本文に移動

[インタビュー]前職・現役の女性軍人たち「性暴力、軍隊自らは解決できない」

登録:2021-06-10 10:01 修正:2021-06-10 12:55
7日、城南市の国軍首都病院に設けられたL中士の焼香所/聯合ニュース

 「率直に言います。性暴力で自ら命を絶つ女性軍人は周期的にいました。そのせいか、今さらどうして今回だけがイシューになっているんだろうという気さえしました」

 元陸軍将校のAさんに、強制わいせつ被害を届け出た後に自殺した空軍中士(軍の階級)Lさんの事件について尋ねると、このような答えが返ってきた。Aさんだけではない。ハンギョレが会った6人の前職・現役の女性軍人たちは、L中士事件で見られた被害届後の組織的懐柔や手抜き捜査、2次加害と孤立の過程はあまりにも見慣れていると答えた。マスコミのインタビューに応じることをためらってもいたが、勇気を出して応じた理由はただ一つ。もう軍の自浄を信じず、今回こそ変わらなければならないと考えたからだ。

「業務からは除外、“偉い方”との食事ではお飾り扱い」

 性暴力・セクハラなどの性犯罪は低い性認知感受性から起きる。集団内でのマイノリティ(2020年現在で全体の7.4%)である女性軍人は、性認知感受性の低い軍内部では身動きも取れない。Aさんは女性軍人が経験する性差別について「両極端」だと表現した。とても接しづらく遠ざけるか、馴れ馴れしく接するかのどちらかだということだ。Aさんは「初めから女性軍人を遠ざけて業務や会食から外すので、所属感が感じられないことが多かった」とし「そうすると除外されたくないので積極的にかかわったりもする。すると、『この子はこういうのが好きなんだな、こう接してもいいんだな』と思ってたちまち一線を越えた言動を始める」と話した。

 元将校のBさんは、軍の女性軍人に対する認識を「花」「デコレーション(お飾り)」と表現した。Bさんは「部隊にいわゆる『偉い方々』が訪問して食事をするとき、若い女性軍人たちが選び出される。訪問の予定された日から『お前はこの日に出て来て○○○さんの隣りに座れ』というふうに」と話し、「それを見て進級したい男性軍人たちは、偉い方々と食事ができてうらやましいと言う」と苦々しく言った。

被害届を出すと「目立ちたがり兵士」のレッテル貼られ個人情報出回る

 性暴力が行われても届出をしたがらない理由は多い。その中でも、被害者に注がれる視線と「事件に遭って注目を集めたがる兵士」とのレッテルが最も大きな壁だ。本紙が前職・現役の空軍女性副士官39人に実施した緊急アンケート調査(8~9日実施)でも、届出を避ける理由として「周囲の視線」が41%で最も多かった。Aさんは「性暴力事件が一度起きると、軍人たちのグループチャットルームに名前や写真などの個人情報が出回り、私も何度か見たことがある」とし「人事記録には残らなくても、わかる人たちは皆、誰が被害者かを知ることになる。軍にいる以上レッテルを貼られてずっと残ることになる」と述べた。Bさんは、性暴力の被害で先任が除隊した後、捜査官が自分に言った言葉を思い出して語った。「すでに部隊にはその事件に関連する内容を知らない人はいなかった。捜査官が私のところに来て事件に関する話をし、『お前はそんなことがないようにしろ』とまで言った」。「こんな状況で、私が被害を受けても届出ができるわけがないじゃないか」と反問した。

 性暴力予防のための教育や制度は中身のある運営がなされていないという指摘も出ている。Bさんは「性平等教育は都度きちんとやっている。ところが検証されていない講師が来て、講演で集中度を上げるために性暴力の状況を面白おかしく表現する言葉を口にして、それを聞いた男性軍人らはワッと笑うという雰囲気」と明らかにした。元将校のCさんは、セクハラ被害を受けた後輩が、性問題専門相談官が信用できないと言って訪ねてきた事例を話してくれた。相談官に、男性軍人が座っている自分に公文書の書き方を教えると言って後ろから抱きついてきたという被害経験を話したが、「それくらいは大丈夫じゃないか」という言葉が返ってきたという。

 マニュアルや制度があっても、指揮官など男性上級者の個人的認識によって性犯罪事件が懐柔・隠蔽などでうやむやになる可能性が高い。現役副士官のDさんは「指揮官が関心を持って事件を見るかによって悩みの処理方法やスピードが変わる」と話し、元将校のEさんは「女性軍人が配置される瞬間、指揮の負担が増えると言って女性軍人を部隊のお荷物として扱う指揮官もいるため、性暴力が起きても女性軍人は軍に迷惑をかける存在だとして自分を責めることになる」と説明した。「女性軍人がいると事件が起こる可能性が高くなって進級のための評価に不利益を被るなどと言い、原因と結果をひっくり返して考える指揮官が多い」(Bさん)との意見もあった。現役将校のFさんは「L中士の上官の場合、被害事実が明らかになった瞬間、部隊は不名誉を被るという個人的な欲がより大きかったようだ。結局、指揮官の役割が一番重要だ」と話した。

9日午前、忠清南道鶏龍台の軍本部正門の様子/聯合ニュース

「女性軍人たちがお互いの勇気になるように」

 女性軍人たちは、マニュアルと制度はすでに十分であり、もう軍が自らが変わることは期待できない状況に至ったと口をそろえて言った。性暴力事件などは軍隊内の司法機関で担当できないようにし、加害者をもっと厳しく処罰しなければならないというのが共通の考えだった。本紙の緊急アンケートで、回答者の一人は「軍内における性暴力の事例は数え切れないほど多いが、刑事処罰の第一段階である捜査からして行われず、加害者の軍生活に全く影響のない懲戒レベルで終わるケースが多い」と語った。Cさんは「軍内部で性関連の事件を処理する時代はもう終わった。学縁、地縁、血縁のない外部で扱った方がクリーンではないか」と述べた。

 インタビューに応じた女性軍人たちは、何よりも今回の事件で女性軍人が萎縮したり孤立したりするのではないかと心配した。Bさんは「L中士事件について『運が悪かった』『大したことないのに、あの部隊がかわいそうだ』と思う人が周りに多い。ただでさえ差別を受ける女性軍人がもっと孤立するのではないかと心配だ」とし「どうか女性軍人は互いの勇気になってほしい。加害者は処罰されるという信頼が生まれてほしい」と述べた。

イ・ウヨン、チャン・イェジ、チャン・ピルス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/998738.html韓国語原文入力:2021-06-10 07:24
訳C.M

関連記事