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[ニュース分析]処罰による対北朝鮮ビラ遮断方針…南北関係の硬直で強硬策に転じる

登録:2020-06-11 06:33 修正:2020-06-11 07:40
ヨ・サンギ統一部報道官が今月10日、政府ソウル庁舎で緊急ブリーフィングを行っている//ハンギョレ新聞社

 統一部が10日、ビラやペットボトルを飛ばしたり流す方法で北朝鮮に送ってきた「自由北韓運動連合」と「クンセム」二つの北朝鮮離脱住民(脱北民)団体を実定法違反で告発し、法人設立許可を取り消す手続きを踏むと発表したのは、政府の対北朝鮮ビラ対応の転換を意味する。“処罰なき取り締まり”から“取り締まりと処罰による遮断”へと重心を移すという方針を明らかにしたのだ。

 統一部が北朝鮮へのビラまき行為の処罰の根拠として掲げた法律は、「南北交流協力に関する法律」(交流協力法)だ。交流協力法は第13条1項で、北朝鮮に物品を持ち出すためには、統一部長官の承認が必要であり、第27条で「未承認搬出」した場合は懲役(3年以下)または罰金(3千万ウォン以下)に処するよう定めている。

 しかし、歴代政府はもちろん、文在寅(ムン・ジェイン)政府でも、対北朝鮮ビラに交流協力法を適用したことはなかった。これには事情がある。「ビラまきは北朝鮮の不特定多数を対象にしたもので、交易に該当しないため、統一部長官の承認対象ではない」という李明博(イ・ミョンバク)政府の有権解釈があった。統一部がこれまで交流協力法で対北朝鮮ビラまきを取り締まり、処罰しようとする議員立法に消極的な態度を示したのも、そのためだった。

 韓国政府が北朝鮮へのビラまきを交流協力法に違反した未承認搬出と判断し、処罰を進めるのは今回が初めてだ。統一部の10日の発表をめぐり、未来統合党など保守野党と保守メディアの批判が予想される。

 これを意識したのか、統一部は北朝鮮へのビラまきの取り締まりと処罰に交流協力法を適用すると法律解釈を変えた「事情変更」の事由について詳しく説明した。統一部当局者が明らかにした「事情変更」の理由には、「ビラをはじめとするすべての敵対行為の中止」を明示した4・27板門店宣言▽「接境地域の国民の生命・身体に対する緊迫かつ深刻な危険」を理由に、国家(政府)による北朝鮮へのビラまきの制止が適法だという最高裁の判決(2016年2月25日)▽対北朝鮮ビラを介した南北間の伝染病拡大の恐れ▽生命と安全に脅威を感じるという接境地域の住民からの苦情▽ラジオやドル、USB、コメまで送る大規模なビラまきの方法の多様化と大規模化などが挙げられる。

 実際、北朝鮮へのビラまき行為を交流協力法違反で取り締まり・処罰すべきという専門家の指摘は以前からあった。例えば、キム・ハジュン国会立法調査処長は、全南大学法科大学院教授だった2014年10月、メディアへの寄稿文で、「北朝鮮へのビラまきは交流協力法上、統一部長官の承認事項だ」とし、未承認散布行為を取り締まり・処罰しないのは、職務遺棄罪(刑法122条)に当たると指摘した。対北朝鮮ビラについては、交流協力法に基づき、搬出の際に統一部長官の承認が必要な「広告物または印刷物」に該当(統一部告示2012-2号など)すると主張した。

 統一部は、自由北韓運動連合とクンセムの法人設立許可の取り消し手続きに着手すると発表し、北朝鮮へのビラまきを遮断するという政策意志を明らかにした。両団体は統一部に登録された非営利法人だ。民法は、特定非営利法人が公益を害するか、設立目的以外の活動を展開して許可条件に違反した場合、設立許可を取り消すことができると規定している。統一部の当局者は「自由北韓運動連合は『政府の統一政策推進を阻害しない範囲』の活動を、クンセムは『脱北青少年支援』を掲げて設立許可を受けた」とし、「両団体がこれを破ったため、許可の取り消し手続きを踏むことにした」と述べた。自由北韓運動連合のパク・サンハク代表とクンセムのパク・ジョンオ代表は実の兄弟である脱北民だ。

 統一部のこうした政策基調の転換には、政府や接境地域の自治体、住民の制止・反発にもかかわらず、朝鮮戦争70周年を迎える26日に対北朝鮮ビラ100万枚を飛ばすと公言してきた自由北韓運動連合の一方的な態度と北朝鮮当局の反発などが作用しものと見られる。

 統一部の10日の発表は、大統領府など関係省庁の調整を経て行われた。汎政府レベルの基調転換であるわけだ。北朝鮮へのビラまきの取り締まり・処罰方針をめぐる国内論議の政治的負担を冒しても、4.27板門店宣言履行の意志を強調して南北関係のさらなる悪化を防ぐことで、関係改善の契機にしたいというのが政府の意向だ。北朝鮮へのビラまきを問題視し、連日抗議群衆集会などを組織して、これを連日『労働新聞』で大々的に報道してきた北朝鮮当局がどのような態度を示すかに注目が集まっている。

 警察は北朝鮮へのビラまきを防ぐため、脱北民団体の主要移動地点である京畿道坡州(パジュ)・漣川(ヨンチョン)地域の36カ所に5中隊(約400人)、江華(カンファ)に2梯隊(約60人)などを配置したという。

イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/948814.html韓国語原文入力:20-06-11 02:14
訳H.J

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