中国の「経済司令塔」の劉鶴副首相は24日、スティーブン・ムニューシン米財務長官との電話会談で、「米国の最近の措置は国際貿易規定に反するもの」だとし、「中国はしっかり準備しており、国家利益を守る実力がある」と述べたと、「新華社通信」が報道した。
ドナルド・トランプ米大統領が22日、貿易法第301条に基づき年間600億ドルの中国産輸入品に高率関税を賦課する方針を示したことに対抗し、23日、中国も30億ドル分の米国製品に対する報復関税の賦課を決め、「米中貿易戦争」の序幕が上がった中、中国がさらに強硬な報復処置に乗り出せることを警告したものと見られる。しかし、劉鶴副首相は「双方が理性を持って米中経済貿易関係の総体的安定を維持するため、共同で努力することを望んでいる」と述べ、事態をさらに悪化させないよう対話で解決したいという意向も明らかにした。
トランプ政権の強硬の動きに対抗し、中国がどのようなカードを取り出すかに関心が集まっている。中国がすでに発表した300億ドル分の米国製品に対する報復関税は、米国の高率鉄鋼・アルミ関税に対する報復的であり、600億ドルの高率の関税に対する報復カードははるかに強力なものになる見込みだと「フィナンシャル・タイムズ」は25日付で報道した。中国内の強硬な立場を代弁する「環球時報」は25日付の社説で「米国の第301条に対抗した中国の報復は数百億ドルの米国商品をターゲットにするだろう」と主張した。
楼継偉元中国財務部長(財務長官)は24日「中国の報復措置は比較的に穏健なものだったため、さらに強力な処置を取られなければならない」とし、「私が政府にいれば、まず大豆を狙って、次は自動車や航空機をターゲットにする」と話した。中国は昨年196億ドル(約21兆ウォン)分の米農産物を輸入したが、このうち大豆が63%を占めていた。大豆に対する高率関税はトランプ大統領の最大の支持基盤の一つである中西部の農民にとって大きな打撃になる。昨年、中国の米国産自動車輸入は100億ドル規模だ。
中国がさらなる高率の関税カードを使わなくても、中国市場に進出した米国企業に大きな打撃を加えられるとの分析もある。元米国外交官として現在、資産運用会社「アバディーン・スタンダード・インベストメント」に勤めるアレックス・ウルフ氏は「フィナンシャル・タイムズ」に「(中国市場に進出している)アップル、マイクロソフト、スターバックス、ゼネラル・モーターズ、ナイキのような米国企業は死線に置かれるかもしれない」と話した。最近まで北京駐在の欧州連合(EU)商工会議所所長を務めたウェルク・ブートケ氏は「中国は大きな刀を使わないという点を明確にした」とし、「中国は鍼術スタイルで、米国の競合州や農業やドナルド・トランプの選挙区の弱点を狙って針を打ち込むだろう」と話した。
多くの専門家が中国の持っている最後の強力な報復手段として、米国債の売却を挙げている。中国は昨年末基準で1兆2千億ドル(約1300兆ウォン)に達する米国債を保有している。しかし、中国が国債の売却に出た場合は、米国経済に大きな打撃を与えられるが、中国と全世界の経済も莫大な被害をこうむることになる。
中国は、まず米国との水面下の対話を通じて、米国が要求する貿易黒字の縮小に対する妥協策で事態の収拾を目指しながら、対応のレベルを決めるものと見られる。中国の国際関係専門家である人民大学の時殷弘教授は、中国がジレンマに直面したと指摘した。「報復が弱すぎた場合は、中国人の不満が高まると共に、トランプの貿易戦争も防げないが、報復が強すぎた場合は、中国経済が深刻な打撃を受けて、トランプ大統領の追加的な貿易制裁につながり、貿易戦争が始まる恐れがある」