新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の「コールセンター集団感染」の患者の大半が、通勤時に首都圏の公共交通機関を利用していた事実が伝えられたことで、地下鉄やバスを利用する市民の不安が高まっている。医療界では、公共交通機関を媒介にした大規模な集団感染の可能性は相対的に低いが、万が一の事態に備えるには各個人の衛生規範の徹底が必要と助言する。
首都圏最大の集団感染が発生したソウル九老区新道林洞(クログ・シンドリムドン)のエース損害保険コールセンターは、首都圏地下鉄1号線の九老駅と1、2号線の新道林駅から歩いて10分のコリアビルディングに入居している。11日のソウル、仁川(インチョン)両市と複数の区の発表からは、COVID-19の陽性判定を受けた同センター職員と教育生の相当数が、これらの地下鉄路線を利用していたことが分かる。特に1号線は仁川・水原(スウォン)-ソウル-京畿道議政府市(ウィジョンブシ)を結ぶ長距離路線であるため、同センターの感染者は蘆原区(ノウォング、月渓(ウォルゲ)駅)などのソウル市内だけでなく、仁川弥鄒忽区(ミチュホルグ、朱安(チュアン)駅、東仁川(トンインチョン)駅、済物浦(チェムルポ)駅)や京畿道安養市(アニャンシ、安養駅)、議政府市(回龍(フェリョン)駅)などでも数人が確認されている。市内バスや広域バスなどを利用していた感染者も多い。
ソウル西南部と仁川や京畿を結ぶ交通環境のため、九老や新道林は流動人口が非常に多い地域だ。ソウル交通公社の資料によると、昨年の新道林駅の一日平均乗車人員だけでも6万人程になる。公共交通機関内で感染症が広がる可能性が大きいとすると、今回のコールセンター発の集団感染は首都圏全域に拡散しうる。そのうえ、公共交通機関では接触者を特定することが難しいため、自分も知らないうちにCOVID-19感染者と出くわしたり動線が重なったりしていないか、市民の不安はさらに高まらざるを得ない。中国では今年1月、湖南省でマスクをしていない患者1人と同じバスに乗っていた乗客49人のうち、8人が感染したと報じられている。
専門家は、公共交通機関でCOVID-19に感染する危険は存在するが、その可能性は集会、宗教行事、コールセンターなどよりは相対的に低いとみている。明知病院感染内科のチェ・ガンウォン教授は「乗客のうち誰が感染者なのか、誰が接触者なのかが分からないため、市民が不安に思うのは十分理解できる。実際に感染者が公共交通機関で向かいや隣に座れば感染の危険はあると考える」としながらも「理論的には宗教行事などの他の場所より集団感染の危険は大きくない」と述べた。COVID-19は、主に唾液(飛沫)を通じて伝染するが、地下鉄やバスでは知らない人と話をすることがあまりなく、唾液が飛ぶことも多くないからだ。
それでも公共交通を利用する時はマスクを着用し、利用後には手をきれいに洗うなど、個人の衛生規範を守ることは非常に重要だ。中央防疫対策本部のチョン・ウンギョン本部長は「公共交通機関は不特定多数が密集して利用するが、疫学調査で正確な感染力や危険度をすべて明らかにするには限界がある」とし「つり革や手すりをつかんだら、その表面に付着していたウイルスが手につくことがあるため、手の洗浄剤や石鹸でよく洗い、手で目をこすったり、鼻、口、顔を触ってはいけない。(地下鉄公社やバス会社などは)人の手が届く場所を消毒剤で頻繁にふき、換気も頻繁にするなど、公共交通機関の全般的な衛生管理を徹底することも重要だ」と強調した。
チェ・ガンウォン教授も「つり革や手すりを握らなければ大けがをする可能性があるため、必要な時は握るにしても、すぐにアルコール消毒剤を塗るとか、降りた後に手を洗ったりすることが、リスクを現実的に減らす方法だ。できれば隣の乗客と距離を取るという原則を実践することが重要」と述べた。成均館大学医学部社会医学教室のキム・ジョンホン教授は「感染が疑われる人は必ず(公共交通機関で)マスクをつけ、閉鎖された空間に鼻と口から分泌物が出るのを防がなければならない」と呼びかけた。