「カルペ・ディエム」(CARPE DIEM)
最近会った民主党支持のある米国人が、ノートにこう書いてくれた。ラテン語であるこの言葉には「シーズ・ザ・デー」(Seize the day:その日を摘め)、「目の前のチャンスを見逃すな」という意味が込められている。
20年以上にわたり議会で経歴を積み、行政府で高官まで務めたことのあるこの米国人は、ドナルド・トランプ大統領の国内政治に極めて否定的だ。彼は、トランプ大統領が再選してはいけないし、再選できないだろうと断言した。
それでも、トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が12日にシンガポールで行う会談については、「チャンスになるかもしれない」と話した。朝鮮半島で毎年繰り返される緊張の高まりや昨年の戦争危機、韓国政府の朝米首脳会談の仲裁努力についてしばらく話した後に、彼が下した結論だった。
正直、民主党関係者の中でこのような見解を持つ米国人は多くない。民主党側の「反トランプ感情」はかなり根深く、トランプ大統領に対する敵対感まで伺える。北朝鮮の核問題を解決できれば、トランプ大統領がノーベル賞を受賞するに値するという文在寅(ムン・ジェイン)大統領の発言に対してにまで、失望感を示した専門家もいた。
彼らにとっては北朝鮮核問題の解決よりもトランプ大統領の支持率を低下させ、再選を阻止する国内政治が重要だ。民主党が11月の中間選挙で下院を掌握できなければ、2020年の大統領選挙はかなり不利な戦いとなる。政権の運命がかかっているうえ、北朝鮮もあまり信頼できないのだから、彼らの頭の中に朝鮮半島状況が大きな比重を占めるわけがない。
議会の事情に詳しいワシントンのある消息筋は「トランプ大統領が北朝鮮核問題解決の成果を出すのは、民主党にとっては残酷なシナリオ」だと話した。バラク・オバマ政権では8年間悪化の一途を辿った北朝鮮の核問題を「大統領にふさわしくない」トランプ大統領がやり遂げるのは、民主党のプライドを傷付けることだ。
チャック・シューマー院内代表など民主党上院指導部が4日(現地時間)、トランプ大統領に北朝鮮と合意すべき「5大原則」を書いた書簡を送ったのも、民主党内部の雰囲気を反映したものとみられる。要求条件を見てみると、すべての核・生物化学兵器の解体・放棄▽ウラン濃縮やプルトニウム再処理の中断や核施設の解体▽永久的合意保証などで、米政府内の強硬派や過去の共和党が北朝鮮に要求したものとあまり変わらない。
北朝鮮核問題の解決とトランプ大統領の相関関係は強くないだろうという反論もある。ワシントンのシンクタンクのある専門家は「北朝鮮核問題の解決がトランプ大統領の支持率に大いに役立つという分析は、韓国中心の思考」だとし、「米国の国内問題ほど破壊力があるとは思えない」と話した。
だとしても、民主党が北朝鮮の核交渉を政治的争点にし、民主党とトランプ行政府の溝が深まるのは、韓国にとっては頭を悩ませる問題だ。民主党のけん制が健全な形で作動すれば、トランプ大統領の“想定外の行動”を防ぐのに役立つだろう。トランプ大統領の“予測不可能性”が依然として韓国に挑戦的要素である点も否定できないからだ。
一方、民主党がトランプ大統領を政治的に追い込む手段としてこれを活用する場合、北朝鮮核問題の解決の動力が失われるのは明らかだ。トランプ大統領が突然「私はそのような合意をしたことがない」と手を引く状況が生じる可能性もある。
国務省の元高官は、政策立案の際に考慮する対象の優先順位を問う質問に「第一が議会、第二が同盟や関連国」と答えた。韓国では、ワシントンの朝鮮専門家集団の声に耳を傾けるが、(米国では)政策立案の際、それほど重要視しないという。朝米首脳会談を機に、議会の動きに注目しなければならないのもそのためだ。