホワイトハウスもすぐに「一つの中国」原則と「戦略的曖昧さ」は維持されていると述べ、後始末をしてきた。バイデン大統領自身も、米日首脳会談の記者会見での発言が波紋を呼んだ翌日、「戦略的曖昧さ政策が変わったのか」という記者らの質問に「全く変わっていない」と答えた。
しかし、今回の発言はすでに複数回にわたって物議を醸した事案に対して再び軍事介入を公言したもので、過去の発言とは重みが違う。「戦略的曖昧さ」が破棄の段階に入ったのではないかという見方につながらざるを得ない。先月2~3日のナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問、今月14日の上院外交委員会の台湾政策法案可決後にこのような発言が出たという点も、こうした見方に説得力を加えている。ペロシ議長は、米下院議長としては25年ぶりに台湾を訪問し、中国の激しい反発を招いた。上院で立法手続きが進められている台湾政策法案は、台湾を「非NATO主要同盟国のように待遇」し、65億ドル分の軍事援助を提供するとの内容を盛り込んでいる。1979年以降40年間続いてきた米国の台湾政策が、大きな変化の岐路に立たされることになったのだ。
米政界で台湾防衛の意志を強調し、「中国叩き」を強化するのは、11月の中間選挙を控えた鮮明さ競争のためともみることができる。バイデン大統領は今回のインタビューで「一つの中国」の原則に言及しつつも、「台湾は独立について自ら判断するだろう。我々は彼らの独立を激励しない。彼らの決定にかかっている」と述べた。台湾の人々が選択すれば「二つの中国」も不可能ではないという意味にも取れる発言だ。
今回もホワイトハウスはバイデン大統領の真意を問うマスコミの質問に「台湾政策は変わっていない」という釈明を繰り返した。しかし、ロイター通信は「以前よりも台湾防衛に米軍を投入するという約束を明確に表現した発言」と指摘した。
一方、バイデン大統領は今年2月、習主席と電話で会談し「ロシアに科された制裁に中国が違反しているにもかかわらず、米国人と他国の人々が投資を続けると考えるなら、大きな失敗となるだろう」と述べたという。中国がロシアのウクライナ侵攻を支援するなら、同盟国と連帯して投資中断も辞さないと述べ、習主席に圧力をかけたという意味だ。