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性的マイノリティ担当の国連特別報告者「ヘイト表現は『表現の自由』ではない」

登録:2019-08-22 09:20 修正:2019-08-22 10:18
性的マイノリティを担当する国連特別報告者のビクター・マドリガル・ボーロツ氏が21日午後、龍山区のソウルドラゴンシティホテルで開かれた第8回国際性的マイノリティ協会アジアカンファレンスに参加するため訪韓しハンギョレのインタビューに応じている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「ヘイト表現は単に意見を表現することにとどまりません。誰かを殴り、排除し、学校から追い出したり職場をクビにさせる行為です。『表現の自由』は民主主義においてとても重要ですが、明らかに限界があります。ヘイト表現はその線を越えたものです」

 21日、ハンギョレのインタビューに応じた性的マイノリティ問題を担当する国連特別報告者のビクター・マドリガル・ボーロツ氏は、かすかに眉をしかめた。「韓国では一部の政治家やキリスト教徒たちが公然と性的マイノリティに対する差別的発言をする」という話を聞いた直後のことだ。彼は「非常に深刻な問題」だとし、政府の役割を強調した。「ヘイト表現は政府が乗り出して解決を模索しなければならない領域」だという。政府の義務は「すべての人の人権が侵害されないよう保障すること」であり、このために政治家がヘイト発言をしないのは「中核であり根本的な原則」と彼は述べた。

 アジア諸国の初めての訪問となる。彼はこの日、ソウル龍山区(ヨンサング)のソウルドラゴンシティホテルで開かれた「第8回国際性的マイノリティ協会アジアカンファレンス」に出席するため、韓国を訪れた。国連人権理事会は主要な人権分野において特別報告者を任命するが、性的マイノリティの特別報告者は「性的指向」と「性的アイデンティティ」を理由に全世界で発生するすべての暴力と差別の事例を研究し、国際社会に報告する役割を担う。彼は昨年、性的指向を差別禁止条項に含めた忠清南道の人権条例が廃止されたことに対して憂慮を表明する書簡を韓国政府に送った。

 一部の宗教者が差別の先頭に立つという話に、彼は「変化に対する恐怖、多くの暴力と差別はここから始まる」と指摘した。男性は男性らしく、女性は女性らしく、与えられた性的役割に忠実であることを望む社会的認識が「力の構造が変わることへの恐怖」を膨らませるとも語った。

 軍内の性的マイノリティを処罰する軍刑法の醜行罪(92条の6)を廃止すべきだという立場も確固としていた。「特定の性的アイデンティティを持った人口を選択的に区分した後で、『合意の上での性関係』を処罰するですって? 国際法のどこにもこのような条項に対する根拠はありません。『軍の綱紀のため』と言う人もいるでしょうが、実際にその条項が綱紀に影響を及ぼすという証拠はありません。軍服務中の男性と女性が関係を持ってはならないという法条項がありますか?」現在、異性の軍人の間での性関係は法的処罰ではなく、内部懲戒に止まる。「二つのケースがどうして違わなければならないのでしょうか。この条項は烙印と差別を永続化するだけです」と、彼は問い質した。

 性的指向によって差別を受けない社会のために必要なのは、結局「教育と意識」だと言った。「韓国政府と公式に意見を交わしたり、韓国の状況を完全に研究できてはいない」と慎重になりながらも、彼が「包括的差別禁止法」の必要性を強調した理由だ。「法曹界、医療系を含め、多くの人々が依然として『性的アイデンティティは尊重されなければならない』と心から受け入れない可能性もあります。法が必要なのは、まさに『尊重する』という意識を作り出すためです。性的マイノリティたちが直接『私は差別を受けない権利がある』と言える根拠を与えるためのものでもあります」

 彼は、ヘイト・スピーチをする人々と喜んで「話をする機会を持ちたい」と話した。「一体なぜ性的マイノリティの人権に反対することをしているのか、理解してみたい」からだ。「その次には、私が知っていることを彼らも分かるようにしてみたいです。性的マイノリティの日常を、生活の現実を伝えながら。誰か私と話したければ、いつでも喜んで聞きたいと思います」

パク・ダヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/906625.html韓国語原文入力:2019-08-21 21:18
訳C.M

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