米中対立の最前線に立たされた韓国が4月2~3日、ワシントンで開催される韓米日安保高官会議と、米中対立の“火薬庫”である台湾に近い福建省廈門で、韓中外相会談に同時に臨む。チョン・ウィヨン外交部長官は「我々が意図的に(時期を)決めたわけではない」と説明したが、「朝鮮半島平和プロセス」の再稼働に向けて米中両国を同時に活用しようとする文在寅(ムン・ジェイン)政権の戦略的意図がうかがえる。北朝鮮政策の見直しの最終段階に入った米国に韓国の意見をできるだけ多く伝えると共に、南北関係の改善に向けた“中国の役割”にも期待をかけるものと見られる。
大統領府は31日、「ソ・フン国家安保室長が2日(現地時間)、韓米日安保高官会議に出席するため、米国を訪問する」と発表した。同会議でソ室長は、ジェイク・サリバン国家安保担当大統領補佐官から米国の北朝鮮政策の見直しに関する説明を聞くと共に、日本の北村滋国家安全保障局長らに会い、韓米日の協力を強化する案について意見を交換する予定だ。 米国家安全保障会議(NSC)のエミリー・ホーン報道官も30日に声明を出し、「サリバン補佐官が2日に北村局長やソ・フン室長を迎え、3者協議を開く。協議場所はワシントン近隣のメリーランド州アナポリスにある米海軍兵学校」だと発表した。ソ室長は3者協議後、米日とそれぞれ2国間会談にも臨む計画だ。
それと同時に韓国は3日、敏感な両岸関係を象徴する地域である廈門で、中国の王毅外交部長に会う。外交部はチョン長官が会談を通じて「韓中両国関係をさらに発展させる案を模索するとともに、朝鮮半島と近隣地域、国際問題などについて深く意見を交換するきっかけになるだろう」と説明した。チョン長官の今回の訪中は、王毅外交部長が昨年11月に韓国を訪問したことに対する答礼訪問の形で行われる。
チョン長官は2つの外交行事が同時に開かれることについて、31日の記者会見で「韓中外相会談と韓米日安保高官会議は我々が意図的に決めたわけではなく、偶然時期が重なった。米中いずれも韓国にとっては重要な国だ。米国は唯一の同盟国であり、中国は韓国の隣国であると同時に最大の貿易相手国だ。米中両国は決して(どちらか一方を選ぶ)選択の対象ではない。(彼らも)我々にそのような要求をしたことはない」と繰り返し強調した。しかし、王毅部長との会談については「朝鮮半島の非核化を通じたより恒久的な平和政策に対し、中国は常に我々の立場を支持してきた。中国がどのような役割を果たせるかについて、非常に率直かつ建設的な方向で協議する」とし、南北関係改善に向けた中国の支援への期待感をにじませた。中国は2022年2月に開かれる北京冬季五輪に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長や文在寅大統領を“同時招待”するというカードをのぞかせて、韓国の対米接近を牽制するものと予想される。
問題は韓国の“綱渡り戦略”が成功するかどうかだ。韓中外相会談が開かれる場所もすでに物議を醸している。「一つの中国」原則を強調する中国は、台湾や香港、新疆問題は何があっても譲歩できない「核心的利益」だと主張し、米国からの干渉を排除するのに総力をあげている。こうした流れの中、中国空軍機が相次いで台湾防空識別圏に進入したことを受け、米軍のインド太平洋司令官に指名されたジョン・アキリーノ氏は23日、上院軍事委員会で「台湾を侵攻しようとする中国の脅威が深刻だ」と警告した。台湾政府は25日、4年ごとに発表する国防計画で「中国が台湾に対する敵意を剥き出しにして威嚇を繰り返している」とし、保有中の空対地ミサイルの射程距離を伸ばす計画を明らかにした。日本経済新聞は30日、日米両国が4月8日にワシントンで開かれる首脳会談後に発表する共同文書で、「台湾海峡の安定が重要だ」という内容を明記するための調整に入ったと報じた。
このような状況の中、米国の別の同盟である韓国が廈門で韓中外相会談を開けば、台湾に対する中国の主張を後押しするという誤解を招く恐れがある。ウィ・ソンラク元ロシア大使は「韓国が今のような姿勢を維持しては困る。間もなく終了する米国の北朝鮮政策見直しの結果に、韓国ではなく日本の意見が大きく反映される可能性がある」と懸念を示した。